バフェット氏が東京海上に目をつけた「投資ストーリー」
割安とは言い切れない東京海上にバークシャーが投資した理由として、バフェット氏が得意とする「自社株買いストーリー」が見えてきます。
東京海上は政策保有株式を売って得た現金を、そのまま自社株買いの原資として活用する方針を鮮明にしています。
かつてバフェット氏がAppleに投資した際も、同社の強力な自社株買いを高く評価していました。
発行済み株式数が減少し続ければ、一株当たりの価値(EPS)は自動的に向上し、株価も上がりやすくなります。
まだ売るべき政策保有株式が大量に残っている東京海上は、今後も継続的な自社株買いが期待できるため、バークシャーはその「株価向上の構造」を買ったのではないかという仮説が成り立ちます。
<リスクは?>
もちろん、投資である以上リスクは存在します。
保険会社にとって最大の懸念は、巨大な災害や事故による一時の巨額支払い義務の発生です。
過去には、東日本大震災の際に東京海上の利益が大きく減少した事例がありました。
現在も、ロサンゼルスの山火事などの影響で保険料が引き上げられるといった動きがありますが、南海トラフ地震や首都直下型地震が発生した場合には、一時的に大きな赤字に転落する可能性があります。
しかし、保険ビジネスの優れた点は、そうした災害を経験した後に「リスクを踏まえた適切な保険料」への引き上げが認められるため、長期的には非常に安定した利益を出しやすいビジネスモデルであるという点にあります。
<ライバル他社(MS&AD、損保ジャパン)への波及はあるか>
バフェット氏が5大商社に投資した際は、各社を横並びで買いましたが、保険業界で同様のことが起きるかと言えば、その可能性は低いかもしれません。
なぜなら、東京海上を選んだ大きな理由は、同社がアメリカ市場で既に確固たる事業基盤を持っていたからだと考えられるからです。
MS&ADや損保ジャパンは、海外比率が3割程度に留まっていたり、進出先が主にアジアであったりと、アメリカでの事業展開という点では東京海上に一歩譲ります。
現在の株価指数を見ても、他2社は東京海上のニュースにそれほど大きく反応していません。
投資家も「バフェットが認めたのは東京海上だけではないか」と冷ややかに見ているフシがあります。
今から「イナゴ投資」をすべきか
かつての商社投資では、バフェット氏の参戦が発表された後に買っても、その後の株価上昇で5倍以上の利益を得ることもありました。
しかし、今回の東京海上については、既に実質PERが高まっていること、そしてバフェット氏自身の直接的な意思決定ではない可能性を考慮すると、ストップ高の後に飛び乗るには相当な勇気が必要です。
賢明な株式投資家としての戦略は、今回「バークシャーが認めるほどの優良企業である」と証明された東京海上をウォッチリストに入れ続け、災害などによる一時的な業績悪化で株価が大きく売られた際に、勇気を持って買い向かうことだと言えるでしょう。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年4月3日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。