■中長期の成長戦略
1. 中期経営計画「T-Link1369」
たけびし<7510>は、創立100周年となる2027年3月期を最終年度とする4ヶ年の中期経営計画「T-Link1369」を推進している。本計画では、既存事業の強靭化と新領域への拡大を両軸とした事業強化と、資本効率を重視した経営の実践とサステナビリティ経営の高度化による体制強化を通じて持続可能な企業価値の向上を図る。
数値目標として、2027年3月期に売上高1,300億円、経常利益60億円を掲げており、そのうち300億円を新規ビジネスの積み上げによって創出する計画である。売上高の内訳は、基幹ビジネスで630億円、成長戦略の進化で620億円、ビジネスモデルの変革で50億円としている。
事業強化の柱は3つあり、主力のFA関連を中心とする既存事業の強化(基幹ビジネス)に加え、グローバル、メディカル、オートメーション、オリジナルの「4つの成長戦略の進化」、さらに、「総合商社を目指したビジネスモデルの変革」として、モビリティ、マテリアル、エネルギーソリューション、DX推進の4つの領域でのイノベーション(変革)創出である。
一方、体制強化においては、財務面で資本効率を重視した経営を実践し、収益性向上に資する成長投資を通じて経営基盤と株主還元の強化を図る。また、非財務面ではサステナビリティ経営を高度化させ、環境保護やガバナンスの徹底、エンゲージメントの向上を軸に、持続的な企業価値の創造に取り組む方針である。
2. 重点施策
(1) 4つの成長戦略の進化
(a) グローバル
グローバルの売上目標は2027年3月期に300億円(2023年3月期比64億円増)であり、特に東南アジア・インドを中心とした成長市場でのデバイスビジネス拡大を重視している。スマートメーターや車載関連向け電子部品がインド市場の成長をけん引している。2025年7月にはインド拠点を現地法人化し、脱炭素関連ビジネスの需要捕捉と事業基盤の強化を図る。また、香港・台湾などのアジア拠点再編による組織及び営業活動の効率化に取り組む。さらに、アセアン地域での戦略的M&Aによる成長を目指す。
(b) メディカル
メディカルは、2027年3月期に160億円(同87億円増)を目指し、放射線がん治療装置、診断装置などの高度医療機器を中心に事業拡大を図る。中国・四国エリアへの商圏拡大や高付加価値製品の拡充により、放射線科向けビジネスを強化する。また、脳外科・循環器内科向け血管撮影装置の需要獲得や、3Dモニターグラスなど先端サポート製品の販売促進に取り組む。
(c) オートメーション
オートメーションでは、2027年3月期に90億円(同50億円増)を目指し、深刻化する人手不足を背景とした工場自動化需要に対応する。スマートファクトリー化提案を中心に、半導体・再エネ関連市場での設備投資需要を獲得し、ITベンダーとの協業によって顧客のスマートファクトリー構想の実現を支援する。また、リニア搬送システムによる生産のフレキシブル化の提案や、食品関連業界向け自動化提案による生産効率の改善にも取り組む。
(d) オリジナル(自社製品・システム開発)
オリジナルの売上目標は2027年3月期に20億円(同7億円増)であり、自社開発ソフトの機能性向上と海外展開による売上拡大を図る。国内シェアトップを占めるOPC対応通信ソフトでは、生成AIエージェントとの連携機能を追加するなど利便性強化を進める。プロダクトマーケティング専任部隊の新設により、インド・北米を中心とした海外販促を強化するほか、店舗向けオリジナルアプリ「compass」の開発で培ったノウハウを生かし、安否確認・日報・顧客管理などのパッケージサービスを展開する。
(2) 総合商社を目指したビジネスモデルの変革
(a) モビリティ(移動・搬送向けビジネス展開)
モビリティの2027年3月期売上高目標は14億円であり、無人搬送車(AGV)や自律移動ロボット(AMR)の需要を広く取り込み、製造現場やオフィス、店舗などでの自動搬送ニーズに対応する。モビリティ向け新規デバイスの販売拡大にも取り組む。
(b) マテリアル(部品・素材系の商材拡充)
マテリアルの2027年3月期売上高目標は5億円であり、素材・部品領域の取扱商材拡大により新規事業の創出を目指し、樹脂関連商材の販売拡大や、磁石を活用したBtoC製品の需要開拓を進める。
(c) エネルギーソリューション(環境ビジネスの創出)
エネルギーソリューションの2027年3月期売上高目標は17億円であり、脱炭素関連ビジネスの展開を進め、創エネルギー・蓄電事業や太陽光発電関連ビジネスを強化する。産業用蓄電システムなど新たな成長領域の開拓にも取り組む。
(d) DX推進(AI活用・業務改善提案)
DX推進の2027年3月期売上高目標は14億円であり、AIやセキュリティ技術を活用したソリューション創出を進め、OTセキュリティへの対応強化や、ハードウェアとエッジAIの組み合わせによる新たな価値提供に注力する。デジタル技術を活用した新規ビジネスの創出も進展している。
3. 資本効率を重視した経営の実践
同社は、資本効率を重視し、収益性の向上につながる成長投資を通じて経営基盤の強化を図る方針である。重点投資分野として、事業投資・人材投資・環境投資・インフラ投資の4つを掲げている。
事業投資では、商圏エリアやビジネスの幅の拡大を目的に、ASEAN地域をはじめとしたグローバル領域での戦略的M&Aを推進する。人材投資については、ダイバーシティ経営の実現を目指し、グローバル人材の育成や女性活躍推進に取り組む。環境投資では、電力自己託送システムの導入、ソーラーカーポートの設置、EV向け充電器の増設などを進め、脱炭素社会への貢献を図る。インフラ投資においては、業務効率化や物流DXなどを通じて経営基盤の高度化を進め、創立100周年のその先を見据えた持続可能な企業運営を目指している。
4. サステナビリティ経営の高度化
同社は、持続可能な社会づくりに貢献することを重要な経営課題と位置付け、環境への取り組み、コーポレートガバナンス、エンゲージメント向上の3領域を軸にサステナビリティ経営の高度化を進めている。特にエンゲージメント向上の分野では、3年連続で健康経営優良法人に認定されるなど成果も出ている。
また、地域社会との共創を目指す取り組みとして、2019年から京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場の命名権を取得し、「たけびしスタジアム京都」とした。同スタジアムを活用した小学生向けサッカー教室の開催に加え、サッカーJリーグの「京都サンガF.C.」、バスケットボールBリーグの「京都ハンナリーズ」や「京都マラソン」など、地域スポーツへの協賛活動も積極的に行っている。
同社はBtoB企業であり、一般消費者には日常的な接点が少なく認知されにくいものの、スタジアムの命名権をはじめとする地域貢献活動を通じて、企業ブランド価値の向上にもつなげている。これらの取り組みは、地域からの信頼獲得に加え、採用活動の強化や従業員エンゲージメントの向上にも寄与しており、非財務面での価値創出として機能している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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