■一正蒲鉾<2904>の今後の見通し
1. 2026年6月期の業績見通し
2026年6月期の連結業績は、売上高36,200百万円(前期比4.7%増)、営業利益1,100百万円(同23.4%増)、経常利益1,150百万円(同26.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益750百万円(同0.4%増)と、増収増益の予想を据え置いている。通期予想に対する各項目の中間期時点での進捗率は、売上高が54.1%、営業利益は77.5%、経常利益は72.7%、親会社株主に帰属する当期純利益は80.8%と、各利益項目で70%を超える高水準となっている。ただし、例年第2四半期に収益が高まり、その後は平常水準である収益構造や、主原料である北米産スケソウダラすり身価格の上昇が継続している点を踏まえると、通期予想達成に向けては引き続きコスト動向を注視する必要がある。
一方で同社は、少なくとも下期には追加の価格改定の実施は想定していない。すり身や鶏卵、エネルギー価格といったコスト上昇の逆風に対し、市場動向を先読みした調達・在庫調整や、生産ラインの省人化投資など、自力でのコスト吸収に全社を挙げて引き続き取り組む方針である。同時に、守りの姿勢だけでなく、需要が大きく伸長している「小判てんぷら」の増産体制構築(2026年5月より新ライン稼働)や、猛暑対策・節約志向に応える戦略的な商品提案、きのこ事業における高付加価値な「有機まいたけ」の投入など、トップライン拡大に向けた攻めの施策も着実に実行していく。さらに中長期的な動きとしては、「ICHIMASA30ビジョン」で掲げるグローバル企業の実現に向け、2026年2月にタイのSmile Heart Foods Co., Ltd.との事業連携覚書を締結しており、今後OEM製造を見据えた商品開発に向けた情報交換や市場調査等を進める。さらに、3月には海外事業部内に「グローバルトレード室」を新設しており、国内外のアライアンス企業との連携や食品輸出入事業の強化を先導する。
主原料となる北米産スケソウダラすり身価格は、2025年Bシーズン(7~12月)では欧米でフィレ需要が強く、フィレの生産割合を増加させた結果、すり身の生産量が低水準となった。さらに、製造費や物流費の高騰も加わったことで、2025年Bシーズンは4期連続の値上げを実施した。2026年Aシーズン(1~6月)は、引き続き欧米でのフィレ需要が強く、生産コストの上昇や円安の影響も加わり、今後さらにすり身価格は上昇すると同社では予測している。またイラン情勢の緊迫化に伴うエネルギーコストの上昇などを含め、同社にとっては厳しい経営環境が続く見通しである。ただし、2026年6月期は第二次中期経営計画の最終年度にあたるため、不透明な事業環境下ではあるが、足元の課題にスピーディーに対応しつつ、成長領域への投資や準備を着実に進めることで、「事業の成長力・収益力基盤の確立」という中期経営計画の総仕上げに向けた取り組みの進捗が注目される。
2. 事業セグメント別の見通し
(1) 水産練製品・惣菜事業
まず第一に主力の「サラダスティック」について、2026年2月下旬より順次リニューアル発売を行っている。従来品と比較し、カニのような旨味成分を約24%、甘味成分を約27%高めることで、より本物のカニに近い味わいを追求した。また、消費者のニーズに合わせた商品の提供という点から、「猛暑対策・節約志向・人口減少・高齢化社会」をキーワードに商品提案を行う。具体的には、猛暑による食欲低下時の手軽な栄養補給食として「うまい!ズワイガニエキス入りカニかまバー」やビタミンB1を強化した「うなる美味しさ うな次郎」の販売を促進する。買いだめや利便性ニーズには、冷凍保存可能な「小判てんぷら」や「お椀で食べるおでん」、火を使わない「ふんわりはんぺん」「香ばし生ちくわ」などの拡販を進めることで対応する。
需要が大きく伸長している「小判てんぷら」については、増設した生産ラインを2026年5月より稼働させる計画である。これにより製造拠点を増やし、全国規模での供給拡大と売上伸長を目指す。
海外展開については、2025年5月にうなぎの蒲焼風かまぼこ「うなる美味しさ うな次郎」の海外向け「FROZEN COOKED FISH CAKE UNAGI FLAVOR(輸出うな次郎)」の輸出エリアを全世界へと拡大した。また、子会社化したインドネシアのKIFについては、海外の中核拠点として同社からの人材追加派遣、設備の増強、現地での販売強化(日系チェーンなどへの販売強化)を進め、海外展開を引き続き加速する計画である。
(2) きのこ事業
まいたけについては、引き続き適正な販売単価を維持するため、チャネル別販売単価の管理を徹底する。加えて、新たに有機JAS認証(日本農林規格)を受けた「有機まいたけ」の販売を開始し、注力製品として拡販を図る。高付加価値製品は、競合他社との価格差の是正にもつながる可能性がある。生産面では、上期に栽培センター内の空調設備の増強や栽培環境の整備を行った結果、安定栽培が可能となった。引き続き一段の猛暑に備え、まいたけ品種に最適な環境の調査・試験研究を進めるとともに、センター内の空調設備を強化して栽培のさらなる安定化を図る。また、安定栽培を背景に、年間行事や流通企画に合わせた季節ごとのメニュー提案や、外食チェーン向けの業務用商材開発により、喫食機会を創出する。外食チェーン開拓については、たとえば立ち食いそば等での需要喚起といった動きがあるようだ。
合理化・省人化投資についても継続する考えであり、包装工程において効果のあった設備投資を水平展開して効率化を図るほか、これまで研究開発を進めてきた接種工程の自動化・省人化にも投資を行うことで、継続的なコスト削減を進める。
(3) 運送・倉庫事業
運送部門においては、慢性的な人手不足・輸送能力不足を抱えているが、営業力強化による定期便のさらなる獲得に加え、上期に奏功した標準運賃の改定の流れを適宜維持しつつ、戦略的アライアンスによる持続可能な輸送体制を構築する。倉庫部門では、社会環境等の変化や顧客ニーズに対応したソリューション型営業とCS(顧客満足度)の向上活動、現場業務の効率化により収益体質の強化を目指す。
3. トピックス
持株会社体制への移行に関する検討開始を2026年1月23日付で発表した。消費者ニーズの多様化や市場環境の変化が加速するなか、グループ全体の経営資源をより効果的に活用し、迅速な意思決定と事業の多角化を推進することの重要性が高まっている。今回の持株会社体制化の検討開始は、M&A等戦略投資を見据えたグループ経営の最適化、各事業会社の自律性向上、さらなる成長戦略の推進を目的としている。移行により、経営管理機能の強化、事業ポートフォリオの再構築、新規事業への積極的な投資など、企業価値の向上を目指す。なお、移行時期と方法については、決定次第改めて発表があるようだが、持株会社の株式については、引き続き上場を維持する予定としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 若杉 孝)
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