淘汰されるSaaSと生き残るSaaS
ただし、私はすべてのSaaS企業がAIに飲み込まれるとは考えていません。
現在の「SaaSの死」を巡る議論は、やや極端な「空中戦」になっていると感じます。
企業を一つ一つ精査すれば、AIに容易に置き換えられるものと、そうでないものが見えてきます。
まず厳しい立場に立たされるのは、単なる入力の枠組みやUI(操作画面)を提供しているだけの企業です。
例えばサイボウズの「kintone(キントーン)」はノーコードでアプリを作れるのが売りですが、それくらいの作業であれば、AIに「こういうアプリを作ってくれ」と言えば一瞬で完成してしまいます。
あるいは、そもそも「アプリ」という形である必要すらなく、AIにデータを投げれば処理が終わる世界になるでしょう。
また、SHIFT(シフト)のように、人海戦術でソフトウェアのバグを見つけるテスト業務を行っている企業も、AIによる代替リスクが極めて高いと言わざるを得ません。

SHIFT<3697> 日足(SBI証券提供)
野村総合研究所やJBCCが持つ真の強み
一方で、逆風の中でも強みを発揮できる領域があります。
それが、AIと企業の既存システムを繋ぐ「ラストワンマイル」を担う企業です。
理論上はAIがすべてをこなせるとしても、現実の企業活動では、長年蓄積された巨大なデータベースや、複雑に絡み合った旧来のシステムとの接続が不可欠です。
ここにはセキュリティの問題もあれば、日本独自の商習慣や法体系といった「AIが簡単には踏み込めない領域」が存在します。
この「接続」の部分を最も深く理解しているのが、野村総合研究所のようなシステム開発に長けた企業です。
AIを導入する際にも、結局はそのAIを企業の深部にどう繋ぎ込むかという設計・導入のプロセスは残ります。
これは、かつてクラウド(AWSなど)が登場した際に「システム会社は不要になる」と言われながら、実際にはAWSと企業を繋ぐ役割としてシステム会社が不可欠だった構図と同じです。
単なる入力枠の提供ではなく、システムを繋ぎ、データベースを統合する力を持つ企業には、AI時代でも十分に生き残る余地があるのです。

JBCCホールディングス<9889> 日足(SBI証券提供)
勝てる株の「絶対領域」とは?
私たちが意識すべきは「実際の成長性」と「市場の期待値」という2つの軸です。
基本的には以下の4つの領域に分かれます。
- 高成長・高期待:高PERで取引される。リターンは望みにくい
- 低成長・低期待:評価は低いが、投資妙味も乏しい
- 低成長・高期待:いわゆるバブルの状態。絶対に買ってはいけない場所
- 高成長・低期待:私たちが最も狙うべき「お宝」の領域

現在のSaaS銘柄は、これまで「高成長・高期待」だったものが、AIの台頭によって期待値が急降下し、右斜め下の「低期待」の方向へ移動している最中です。
もし、市場がAIの恐怖に過剰反応し、期待値だけが「実態以上に」下がりきった時こそが絶好の買い場となります。
まとめ
結論としては、今すぐこれらの暴落銘柄に飛びつくのは慎重になった方が良いということです。
確かに割安感は出てきましたが、市場のトレンドは当面「SaaSへの悲観」に支配されるでしょう。
そして、バリエーションが誰の目にも明らかに安すぎる水準まで叩き売られた時、そしてその企業がAIを使いこなしてお客さんに寄り添う「接続」の強みを持っていると確信できた時、そこには莫大なリターンを得るチャンスが眠っています。
私たちは、単に「どれが伸びるか」という議論だけではなく、常に「実力と期待のギャップ」に焦点を当てるべきです。
たとえ成長性が以前より低くなったとしても、それ以上に市場が絶望し、期待値が地の底まで落ちていれば、それは投資家にとってのチャンスとなります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年2月25日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。