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kubell、AIエージェント時代にBPaaSで中小企業DXを完遂 中長期ターゲットとしてEBITDAマージン40%を目指す

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2026年3月15日にログミーFinance主催で行われた、第129回 個人投資家向けIRセミナーの第2部・株式会社kubellの講演の内容を書き起こしでお伝えします。

株式会社kubell 代表取締役CEO 山本 正喜

山本正喜氏(以下、山本):みなさま、こんにちは。株式会社kubell代表取締役CEOの山本正喜です。本日はお忙しい中説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。では、kubellの会社紹介を始めます。

まずは簡単に、私の自己紹介をします。私は1980年生まれで現在45歳、出身は大阪府寝屋川市です。高校までは大阪にいましたが、東京の電気通信大学へ通うことになり、東京に引っ越しました。

電気通信大学では情報工学、すなわちコンピューターサイエンスを専攻し、プログラミングなどを学びました。大学在学中の2000年、ちょうど日本にインターネットが普及し始めた時代に、いても立ってもいられず、兄弟で学生起業したのが「kubell」のスタートです。

当初、私ではなく兄が社長を務め、弟の私はエンジニアの役割を担いました。具体的には、兄が社長としてビジネスを推進し、私はCTOとして技術分野を担当するかたちで起業しています。それ以来、エンジニアとして多くのプログラムを書き、さまざまなWebサービスを開発してきました。

現在の主力事業となっているビジネスチャットツール「Chatwork」は、2011年3月に私自身がプログラムを書き、開発を開始しました。今年でちょうど15周年を迎えます。

その後は事業責任者として事業を牽引してきましたが、ビジネスが成長する中で「お前が社長になったほうがいいのではないか」という話があがり、2018年に社長に就任しました。

そして、社長就任後の2019年9月には、現在の東証グロース市場である東証マザーズへと上場を果たしています。どうぞよろしくお願いします。

会社概要

山本:会社概要についてご説明します。株式会社kubellは、2025年12月末時点でグループ従業員数が698名となり、現在は700名を超える規模になっています。

もともとは大阪で創業しましたが、現在は東京の拠点が大きくなっており、全社員のうち8割が東京に勤めている状況です。

働くをもっと楽しく、創造的に

山本:コーポレートミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」を掲げています。

20代から60代、70代までの週5日という「働く」という時間は、まさに人生の大半に当たる時間です。

「働く」時間を、生活の糧を得ることも重要ですが、そのためだけでなく、できるだけ多くの人が楽しく、自由に創造性を存分に発揮できる社会を実現したいと考えています。

すべての人に、 一歩先の働き方を

山本:コーポレートビジョンは「すべての人に、一歩先の働き方を」です。

一部の先進的な人だけが前に進む社会ではなく、世界中で働くすべての人が自分自身の働き方を常に自分なりの一歩先へ進められるようなプラットフォームを提供したいと考えています。

事業概要

山本:事業概要は、先ほどご紹介した国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」が、現在の売上の9割を占める規模となっています。

「Chatwork」は約15年前の2011年にリリースしましたが、当時は「ビジネスチャット」という言葉すら存在していませんでした。

業界のパイオニアとして、おそらく世界初に近いタイミングで市場を開拓し、現在も日本国内のアクティブユーザー数ベースで利用者数No.1を維持しています。また、導入社数は97万3,000社を突破しています。

まだ成長を続けるビジネスチャット「Chatwork」ですが、この圧倒的な顧客基盤を背景に、チャットを通じて業務を請け負い、DXを推進する「BPaaS」と呼ばれる領域のサービスとして、サービスブランド「タクシタ」を新たな柱として展開しています。「業務をタクシタ」と覚えていただければと思います。

BPaaSについては、後ほどあらためてご紹介します。

事業概要

山本:「Chatwork」以外にも、「Chatwork 勤怠管理」「Chatwork ストレージ」といった、グループ企業が提供するSaaSサービスをいくつか展開しています。DX相談窓口、人事評価、広告、法人登記などさまざまなサービスを展開しているため、ぜひご確認ください。

これまでのあゆみ

山本:当社のこれまでの歩みは、大きく2つのフェーズに分かれます。

2011年に「Chatwork」を立ち上げ、スタートアップとしてベンチャーキャピタルから累計18億円の資金を調達し、東証マザーズに上場するまで、大規模な投資を行いながら成長を加速させてきたのが前半のフェーズです。

そして、上場後の2023年からは、新たな柱としてBPaaS「タクシタ」を展開しています。

この期間の主軸となっているのは、M&Aです。大阪で人事労務のBPOやBPaaSを展開する株式会社ミナジンがグループ入りしたことで、その領域における足場を確立しました。

事業領域を拡大するとともに、私たち自身もBPOのオペレーションにおけるケイパビリティを確保する取り組みを進めてきました。

kenmo氏(以下、kenmo):中小企業診断士/湘南投資勉強会のkenmoです。kubellといえば、ビジネスチャット「Chatwork」が非常に有名である一方で、2023年からはBPaaS構想を掲げられています。その意図やきっかけについて、もう少し詳しく教えていただいてよろしいですか? 

山本:ビジネスチャットの「Chatwork」は広く浸透してきていますが、生産性向上という点には届きにくいと考えていました。我々としては、「Chatwork」の上にさまざまなSaaSプロダクトを展開しようと考えていたのです。

例えば、電子決済やプロジェクト管理などのサービスを次々と開発しようとしたのですが、それらを中小企業の方々に提案した際、「良いことはわかるけれど、使うのが難しい」「社内にITがわかる人がいない」という状況が最大のブロック要因であることが判明しました。

そこで、「いっそのことSaaSの運用を代行すればいいのではないか」と考えました。「Chatwork」を経由してSaaSの運用代行を行えば、BPO、つまり業務委託のようなかたちでDXが進むサービスを展開できるのではないか、ということが見えてきたのです。

これが、BPaaSという領域を新しい柱として位置づけるに至った理由です。

kenmo:現在は「SaaS is Dead」という話がありますが、時代が追い付いてきたと感じています。

業務効率化を図りたい際、以前はSaaSを提供することが主流でしたが、現在はむしろ「何でもいいから手を動かしてくれる人が欲しい」「AIでも何でも使って手を動かし、業務効率を改善してほしい」といったニーズが増えているように思います。

BPaaS構想は、そのようなニーズに非常にマッチしていると感じました。この点については、どのようにお考えでしょうか? 

山本:現在、AIエージェントが広まりつつあり、投資家のみなさま方もAIを活用されているかと思います。AIが人間の代わりにSaaSを使って業務を遂行することが、昨年流行したAIエージェントを通じて可能になってきています。

ただし、現時点では特定の領域に限定されています。AIがすべての業務を自動化する世界観の実現には、時間がかかると考えています。

これは、自動車の自動運転技術の発展に似ていると感じます。当初は高速道路のみでの自動運転が可能になり、徐々に一般道でも広がっていく過程にあることがイメージできるように、業務面でも同様の段階を踏むだろうと考えています。

AIやSaaSとの相性が良い領域ではDXが大きく進む一方、それ以外の領域では進展が難しい状況があります。

我々は人とAIをハイブリッドに活用しながら、それぞれの特性を活かすかたちで展開していくことを目指しています。この方法により、人力を補いながら、AIによる生産性向上を促進するBPOのようなサービスをBPaaSとして提供するかたちを取りました。

現在はAIの時代だと言われていますが、我々が「このような時代が来るだろう」と考えていた以上に進展が速かったことを実感しています。一方で、BPaaSというコンセプト自体は間違っていなかったことを、あらためて強く感じています。

前提となる社会背景

山本:我々がさまざまな事業を展開する上での前提となる、社会背景についてご紹介します。

みなさまもご承知のとおり、日本は世界でも類を見ない超高齢化社会となりつつあります。人口減少は急激ではなく緩やかですが、問題はその内訳です。

スライド左側のグラフの濃い赤い部分、「65歳以上人口」の比率が急速に上がってきています。社会福祉で支えていかなければならない高齢者層が大きく広がることで、働いている一人ひとりの生産性を上げることが非常に重要な焦点となってきていると思います。

日本の労働生産性は、世界と比較して低いと言われています。その大きな原因として、中小企業の存在が挙げられます。日本の労働人口の69.7パーセント、つまり約70パーセントが中小企業に所属しており、大半を占めています。

中央のグラフをご覧ください。黒い線は大企業の1人当たりの労働生産性を示しており、下の赤い線は中小企業の労働生産性を示しています。この2つの線には大きな差があり、直近では約3倍の開きがあります。つまり、中小企業の労働生産性は大企業の3分の1という状況です。

中小企業の労働人口は全体の70パーセントを占めていることから、それが日本の生産性の低さの根本原因となっています。今後は生産性が年々向上していくことが望ましいのですが、グラフを見る限りでは横ばい、あるいは少し下がってきています。

これは、さまざまな技術革新があるにもかかわらず、働き方が変わらないことを示す調査結果だと考えられます。労働生産性の向上には、IT投資、つまりDXやAIへの投資が重要ですが、中小企業の市場ではそれが進んでいないという現状があります。

中小企業においてDXが進まない理由

山本:中小企業においてDXが進まない理由については、先ほども触れましたが、人材不足が挙げられます。

特にIT人材の不足が大きな課題となっており、「お金がない」ではなく「ITを使いこなせるような人がいないから、よくわからない」といった状態にあると考えています。

また、中小企業はそれぞれの従業員数が10数人と、小規模な企業が多い点が特徴です。SaaSベンダーやITベンダーが中小企業をターゲットにし、1社ずつ訪問して営業活動を行おうとすると、どうしても営業効率が悪くなります。

そのため、多くのSaaSベンダーはエンタープライズサービスを提供するかたちとなり、大企業をターゲットとしています。

しかし、大企業をターゲットとすることで提供されるサービスの機能が拡充され、単価も上昇してしまいます。その結果、中小企業にとっては身の丈に合わないプロダクトプライシングとなりがちです。

ベンダーからの営業が受けられないことや、ニーズに合ったサービスプロダクトが不足していることも、中小企業におけるDXが進まない大きな要因といえるでしょう。令和の時代においても、中小企業の約80パーセントが未だにDXに取り組めていない状況が続いています。

Chatworkは中小企業のDXを強力に進める稀有なSaaS

山本:そのような中、「Chatwork」は中小企業のDXを強力に進める、稀有なSaaSとしてのポジションを確立していると考えています。ここまで中小企業に浸透しているSaaSは、他にほとんどないと思います。

「Chatwork」は約97万社、約806万IDのユーザーを獲得しており、有料契約の約97パーセントが300人未満の企業との契約となっています。また、無料利用も同様の比率で、9割以上が中小企業をターゲットにしていることがわかります。つまり、中小企業向けのSaaSとして圧倒的なポジションにあると考えています。

そして私たちは、介護、建設、小売業といった特定の業界に特化するのではなく、全業種において、営業担当者や経理担当者、役員など全職種の従業員が業務時間中ずっと使い続ける点が特徴です。

例えば、経理担当者が仕分けを行う際に会計SaaSを使用する、営業担当者が受注時にCRMを入力するといったように、特定の職種が特定の業務で使うSaaSとは異なり、他のSaaSと比較して非常に強力なユーザー接点を持っていると感じています。

この高いプラットフォーム性を活かし、先ほどご紹介したBPaaSを軸とした周辺サービスの販売を展開しています。

中小企業に対して広い顧客基盤を有し、その強い接点を活用してさまざまなクロスセルを展開しているとご認識いただければと思います。

ビジネスチャット「Chatwork」の強み

山本:「ビジネスチャットである『Chatwork』が、なぜそんなに中小企業に強いのか?」と疑問に思われているかもしれませんので、ご紹介していきたいと思います。

ビジネスチャットを利用されている方もいらっしゃるかと思いますが、そもそも日本全体の普及率はまだそれほど高くありません。直近の調査では、普及率は23.7パーセントで、7割以上の方がビジネスチャットを利用していない状況です。

つまり、ビジネスチャット市場はまだ成長余地が非常に大きく、競合他社とのシェア争いというよりも、新たな顧客を開拓していくフェーズにあるといえます。

では、なぜ「Chatwork」が中小企業の市場で強みを発揮しているのでしょうか? その理由は、非常に簡単なユーザーインターフェースにあります。

エンタープライズ向けの大企業向けサービスでは、どうしても機能が増え続け、操作が複雑になり、価格も高くなりがちです。一方で「Chatwork」は、非常に直感的でわかりやすいインターフェースを提供しており、誰でも簡単に利用できます。

さらに、「Chatwork」の最大の特徴は、社外との接続のしやすさにあります。

他のビジネスチャットでは、企業ごとに閉じた環境でコミュニケーションを行い、他社とやり取りする際には管理者による複雑な設定が必要です。

しかし「Chatwork」の場合、「LINE」や「Facebook」のようなSNSの仕組みを採用しており、人を検索すれば他社のリストが表示され、「Facebook」で友だち申請をしたり、「LINE」で友だち追加をしたりする感覚で簡単に他社とつながることができます。

また、1つのIDで社内外をシームレスに利用できる点も最大の特徴です。これによって中小企業で口コミが広がり、「このプロジェクトを『Chatwork』を使ってやろうよ」となります。

最初は「これは何ですか?」と言いつつも、実際に使っていただくことによって徐々に「いいですね」へと変遷し、社内導入が進むというように、口コミが広がった点が特徴です。紹介によって参加されたユーザーがさらに別のユーザーを紹介する、いわゆる複利の構造でサービスが成長しています。

スライド中央のグラフをご覧いただければ、サービス開始から登録ID数が線形ではなく二次曲線的に成長していることがわかります。

また、1ユーザー当たりの単価であるARPUも右肩上がりで大きく伸びており、解約率は0.21パーセントと、非常に低い水準を維持しています。

kenmo:「Chatwork」は比較的低単価なサービスだと考えていますが、今後大きな機能追加や価格改定などでARPUを上げる予定はまだあるのでしょうか? 

山本:基本的に、当社は多くの開発エンジニアを抱え、一生懸命機能追加やバリューアップに取り組んでいます。提供価格に対してプロダクトの機能が向上すれば、適正価格にプライスを見直すことを定期的に行っています。

ARPUのグラフからも、一気にというよりは、定常的に継続して上昇させていることがおわかりいただけると思います。

kenmo:個人投資家からの質問ですが、「『Slack』や『Teams』など、すでにメジャーな競合サービスがある中で、御社サービスの強みや差別化ポイントについて教えてください」というご質問をいただいています。

業界におけるポジショニング

山本:このグラフは、業界におけるポジショニングを示しています。他社に関して言えば、A社はITスキルが高いテック系スタートアップ企業で多く導入されており、B社はエンタープライズ向けです。

主要な競合であるこの2社が先ほど質問で挙げていただいたような企業ですが、当社の場合、ITに詳しくない方や、規模がそれほど大きくない企業をターゲットにポジショニングを取っています。

なぜそこに強みがあるかというと、非常に簡単なユーザーインターフェースであること、そして紹介で広がりやすいことが挙げられます。他のプロダクトよりも圧倒的に社外とのつながりが容易で、とても簡単に接続できる点が特徴です。

中小企業の方々は、自社だけで業務が完結しません。例えば建設現場の場合、工務店が案件を受け、建材屋、左官屋、電気屋といった異なる法人が協力してチームを組む必要があります。そのようなところに、社外との接続がシームレスな「Chatwork」が活用されているのです。

kenmo:「Chatwork経済圏」が形成されるようなイメージでしょうか? 

山本:そうですね。「Chatworkで仕事しようよ」というかたちで広まるケースが多いです。

また、士業である税理士や弁護士の方々は、「Chatwork」ユーザーが圧倒的に多いです。これは社内で使用するのではなく、主に顧問先と共有して使用するためです。

顧問先はそれぞれ異なる会社であるため、他社製品ではアカウント設定が難しい場合があります。しかし、「Chatwork」は無料で登録し、簡単に接続することができるため、クライアントワークのビジネスにおいて非常に使いやすいのです。

我々の「Chatwork」が広がった大きな要因の1つとして、このような士業の方々が顧問先に導入していただいたことが挙げられます。代理店契約をまったくしていないにもかかわらず、士業の方々のお客さまが広がるたびに、「Chatwork」も同時に広がるという構造で成長してきました。

このように、紹介経由で広がるというのが、我々の圧倒的な強みとなっています。

BPaaSとは

山本:次に、BPaaSについてお話しします。

BPaaSとは「Business Process as a Service」の略で、初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれません。いわゆるSaaS(Software as a Service)と呼ばれるものと似ていますが、さらに1つ上の領域に位置する概念と考えていただければと思います。

SaaSがソフトウェアをクラウド経由で提供するサービスであるのに対し、BPaaSは業務プロセス、つまり人材や業務プロセスそのものをクラウドサービスとして提供するものです。

簡単に言うと、クラウド経由で業務のアウトソーシングサービス、すなわちBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が可能なサービスとお考えいただければと思います。

BPaaSは、中小企業のマジョリティ層DXの本命

山本:BPaaSの利点については先ほど少し触れましたが、中小企業のマジョリティ層や一般層にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)の本命ではないかと考えています。

SaaSがこれほど普及しているにもかかわらず、中小企業の生産性はまったく向上していません。その理由は、SaaSがマジョリティ層に届いていないからだと思います。結局のところ、SaaSを選定し、使いこなせるのはITに詳しい先進層のユーザーが中心です。

一方、人口の3分の2以上を占めるといわれるマジョリティ層のユーザーにとって、使い勝手もURLも異なるSaaSプロダクトを5つも6つも切り替えて使いこなすことは、現場の仕事で忙しい中では非常に難しいという現状があります。

自分たちでSaaSを利用できるお客さまは、SaaSを活用すれば良いかと思います。

ただし、それが難しいマジョリティ市場のDXを実現するには、業務プロセスごとに巻き取り、お客さまに代わってSaaSやAIを活用してDXを推進すること、つまりチャット経由でSaaSやAIの運用代行を行うことが私たちのBPaaSの本質であり、有効な手段だと思っています。

具体的には、チャット経由で「あれやって」「これやって」といった指示をいただくだけで、私たちが裏でSaaSの導入や運用を代行し、お客さまがSaaSによるDXの恩恵を受けられる仕組みです。

中小企業にBPO(アウトソーシング)が浸透しない理由

山本:中小企業にBPOが浸透しない理由についてです。従来のBPOは、基本的に大企業向けが中心でした。オペレーションセンターを地方に大規模に設置し、オーダーメイド型で行うのがBPOの主流でした。

しかし、それでは中堅・中小企業にとって「そんなにロットを出せないよ」ということで、BPOの会社が受け入れてくれないという問題があります。「自社でやらなきゃいけない」という場合でも、現在は人材をなかなか採用できない状況です。

このような問題に苦しむ会社が多く、そこがホワイトスペースになっていると考えています。SaaSを利用できる中小企業はそれを使えばよいですが、SaaSを利用できない中小企業が大多数であり、さらにBPOが高額で利用できない企業も存在します。

そのような企業に対し、クラウド経由で提供する安価なBPOとして、小ロット・短納期・柔軟性を兼ね備えたBPaaSがホワイトスペースを埋める存在になるのではないかと考えています。

kubellが展開するBPaaSのイメージ

山本:我々が展開するBPaaSのイメージについてご説明します。BPaaSには、人事労務における給与計算や採用代行、営業のマーケティング運用としてのメルマガ作成、経理や財務の記帳代行など、バックオフィス系の業務が多く含まれます。

これらの業務を、我々のプロジェクトである「Chatwork」を通じてお受けします。「Chatwork」にご依頼いただければ、裏側ではオペレーターがAIやSaaSを活用し、DX化されたオペレーションを実現するという仕組みです。

当社ビジネス構造の優位性

山本:当社のビジネス構造の優位性についてまとめました。

中小企業のマーケットは1社ごとの規模が小さく、営業効率が悪いです。そのため参入するベンダーが限られ、ニーズに合ったサービスが不足しています。また、中小企業にはITに不慣れな人が多く、AIやSaaSを自力で使いこなすのが難しい状況です。

この結果、労働人口の70パーセントを占める非常に大きな市場でありながら、過去40年から50年間、労働生産性が変わらないという状態が続いています。

そのため、参入する企業が少ないブラックオーシャン市場、つまり資源は豊富であるものの光が届かない深海のような市場になっています。

ここは誰も手を出せなかった市場ですが、中小企業向けに口コミで広がる「Chatwork」というプロダクトを持っている点で、当社は非常に稀有なポジションにあると考えています。

「Chatwork」で接点を持ち、それに加えてSaaSではなくBPaaSを提供することで、中小企業の方々に本質的なDXを展開していきたいと思います。

つまり、当社の最大の強みは、中小企業に対して口コミで広がるという非常に低コストな顧客獲得モデルを活用し、高いリーチ力を持つチャネルを構築している点です。

競合他社がこの市場に参入しても、1社ずつ営業していては割に合わない状況です。一方で当社は営業をしなくてもビジネスチャットを通じて売上や利益を上げると同時に、それが見込み客にもなるという構図を有しています。

そのため、このようなブラックオーシャンのような難しい市場においても、BPaaSのようなサービスを展開できるポジションを持っていると考えています。

ビジネスチャットを含むBPaaSの潜在市場規模(TAM)

山本:ビジネスチャットを含むBPaaSの潜在市場は、非常に巨大です。BPO市場も含めると、中小企業だけに絞った場合でも約49兆円規模とされています。1社だけでは到底取り切れないような巨大なマーケットですが、ここを目指していきたいと考えています。

AIエージェント時代におけるSaaSへの影響

山本:先ほども少し触れましたが、現在、AIが非常に注目されています。昨年からAIエージェントの時代が到来し、SaaSに与える影響が議論されています。その結果、直近ではSaaS関連の株価が軒並み下落する局面も見られました。

従来のAIは「ChatGPT」や「Gemini」のように、質問すれば回答が返ってくるシステムでしたが、AIエージェントでは依頼を受けるとAIが計画を立て、場合によっては数十分から数時間にわたって実行を繰り返しながらレポートを作成したり、システムのソースコードを生成することまで対応したりするようになっています。

AIがSaaSを操作してデータを取得し、それをもとにアウトプットを作成する時代が来ると言われています。これによって人が直接SaaSを操作する必要がなくなる「SaaS is Dead」という言葉が話題となり、業界内では「SaaSの時代が終わったのではないか」とする見方が広まりつつあります。

この言葉には、「AIがSaaSを使うと、ユーザーがSaaSを直接触らなくなるため、SaaSを切り替えてもいいのではないか?」「AIがそもそもSaaS的な業務をやってしまうのではないか?」といったさまざまな文脈が含まれています。

一方で「『Chatwork』はどうなのか?」「『Chatwork』もSaaSですよね?」といったことも、よく聞かれます。こちらはご想像いただければと思いますが、まず、「Chatwork」はコミュニケーションサービスです。

例えば、山本さんと田中さんが会話をする際に「AIを通して会話しますか?」というと、しないだろうと思います。それは、直接の会話に価値があるためです。

いわゆる経理や営業の商談の設定、名刺管理といった作業であれば、AIに「やっておいて」と依頼して素早く対応させることは非常に便利だと考えられます。

しかし、コミュニケーションにおいては直接の対話がなにより重要です。つまり、私たちが提供する「Chatwork」のようなビジネスチャットにおいて、「SaaS is Dead」のようにAIが代替的に操作する世界観はあまり当てはまらないと思っています。

むしろ、AIエージェントを「Chatwork」のチャットインターフェース上から実行できるようにすることで、AIエージェントの実行プラットフォームとしての役割を果たすことが、非常に有望なポジションではないかと考えています。

AIエージェントによる革新でBPaaSは大きく加速

山本:このAIエージェントの革新により、BPaaSは大きく加速すると考えています。BPOという分野は、非常に巨大な市場です。いわゆる労働集約型のビジネスの最たるものがBPOですが、このような労働集約型のビジネスにもAIによる革新が起こるとされています。

コールセンターや開発がその一部に含まれますが、特にBPOはAI活用における最も有望な領域の1つと言われており、高い成長が予測されています。

当社のBPaaSは、AIがまだ十分に進化していなかった頃はオペレーターによって「チャットでSaaSの運用代行をします」と対応していたのですが、現在はAIが急速に進化しています。

しかしながら、AIはITに詳しい人でなければ使いこなすのが難しいという状況が現時点でも存在します。

こちらは今後もしばらく続くと思いますが、チャット経由でオペレーターによるAI活用というかたちで実現可能だと思っています。この結果、オペレーター一人ひとりの生産性が大幅に向上するのではないかと考えています。

AIの急激な進化によるChatwork及びBPaaSの可能性

山本:そのため、私たちはAIに非常に追い風を感じています。「ChatGPT」の名前には「チャット」とありますが、チャットとしての価値が大幅に向上したと実感しています。

「Chatwork」も、過去のメッセージデータが豊富にあることを活用して、それを学習させたパーソナライズされた文面生成や要約といったAIボット機能などを開発中です。また、「Chatwork」自身との接続についても現在開発を進めており、提供を予定しています。

さらにBPaaSでは、お客さまとの対話やSaaSの運用代行、業務の代行といった分野において、裏側でAIエージェントを多数開発しています。

これにより、従来はオペレーター1人当たり10社しか対応できなかったものが、20社、30社、さらには50社、100社といった規模に拡大する可能性があります。劇的な生産性の向上を目指し、バックオフィスの自動運転のような世界観を実現したいと考えています。

ChatworkはヒトとAIが協働するプラットフォームへ

山本:まとめると、「Chatwork」というビジネスチャットは、人とAIが協働するプラットフォームを目指しています。

人だけが使うのではなく、従業員、BPaaSのオペレーター、AIオペレーターが1つのプラットフォームに集まり、それぞれが業務を投げ合ったり、AIが自動で実行したりすることでコラボレーションを行い、ともに働ける場を作りたいと考えています。

ミッション・ビジョンと事業のつながり

山本:ミッションビジョンと事業のつながりについてご紹介します。

当社のミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」です。私たちはビジネスチャットを接点として、BPaaS事業を展開しています。

当社が目指すのはノンコアビジネスのサポートです。バックオフィスの経理や労務など、コアではない部分を引き受けることで、働く人がやりたいことに集中できる環境を提供したいと考えています。

例えば、飲食業はおいしい料理を作ることがコアビジネスです。良いレシピを考えたり、腕を磨いたりすることがそれに該当します。製造業であれば、やはり良い製品を作ることがコアビジネスです。優れた設備を導入したり、スキルを磨いたりすることで達成されます。

こうしたコア業務に注力することで、売上や利益が向上するのはもちろん、自分がやりたいことにより多くの時間を使えるようになり、働くことそのものが楽しく創造的なものになっていきます。良いものや安いものが増えていくことで、社会全体の豊かさにつながると考えています。

そして、ビジョンの「すべての人に、一歩先の働き方を」についてです。労働人口の約70パーセントを占める中小企業は、DXが進まず、40年から50年、歩みが止まった状態にあります。未だに紙とFAXが現役で使用されているのです。

これに対して、SaaSではなくBPaaSを展開することで、ITツールの習熟を必要とせず、DXを可能にしたいと考えています。

私たちが目指すのは、中小企業全体の本社機能の実現です。大企業の生産性が高いのは、本社機能が存在し、DXやコーポレートのバックオフィス業務を集約しているため、事業部門がビジネスに集中する環境が整っているからです。

中小企業はそれぞれがスタンドアローンで業務を行わなければならず、不便です。家事もまとめることで効率が上がるのと同様に、中小企業全体を「Chatwork」でネットワーク化し、業務を集約化することで、超効率的にバックオフィスを担いたいと考えています。

これによって生産性を劇的に向上させ、少子高齢化に伴う社会福祉を支えるとともに、社会全体が前進し、明るい希望を持てる社会を実現したいと考えています。

日本にはなんとなく閉塞感があり、暗い雰囲気が漂っているように感じています。それは、未来が今より良くなるという希望を持てない人が多いからではないでしょうか。

昨日より今日、今日より明日が少しずつでも良くなると考えられる人が増えることで、明るい希望を持てる社会が実現するのではないかと思います。私たちは、そのような社会を作っていきたいと考えています。

中期経営方針

山本:ここからは、中期経営計画について、数字の話に入っていきたいと思います。

中期経営方針として、2026年までに中小企業No.1を目指すBPaaSカンパニーとなり、BPaaSを次の柱として確立することを掲げています。そして、長期では「あらゆるビジネスの起点となるプラットフォーム」として「ビジネス版スーパーアプリ」を目指していく考えです。

中期経営計画

山本:財務計画では、2026年に売上高150億円、CAGR30パーセント以上の成長を目標としています。また、EBITDAは15億円から22億5,000万円を目標としています。

この売上水準は150億円と非常に大きな数字ですが、M&Aも含めて達成を目指しており、成長率としてCAGR30パーセントを達成することに挑戦しています。

中長期の財務ターゲット

山本:中長期の財務ターゲットについてです。

先ほどトップラインについて概要をお示ししましたが、その内訳構造に関して労働集約型の事業であるBPaaSも一定程度含まれているため、どのような利益構造になるのかという点についてよく質問をいただきます。そのため、当社が目指す中長期ターゲットを開示しています。

これは2024年から2026年にかけての計画であり、原価、S&M(セールス・アンド・マーケティング)、R&D(研究開発)、G&A(一般管理費)の比率を示しています。

中長期的にはS&Mのコスト比率を大幅に下げ、R&Dは一定の横ばいとし、G&Aを削減することで、EBITDAマージンを25パーセントから40パーセントにすることを目標としています。

営業利益率としては、15パーセントから30パーセントを達成できるようなビジネスを構築していきたいと考えています。

中期経営計画における3つの戦略

山本:中期経営計画を実現するために、当社では3つの戦略を掲げています。

1つ目は、ビジネスチャットを単なるチャットツール以上のものとし、しっかりとプラットフォーム化する「コミュニケーションプラットフォーム戦略」です。

2つ目は、BPaaSとしてSaaSやAIを運用代行することで本質的なDXを実現する「BPaaS戦略」、3つ目は新規事業領域における「インキュベーション戦略」です。この3つを展開していきたいと考えています。

3つの戦略の関係性・つながり

山本:中小企業にはDXの余地が大きいものの、企業規模が小さいためにDXが進まず、生産性が上がらない領域がありました。そこで、口コミで広がるビジネスチャットである「Chatwork」を通じて接点を持つことで、営業効率を向上させるポジションに当社はいます。

この接点を活かし、SaaSではなくBPaaSを活用することで、IT人材が不足していることが最大のDXの障壁となっている中小企業に対し、「IT人材がいなくても大丈夫」というソリューションを提供していきたいと考えています。

そしてBPaaS以外のプロセス以外の領域にも、さまざまな分野があります。それらをインキュベーション戦略として展開し、例えばファイナンスではキャッシュフローを支援したり、教育、人材、福利厚生、データソリューションなど、さまざまなビジネスを連続的に創出していく企業を目指しています。

中小企業の生産性を劇的に向上させ、日本社会の働き方を変革する会社になっていきたいと考えています。

現中計期間の振り返りとFY26以降の取り組み

山本:2025年の通期本決算がちょうど終わったタイミングに当たり、現中期経営計画期間の振り返りの開示を行っています。

2025年を振り返ると、開発体制を大きく強化できたことが特に良かった点です。これにより、「Chatwork」自身の開発体制がどんどん改善され、新たな機能を次々と追加できる体制が整いました。

そしてBPaaSドメインの立ち上げに成功し、BPaaS単体では昨年比プラス80パーセント、1.8倍の売上高を達成し、非常に高い成長率を示しています。

また、FY25では売上高がBPaaSで10億円を超える規模となり、「Chatwork」と並ぶ第2の柱へ成長してきたと感じています。このスピードでこの領域を立ち上げられたことは、非常に大きな成果だったと思います。

一方で現在の課題として、BPaaSが80パーセントを超える非常に高い勢いで売上を伸ばしているものの、利益率がまだ十分ではありません。SaaSの活用や型化、AIの活用といった裏側の仕組みについては、まだこれからの課題と考えています。

現在は意図的に「量を出してから質を高める」という段階にありますが、今期のテーマとしては、しっかりと利益を生み出していくことを重視していきたいと思っています。

また、「Chatwork」のお客さまとBPaaSのお客さまの間で確かなシナジーを創出し、そのシナジーを活かした取り組みを今後進めていく方針です。

2026年12月期 業績予想

山本:前回の2月に開示した業績予想をご紹介したいと思います。連結売上高は前期比プラス13パーセント以上、EBITDAは15億円となっています。

業績予想と中期経営計画との関係性

山本:こちらのスライドでは中期経営計画との関係性について示していますが、先ほどと重複するため割愛します。

ハイライト

山本:前回の開示では、売上高や各段階利益について、2025年通期終了時点で修正後の業績予想を達成していることを示しました。

期初予想についてはBPaaS側のデリバリーが追いつかず、一部下方修正を行いましたが、修正後の業績予想は達成しました。

売上面では約100パーセントを達成し、利益面では大幅に上回る結果となりました。特に利益面でのコントロールが可能になってきた点が良かったと考えています。さらに、先ほどのBPaaSに関連する部分で、BPaaSドメインの売上が10億円を突破しています。

KPIハイライト

山本:KPIのハイライトです。全社としてのARRは95億5,000万円となりました。

SaaSドメインでは「Chatwork」および「Chatwork」以外のSaaSを含めたかたちとなり、「Chatwork」は全体の約9割を占めると考えていただければと思います。ARRは80億円を超えています。また、登録ID数は806万、課金ID数は83万、ARPUは730円となっています。

BPaaSの売上は10億円を超える規模ですが、ARRがサブスクリプションビジネスとして成長しており、ARRで換算すると14億円を超える規模へと成長しています。BPaaSも同様に成長しています。

業績サマリー(通期)

山本:通期の業績は記載のとおりです。詳細は、スライドの数字をご覧ください。

IRメール配信登録

山本:IRではさまざまなメール配信を行っているため、ぜひご登録ください。当社からの情報発信を受け取ることができるため、ぜひチェックしていただければと思います。QRコードを読み取ることで簡単に登録が可能です。よろしくお願いします。

以上、駆け足となりましたが、私のプレゼンテーションを終了します。

質疑応答:BPaaSの位置づけについて

kenmo:個人的に、BPaaSは非常に興味深いため、ここを中心におうかがいできればと思います。まずは基本的な質問ですが、BPaaSは「Chatwork」の既存顧客に対する追加サービスという位置づけで間違いないでしょうか? 

山本:基本的にはそのとおりです。「Chatwork」が中小企業に口コミで広がり、それが大きな見込み客のプールとなっています。

そのため、現在お使いいただいている「Chatwork」の延長線上で「業務のアウトソースが可能です」「経営の代行が可能です」という切り口から営業している点が主なチャネルです。

ただ、「Chatwork」を使用されていない方もいます。例えば、他のビジネスチャットを使用している方や、そもそもビジネスチャットを導入していない方です。そのような方々に対してはBPaaSを提供し、価値を提供できると考えています。

現在、「Chatwork」ユーザーに対しては「Chatwork アシスタント」というブランドでBPaaSを展開しています。加えて、Chatwork以外のユーザーに向けても「タクシタ」というブランド名で展開し、例えば展示会に出展するなど、さまざまな媒体を通じてアプローチを行っています。

このように「Chatwork」を使用していないユーザーにも展開を進めていますが、主なチャネルはあくまで「Chatwork」です。

質疑応答:BPaaS領域における採用戦略について

kenmo:今後、BPaaSは非常にニーズが高まってくると考えています。一方で競合の参入も想定されるかと思いますが、例えば競合が入ってくる前に市場を確保するために、大規模な人材採用を行うといった戦略はお持ちでしょうか? 

山本:BPaaSという領域は、中小企業から大企業まで含めた全体的なトレンドだと思っています。

その中で、当社は中小企業にフォーカスしたBPaaSを展開しています。中小企業は1社当たりの規模が小さいこと、ニーズが顕在化していないことから、マーケティングや営業の効率が上がりにくく、参入障壁が非常に高い状況です。

当社のビジネスチャットのお客さまは約90万社、IDは800万程度にのぼり、これが当社の圧倒的な競合優位性であると考えています。

同じく中小企業にBPaaSを提供する競合が現れたとしても、当社はマーケティング効率において1社当たりの獲得コストが劇的に異なるため、エコノミクスの観点で優位性を確保できる構造でビジネスを展開できると考えています。

質疑応答:SaaSとBPaaSの今後のバランスについて

kenmo:ビジネスモデルの大転換ではないかと思っていますが、人員がそれほど必要ないSaaS領域から、ある程度労働集約的なBPaaSへ舵を切られます。そのバランスについても、あらためてお聞かせいただけますか? 

山本:おっしゃるとおり、まったく異なるビジネスだと考えています。我々はビジネスチャットの「Chatwork」で上場した際、社員のほとんどがエンジニアで、営業担当もほとんどいない組織でした。

しかし、現在はBPaaSを展開しており、いわゆるオペレーターの方々がすでに400名ほど在籍しています。非常に多くの人材を雇用し、その方々に業務を割り振るという、本当に労働集約型のビジネスを展開しています。

これは採用方法や人材教育のあり方、会社の制度設計、社風の構築に至るまで、まったく異なるやり方だと思っています。この実現に向け、私たちはこれまでスタートアップ的に、いわゆるベンチャー気質のある人材を採用してきました。

しかし、それでは適応できないため、別会社として100パーセント子会社の「kubellパートナー」を設立し、オペレーターの方々にはその会社に在籍してもらい、制度設計も全面的に分離して運用しています。

その上で、私たちもこの分野に経験があるわけではないため、多くの失敗を繰り返しながら、一生懸命取り組んできました。

また、M&Aでグループ入りしていただいた企業がすでにBPaaSを先行して展開していた経験があったため、そこから学ぶことも多くありました。同時に自らも全力で立ち上げを進め、この2年間で10億円規模の事業に成長させることができました。

途中にはさまざまな困難もありましたが、BPaaSに挑戦することや、現在進行形で「AI BPO」に取り組むことなど、SaaS企業としてのあり方を模索し続けています。

ただ、我々ほど本格的にオペレーターを大量に採用し、BPOビジネスの中心へ突き進んでいる企業はほとんどないのではないかと思います。

私たちはこの道に本気で取り組み、事業を拡大しながらAIへと進化させていく本質的な価値を見出しています。「やりきる覚悟」で取り組む姿勢こそ、我々の特徴であると考えています。

質疑応答:BPaaSの収益化の手応えについて

kenmo:BPaaSの収益化の手応えは感じられていますか? それともまだ課題が多いのでしょうか?

山本:正直なところ、裏側は一部AIやDXを活用しているものの、今のビジネスモデルとしては、オペレーターに対して1人当たり、1時間当たりの料金で課金するかたちになっています。

これにより、人材派遣や人材ビジネスに近い収益構造となり、どうしても利益率が低いビジネスとなっているのが現状です。売上の成長はあるものの、利益面では薄い構造だと言えます。

ただ、これは意図的に理解した上で取り組んでおり、まずはBPOビジネスをしっかり学ぶ必要があると考えています。

テクノロジーに尖りすぎて格好を追求するのではなく、まずは泥臭い部分にフォーカスして、どのような会社にどのような課題があり、その業務をどのように解決できるのか、多くの実例から学ぶことに注力してきた2年間でした。

一定の手応えが見えてきたため、ここからは効率化のフェーズに移行し、業務の型化を進める必要があると考えています。

多くの企業では、最終的に経営方法がP/LやB/Sに収束するため、共通化しやすい部分があります。そのため、この共通部分をしっかり型化し、型化が進むことでAIによる自動化が可能となります。

ただし、一定のボリュームがなければ型化に注力しても恩恵が少ないため、事業の規模が一定に到達した中で、利益を出せるビジネスへと転換することが、これからの主要なテーマになると考えています。

今年から来年にかけては、BPaaSが利益を出しつつ成長率を維持し、利益を生み出すビジネスモデルを構築することを目指して取り組んでいきたいと思います。

質疑応答:「タクシタ」の料金体系について

kenmo:御社の主力サービス「タクシタ」について、現在は月10時間程度の業務代行というかたちです。この場合、AIによって社内の生産性が2倍や3倍になったとしても、月10時間の売上は一定のままのため、生産性が改善しても売上は変わりません。

しかし、これを成果物ベースの課金体制にすれば、おそらく売上も2倍3倍になるのではないかと思います。このあたりの課金体系について、考え方をお聞かせいただけますか? 

山本:課金体系には課題感があります。現在は時間単価で提供しており、効率化を図ると稼働時間が減少し、売上が下がってしまう構造になりかねないため、難しい部分がありました。

ただし、時間単価制には見積もりが簡単で参入がしやすいというメリットがあります。例えば「これには何時間かかります」と簡易に提示できるため、現在の方法を採用していました。

しかし、現在の当社の規模は約10億円に達し、一定の型が見えてきました。そのため現在は例えば「経理丸ごとパック」という、月30万円から50万円で経理業務を一括して代行する成果課金型に移行しようとしています。このかたちでは、オペレーターが何時間働いているかは関係なくなるのです。

こうすることで、売上が一定に固定される中でAI化を進めれば利益率が向上するビジネスモデルとなります。結果として、オペレーターの工数が減ると1人のオペレーターが持てる社数が増加し、売上も上がっていく構造になると考えています。

我々の方向性としては、タイムチャージベースの課金からバリューチャージベースの課金に切り替えることを進めています。

まさに成果物課金に近い考え方であり、すでに新規受注の約3割がバリューチャージベースに移行しています。今後はさらにこの割合を増やす方向で取り組んでいます。

kenmo:生産性が上がることで、収益も加速度的に上昇していくということですね。

山本:おっしゃるとおりです。

質疑応答:利益成長フェーズへの移行タイミングおよび営業利益率の目標について

荒井沙織氏(以下、荒井):「収益性について質問です。SaaS企業として、今後どのタイミングで利益成長フェーズに入ると考えていらっしゃいますか? 営業利益率の目標があれば教えてください」というご質問です。

山本:ビジネスチャットサービスの「Chatwork」は、すでに利益が出る状態にあります。そこで生まれるキャッシュフローを、現在はBPaaSの立ち上げへの投資に充てています。

ただし、全力で投資して赤字にするのではなく、しっかりと増収増益を確保しながらBPaaSが持つ大きなポテンシャルを活かし、BPaaSの成長を最大限加速させつつ、増収増益を目指す方針を取っています。

質疑応答:ARRおよび売上成長率の目標について

荒井:「今後のARRや売上成長率について質問です。中長期では、どの程度の成長を目指しているのか教えてください」というご質問です。

山本:現在、中期経営計画で掲げている「CAGR30パーセント」という目標がありますが、同じような世界観でよく言われているのが「40パーセントルール」です。

これは、売上成長率と営業利益率を足した数字が40パーセントを超える水準を指し、グループ企業に求められる1つの基準とされています。そのため、この基準をしっかりと満たせるように考えています。

質疑応答:スターティアホールディングス社とのシナジー効果について

kenmo:スターティアホールディングス株式会社と業務提携されている点についておうかがいします。スターティアホールディングス社は中小企業への営業に強みを持つ企業だと思いますが、そのシナジー効果や意図について教えていただけますか?

山本:スターティアホールディングス株式会社とは、4年から5年前にクラウドストレージ事業を同社から譲り受けるかたちで合弁会社を設立しました。当社が51パーセント、スターティアホールディングス株式会社の子会社が49パーセントの割合で、共同運営していたものです。

一定の成長が見え、開発が一段落したことを受けて、当社が100パーセントの完全所有に切り替えることを、先日開示しました。

この変更によって資本関係上のジョイントベンチャーが解消されますが、4年から5年間パートナーとしてお互いの強みを活かしてきた経験から、資本関係がなくなっても業務提携は継続するかたちで進めていくことをあらためて表明しています。

これまで進めてきたスターティアホールディングス株式会社が提供する「クラウドサーカス」のようなマーケティング製品を、当社が「Chatwork」のユーザーに提案する一方で、スターティアホールディングス株式会社の強みである営業力を通じて当社の「Chatwork」やBPaaSなどの製品をご提供いただくことで、今後も相互にシナジー効果を追求していきたいと考えています。

質疑応答:BPaaS構想による今後の変化や可能性について

kenmo:将来的な話として、BPaaS構想によって御社が他社のSaaSの代理店となる、あるいは御社が代理店の役割を果たすといった構想はあるのでしょうか? 

山本:そのような可能性は、十分にあると思います。

例えば、私たちはお客さまのフロントとして経理の代行を行う場合がありますが、その裏側ではクラウド会計のSaaSを使用します。クラウド会計のSaaSを自社で開発するのは非常に大変なので、どこかと提携することになると考えています。

その際、標準を定めることでボリュームが増加し、我々が扱う数が多くなるため、それに応じて価格交渉力も高まるかたちになります。その結果、SaaSを選定しつつ、サービスをより安価に提供することで、ユーザーのみなさまに価値を届けるベンダーとしての役割を果たせると考えています。

また、バックオフィス業務にはさまざまな領域がありますが、それぞれの分野でSaaSを自社で開発する可能性もあると考えています。

他社のSaaSを利用することもありますが、自社でAIを活用して新たなソリューションを構築したり、M&Aを通じて2番手や3番手のSaaS企業をグループの一員として取り込んだりすることも視野に入れています。そうすることで、SaaSの利益を完全に我々のものにできます。

お客さまにとっては、どのSaaSが使われているかはBPaaSの中に隠れて見えないかたちになるため、当社としてはそれを利益を上げるための手段として活用できると考えています。

山本氏からのご挨拶

山本:本日は大変お忙しい中、当社の説明会にご参加いただきありがとうございます。当社はビジネスチャットとして一定の知名度がありますが、新たな柱としてBPaaS、「タクシタ」というブランドで事業を展開しています。

「Chatwork」に続き、チャット経由でBPaaSという取り組みを進めており、第2の創業期にあると考えています。この新たなおもしろいフェーズに入り、新しいAI時代の中で非常に刺激的な段階にあるということを、ぜひみなさまにも知っていただければと思います。

まだまだ立ち上げ時期であり、しっかりと利益を出すのは今後お見せすることになりますが、これからのAI時代において爆発的な成長を見せたいと考えています。ぜひ、ご期待いただければと思います。本日はありがとうございました。

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