2026年5月13日に発表された、株式会社サカイ引越センター2026年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
1.連結決算概要
山野幹夫氏(以下、山野):本日は株式会社サカイ引越センターの決算説明会および長期ビジョンおよび中期経営計画報告にお越しいただき、誠にありがとうございます。専務取締役の山野です。
本日は、最初に経理本部副部長の多田より決算説明を行い、続いて私から長期ビジョンおよび中期経営計画についてご説明します。
多田健吾氏(以下、多田):連結決算の概要です。2026年3月期の売上高は前期比3.1パーセント増の1,247億4,100万円、営業利益は前期比2.7パーセント減の125億7,200万円、経常利益は前期比0.7パーセント増の132億2,900万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比1.3パーセント減の86億5,200万円となりました。
2.セグメント別売上高

セグメント別売上高についてご説明します。引越事業は前期比1.9パーセント増の1,053億5,800万円、電気工事事業は前期比7.3パーセント増の49億8,000万円、クリーンサービス事業は前期比5.4パーセント増の57億6,600万円となりました。
リユース事業は前期比14.2パーセント増の78億300万円、その他の事業は前期比20.3パーセント増の8億3,200万円となっています。
3.個別決算概要

個別決算の概要です。2026年3月期の売上高は、前期比2.2パーセント増の1,063億1,400万円、営業利益は前期比3.6パーセント減の109億8,400万円、経常利益は前期比0.1パーセント減の117億1,000万円、当期純利益は前期比2.6パーセント減の76億7,400万円となりました。
4.チャネル別売上高

チャネル別売上高です。一般は前期比0.5パーセント増の138億600万円、インターネットは前期比4.3パーセント増の372億7,200万円、法人は前期比0.6パーセント増の531億7,700万円、法人のうち事業会社は前期比4.6パーセント増の216億4,400万円、その他は前期比21.7パーセント増の20億5,900万円となっています。
5.件数・単価の動向

件数と単価の動向です。作業件数は上期にインターネットを中心に受注したことで増加し、作業単価は5年連続で過去最高値を更新しました。
6.件数・単価の動向

価格帯別の件数割合です。前期に対して低単価層と高単価層の割合が増加しました。
7.連結貸借対照表

連結貸借対照表です。前期末と比較して、現金および預金は4億8,600万円減少し、295億2,700万円となりました。純資産は33億4,900万円増加し、993億4,900万円となっています。また、有利子負債の残高は5億8,900万円減少し、36億1,100万円となりました。
8.連結キャッシュフロー計算書

連結キャッシュフロー計算書です。前期と比較して、今期の営業活動によるキャッシュフローは4億2,900万円減少、投資活動によるキャッシュフローは48億5,300万円増加、財務活動によるキャッシュフローは31億2,600万円減少しました。
現金および現金同等物の期末残高は5億円減少し、257億500万円となりました。
9.連結業績予想

2027年3月期の予想についてはスライドのとおりです。連結業績予想では、売上高は前期比4.2パーセント増の1,300億1,300万円、経常利益は前期比1.0パーセント増の133億6,800万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比1.0パーセント増の87億4,300万円を見込んでいます。
10.個別業績予想

個別業績予想については、売上高は前期比2.5パーセント増の1,089億7,200万円、経常利益は前期比0.5パーセント減の116億5,300万円、当期純利益は前期比0.5パーセント減の76億3,600万円を見込んでいます。
0.はじめに

山野:長期ビジョンおよび中期経営計画についてご説明します。本日お伝えしたいことは、長期ビジョンであるVision2035「世界一の新生活応援グループ」を実現するため、事業3層モデルと再定義し、3年ごとにステージを上げていきたいと考えています。
「中計2029」では、本業である引越事業を第1層と定義し注力していきます。「中計2032」では引越付帯事業である第2層を、「中計2035」では引越外事業である第3層とし、この3層モデルにより、段階的な成長を目指していきます。
そして、顧客価値と人的資本を併せたLTV指標「まごころバリュー」を策定し、一人当たり将来にわたって生み出す価値を追求します。特に、この指標は社内で従業員と共有し、価値を追求していきます。
「中計2029」では、引越事業を最優先領域として「シンカ」させていきます。この「シンカ」については後ほどご説明しますが、「真価・深化・進化」3つの意味を持たせています。
また、ROE10パーセントへのチャレンジを掲げ、資本効率を意識した経営を目指します。
1.「Vision2035」の策定背景

事業3層モデルを再定義した事業再成長戦略についてご説明します。事業3層モデルとは、第1層を引越事業と位置づけており、これがすべての核になります。そして、この層では総合引越サービスを展開していきます。
第2層は引越付帯事業で、引越顧客への引越以外のサービスを提供する層として定義しています。
第3層は引越外事業で、引越顧客以外を対象にするサービスです。この第3層のお客さまを引越事業に還流させる構造になっており、これが事業3層モデルとなっています。
「まごころバリュー」については、当社は労働集約型の事業であり、いかに各個人の生産性を向上させ、長期間勤務していただけるかが重要なポイントです。そのため「一人当たり生産性×滞在期間」というかたちで位置づけています。後ほど、KPIを含めてご説明します。
1.「Vision2035」の策定背景

資本効率を意識した戦略についてです。中期経営計画の見通しとして、ROEを9.5パーセントから10パーセントに引き上げることを目指します。
利益については「Vision2035」の達成に向けた成長フェーズと位置づけています。また自己資本比率についてはこれ以上増やさずに、現行水準を維持し、まずは止血をするという位置づけで定義しています。
2. 現状の事業環境整理と課題点

引越事業を含めたサカイ引越センターグループが直面する4つの課題についてお話しします。
まず1つ目の課題は「成長性」です。引越ビジネスの成長性については、人口減少により引越市場がほぼ成熟しており、今後は徐々に縮小していく可能性があると考えています。また当社の支店展開もある程度十分な状況となっています。
2つ目の課題は「持続性」です。労働環境の変化に伴い、若年層に限定されるわけではありませんが、従業員の定着率向上が重要な課題となっています。
3つ目の課題は「生産性」です。AIやDXの活用において遅れが見られる点を課題と認識していますが、改善の余地はまだまだあると捉えています。
4つ目の課題は「資本効率性」です。ROE(自己資本利益率)のここ数年の動きを見ると低下を続けており、資本を十分に活用できていないことがその要因だと認識しています。
2. 現状の事業環境整理と課題点

「Vision2035」に向けた変革テーマと改善策です。まず「成長性」については、引越事業は引き続き成長の余地があると考えています。数年前から「自前主義にこだわる必要はない」という考えのもと、パートナー戦略を採用してきました。さらにそれを進化させ、引越アライアンスをさらに促進していく方針です。
具体的には、4月30日に東京で幅広く展開されているファミリー引越センター株式会社をM&Aによりグループインしていただきました。
ファミリー引越センターはオリコンランキングでも名前が挙がる企業であり、このような信頼性の高い会社とアライアンスを組み、事業を展開していきます。
シェア率についても、さらなる向上が可能であると考えています。これまで引越事業はBtoCを主軸としていましたが、数年前からBtoBやBtoGなど、新たな領域への積極的な参入を進めてきました。
「引越」という枠にとどまらず、「物流」という観点を取り入れ、BtoBおよびBtoGを含めて事業を拡大していきたいと考えています。
そして、他社にはない当社グループの特徴として、引越と密接に関わるグループ会社の存在が挙げられます。これにより顧客に利便性を提供し、顧客価値の最大化を図っていきます。
「持続性」に関しては、LTV指標「まごころバリュー」を浸透させる取り組みを進めています。具体的には離職率の低減や滞在期間を伸ばすことを目指します。
「生産性」では、DXの可能性がまだ大きく広がっています。AIの活用については現在2つの軸で進めています。1つは引越を受注するためのAI活用、もう1つは生産性を向上させるためのAI活用です。
生産性を上げるためのAIの活用について、受付業務においては、これまで夜間は受付が難しかったのですが、AIの自動音声により対応しています。この自動音声受付は人が対応しているのと同等の精度となっており、順調に稼働しています。
また面接の分野でもAIが活躍しています。今は若い方から夜間に面接の申し込みが多く寄せられています。これまでは当社の営業時間内や面接担当者が在席している時間に限られていましたが、AIを活用した面接システムにより、いつでも面接が可能になりました。この仕組みにより、面接の頻度が大幅に増加しています。
その結果、アルバイトの申し込み数と、実際に働いていただいている方の数も増加傾向にあります。このように入口を広げる取り組みが進んだことで、アルバイトの方々を効率的に集められるようになっています。
「資本効率性」については資本効率を意識しつつ、投資と還元のバランスを図っていきます。また、次のステージに向けた戦略実行力を着実に高めていきます。
3.中期経営計画2029の位置づけ

そのためのロードマップをスライドに示しています。「中計2029」では「シン・まごころ経営」により、引越事業の土台をきっちりと固めます。
「中計2032」では、グループの再成長に取り組みます。「中計2035」ではサカイグループモデルの革新を目指します。引越以外のお客さまをいかに引越に還流させるかをテーマに掲げて進めていきます。
「中計2029」では、ROE10パーセントに挑戦します。そのためにも企業価値向上を議論する会議体「TEVA(Task force on Enterprise Value Acceleration)」を活用し、施策を実行していきます。
ROEの分子については、DXやAIなどを活用し生産性を向上させていきます。ROEの分母に関しては財務の分野で、自社株買いを含めて適宜行います。さらに持続的成長については、人的資本投資への取り組みをさらに強化していきます。引越アライアンスの強化については、M&Aや資本業務提携の検討を引き続き進めていきます。
これらの取り組みを通じて、「中計2029」の土台を固めていきます。最終的には「Vision2035」で、より広がりのある「世界一の新生活応援グループ」を目指し、さらなる拡大を図っていきます。
4.事業3層モデルの再定義

スライドはロードマップのイメージです。「中計2029」の「シン・まごころ経営」については、引越事業に注力し、強化していきます。全体に注力しつつも、特に引越事業に力を入れていきます。
「中計2032」では「グループの再成長」としてグループ戦略に注力していきます。そして「中計2035」では引越以外の事業にも注力していきます。もちろん引越事業にも力を入れながら取り組んでいきますが、注力する領域を3層に分け、3段階でステージを上げていく方針です。
5.まごころバリューに基づいた当社の成長戦略

「まごころバリュー」についてご説明します。「まごころバリュー」は、「一人当たり生産性×滞在期間」から算出するものです。
KPIである引越件数と単価を掛けたものが引越の売上となります。それにグループ売上を加えて従業員数で割ることで一人当たり生産性となります。この一人当たり生産性に従業員の滞在期間を掛けたものが「まごころバリュー」となります。
KPIである引越件数を向上させるために、NPS(顧客推奨度)、ドライバー一人当たりの引越件数、アルバイトスタッフの稼働日数やサカイムービンググループの引越件数を指標として設定しています。
単価については、社内資格であるTOPアドバイザー任命者数を増やしていくこと、また付帯率や物販率、リユース買取率などをあげていきます。
グループ売上高についても、在庫回転率や外部売上比率、法人部門からの送客数などを指標として設定しています。
従業員の滞在期間については、エンゲージメントの強化を図って延ばしていきます。
この「まごころバリュー」の具体的な数字は社内のみで共有し、適宜このような場で取り組みについてご説明していきます。
6.従業員満足度の向上

エンゲージメントに関する課題についてです。制度・待遇、成長環境、組織風土など、さまざまな要素に対応しつつ、KPIをどのように設けるかを検討しています。
特に金融リテラシーを含めて、従業員がサカイ引越センターのポテンシャルを十分に理解できていないと感じています。そこで、従業員持株会の加入率目標を80パーセントに設定しました。
これは非常に高い目標ですが、達成するためには新入社員を含めた従業員に対し、会社の状況や取り組みについて十分に説明を行う必要があります。こうした取り組みによって加入率を上げ、最終的には滞在率の向上につなげることが目標です。
目標値の設定は高めではありますが、このようなKPIを掲げて滞在率を高めていきたいと考えています。
サカイ引越センターは人によって成り立つ会社であるため、従業員が会社を去ることは大きなリスクとして捉えています。これらの指標を用いて対応を進めていきたいと考えています。
7.キャッシュ/キャピタルアロケーション

資本配分についてご説明します。資金創出については、営業キャッシュフローが期間累計で345億円、現在現預金は300億円となっています。
現在現預金額については多いと捉えています。今後の必要現預金として250億円を見込んでいます。
この250億円の内訳は、2ヶ月分の資金とリスク資金として、少し慎重に見積もっています。
株主還元については、期間累計で190億円を計画しており、確実に還元を進めます。
投資については、成長投資に115億円、更新投資に90億円を予定しています。投資の具体的な内容として、M&A戦略はさらに積極的に加速させていきたいと考えています。また新規出店や車両、人材、そしてシステムへの投資を計画的に進めていきます。
このようなかたちで資金配分を行い、さらなる成長に向けて進めていきます。
8.M&A方針

サカイ引越センターのグループ会社と今後の対象領域についてご説明します。第1層領域については、サカイ引越センターはまさにここを中核事業として取り組んでいます。この中期経営計画ではこの第1層に本腰を入れて基盤を再整備し、土台作りを行うことを目指しています。
現時点ではスタイル引越センター、ファミリー引越センターといった引越会社を傘下に収め、オヅロジとその下にあるZERO1(ゼロワン)という物流会社もM&Aによって取り込んでいます。さらにサカイパンダロジや関越物流など、物流事業にもこの3年間は注力する計画です。
第2層領域についてです。エレコンと2026年3月にグループ入りした東海サービスセンターは電気工事を手掛ける会社です。当社の電気工事も一部担っていただいており、今後もこの分野でのさらなる成長を期待しています。またその他多岐にわたる業務にも注力しています。
その他にも、商品販売を行う新世紀サービスやジェイランド、エヌケイパッケージ、キャンディル、セキュリティのサカイなど、第2層領域である引越に関連する事業領域に取り組んでいます。
今後も電気工事事業やリユース事業、商品販売事業などについて積極的に事業を進めていく予定です。特にリユース事業は引越とのシナジーが高いため、さらに注力していきたいと考えています。
第3層領域についてです。ここにはクリーンサービス事業が含まれます。当初はBtoC領域への展開を目指していましたが、現在はBtoB領域でのクリーンサービスに注力しています。人手不足の影響もあり、BtoC領域の進展は難しい状況です。
ビルメンテナンス事業を含め、最終的には引越事業に還流できるよう取り組んでいます。このように第3層領域を引越事業へ結び付けることを目指し、今後も事業を推進していきます。
9.成長投資

IT戦略です。IT戦略も引き続き積極的に推進していく必要があります。まず「生産性」について、先ほど申し上げたようにAIの活用はどの企業においても不可欠となっています。当社でも生産性向上を目的として活用を進めています。
それに加えて、営業やトラックの配車システムにおいても、導入に向けて進行中であり、これらを実施することでさらなる生産性向上を目指していきます。
「持続性」に関しては2つの軸に重点を置いています。1つ目はセキュリティの強化です。そして2つ目は、BCP(事業継続計画)の対応です。
現在、ランサムウェアをはじめとしたサイバーリスクが非常に高まっている状況です。当社では、大半のお客さまの情報がネットワーク経由で入ってくる状況にあり、このネットワークが停止してしまうと引越業務が行えなくなるリスクがあります。
そこで、引越ビジネスを停止させないための投資を堅実に進めていく必要があると考えています。この2軸を柱として持続性を追求しています。
「成長性」については、グループ内での相互送客を可能にするシステムを整備することに取り組んでいます。グループ内のカスタマージャーニーを実現するため、横断的なシステムを計画中です。
例えば、引越会社をグループに加えた際には、当社の引越システムや人事システムなどを相互に共有化します。また相手側のシステムが優れていればそれを活用するなど、横断的な連携を進めています。これによりグループ内の連携をさらに強化し、成長性を高めていきたいと考えています。
10.事業成長 × 投資家目線への適応を目指した改革体制

これらの取り組みを実行するためには、組織体制をさらにブラッシュアップしていく必要があります。その一環として、2年前の10月に資本政策委員会と戦略投資委員会という委員会を設立しました。
当社では「M(まごころ)Project」というプロジェクトを立ち上げ、そのプロジェクトチームを中心に、事業ワーキンググループや人的資本ワーキンググループ、DX戦略ワーキンググループがそれぞれディスカッションを行い、そこでの議論や戦略をまとめます。プロジェクト推進には、株式会社SHIFTのTEVAのメソッドでサポートしていただきます。
それをもとに、資本政策委員会や戦略投資委員会に提案し、執行していく仕組みを整えています。この仕組みを通じて、中期経営計画を含めた事業の加速を図っていきたいと考えています。
11. 株主還元方針

中期経営計画期間においては、配当性向を55パーセントとしています。先ほどご説明したとおり、これ以上資本を積み上げていかないという方針の中で、第1段階としてはまずは止血するということで、配当性向55パーセントを予定しています。
12. 株主還元方針

当社はBtoCの会社です。一部の機関投資家からは「株主優待は不要ではないか」というご指摘をいただくこともありますが、当社はBtoCの会社であり、「株主さまイコールファン」というのが創業者の思いでもあります。
そのため、話が出尽きるまで議論を行うスタンスで株主総会を開催してきています。現在も株主総会後に懇談会を開催し、総会で話しきれなかった内容について、株主さまからさまざまなご意見をいただいています。昨年も約600名の株主さまにご参加いただき、さまざまなご指導を賜りました。
このような思いもあり、株主優待を充実させたいという考えのもと、お米をお渡ししています。このお米は「生活に密着した会社であるからこそ、生活に密着したものを提供したい」という創業者の考えを継承し、現在も継続しています。
13 . 中計2029の主要計数

バリュエーション戦略として、2027年3月期は売上高1,300億円、ROE8.8パーセントを見込んでいます。
2029年3月期においては売上高1,500億円、ROE10パーセントを目指してチャレンジしていこうと考えています。
14.サステナビリティへの取り組み

CO2削減への取り組みについてです。引越用トラックに関しては荷物を積む必要があるため、現状では電気自動車での荷物の輸送が難しい状況です。
宅配便など一部のトラックでは電気自動車が使用されていますが、引越荷物は重くて電気自動車では運べないというのが現状です。
対応できる電気自動車はまだ市場に出ていないこともあり、新車への代替を進めてCO2削減に向けた取り組みを推進していく方針です。
リユース品の回収については、引越とリユースには深い因果関係があるため、そこをきちんと循環させていく必要があります。一部では行政とも協力を進めています。行政と連携し、ゴミを減らす取り組みを行っています。
現在、札幌市や福岡市をはじめとする5自治体と協力してさまざまな活動を進めています。このような取り組みを通じて、サステナブルな活動を展開していきたいと考えています。
最後に

「中計2029」のテーマは「シン・まごころ経営」です。成長の軸として、3つの「シンカ」を掲げています。1つ目の「シンカ」は「真価」です。特にグループインしていただいた会社に対して、サカイの技術やブランド力、これまで培ってきたさまざまなものを提供し、真価をさらに高めていきます。
そして2つ目の「シンカ」は、さらに深くするという「深化」です。具体的には、これまでBtoCが中心だった事業をBtoBやBtoG、大型移転を含む領域に広げ、引越サービスをより一層深めていきます。
3つ目の「シンカ」は「進化」です。引越アライアンス戦略において、これまでの引越自前主義を改め、パートナー戦略を進めてきました。さらにこのアライアンス戦略を拡大し、シェアをいかに増やしていくかが重要です。
サカイ引越センターは、まだシェアを伸ばせると考えています。現状の全国シェアは約20パーセントで、関東では約16パーセントです。ファミリー引越センターも関東の企業であるため、さらなるシェア拡大が期待できると見ています。
このように、引越アライアンス戦略をさらに前進させ事業の土台を強化していきたいと考えています。
「世界一の新生活応援グループ」を目指し、スライドの画像に示すように、「暮らしの中にもっと“SAKAI”を!」と浸透させていく方針です。
質疑応答:引越以外の輸送事業の拡大について
質問者:第1層領域についてうかがいます。サカイパンダロジのような引越以外の輸送事業について、どこまで広げていくお考えでしょうか?
この3ヶ年の中期経営計画において、非引越輸送の売上高をどの程度まで伸ばしていくお考えなのか、教えてください。
山野:一般貨物に関しては、サカイパンダロジという当社の一般貨物事業グループ会社があります。この部門では、長期的に引越事業をかなり手掛けており、売上の約6割から7割をサカイ引越センターの売上が占めています。一方で一般貨物の占める割合はまだ約3割となっています。
将来的にその割合をさらに増やしていくのかについては、まずはこの中期経営計画の3年間において、一般貨物よりも引越事業の利益を伸ばすことを目指しています。長距離輸送や効率的な輸送方法、また現在細かい輸送においてはニーズも高いと考えていますので、そのような際は一部サカイパンダロジを活用することも考えられますが、基本的には引越事業と寄り添って進めていく方針であり、一般貨物だけが突出して増えるということは想定していません。
ただしM&Aなどで、将来の成長に役立ちそうな一般貨物の会社が出てきた場合には、投資を検討する可能性はあります。
質疑応答:自己資本の考え方について
質問者:御社が考える最適な自己資本についてのお考えについてうかがいます。中期経営計画期間中は現行水準を維持するとのことですが、この水準を維持した上で2035年度を見据えた場合、どの程度まで下げる予定なのでしょうか?
また、この3年間のキャッシュアロケーションを見ると、負債を活用して自己資本比率を下げるという判断を取らなかった背景についてもお聞かせください。
山野:最適な自己資本について、今回の中期経営計画期間においては、これまで積み上がってきた自己資本を「止血」することが重要だと考えています。
今後、最適な自己資本比率をどれくらいに持っていくべきかについては一概には言えませんが、自己資本を減らそうとする場合、創業家との調整などさまざまな課題が生じます。ただ会社としては現在も止血をしており、また創業家とも継続的にコミュニケーションを取っている状況です。
最適な自己資本比率については今後も継続的に検討を進めていきますが、この場で具体的なパーセンテージについてはお答えを控えます。ただ現中期経営計画においては「止血」を行い、それ以上の資本流出を防ぎます。その次のステップとして、必要に応じて自己資本を減らす議論を進めることになります。
この中期経営計画期間中は「止血」を重点的に行い、その後に減らすことを考えていくという方向で進めていきたいと思います。
キャッシュアロケーションの中での負債についてのご質問については、負債についても当然ながら検討しています。必要があれば借入を含め、特に大規模なM&Aがあった場合には積極的に対応する予定です。臨機応変に対応しながら取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:利益率低下の要因と中期経営計画の戦略について
質問者:終わった期の第3四半期、第4四半期についてうかがいます。第2四半期以降に利益率が低下し減益となった要因について、あらためてお聞かせください。
それを踏まえて、この中期経営計画期間中の利益率の推移をどのようにイメージされているのか、またどのように回復させていくのかを教えていただけますでしょうか?
また中期経営計画について、第1フェーズは土台固めとおっしゃっていましたが、前期まで人材確保や基盤構築に注力されていたと思います。
その上で足りていなかった点は何か、この3年間でどのような取り組みを行い、どのような状態になれば第2フェーズに移行できるとお考えなのかをお聞かせください。
山野:これまでもさまざまな取り組みを行ってきましたが、発端は「2024年問題」があります。この2024年問題によりそれまでは優遇されていた運送業界で上限の残業時間が見直されたり、1日の拘束時間が短縮されるということがありました。
これについては社内においても1年間の試行錯誤を経て乗り切り、2年目からは新たな制約の枠内で運用を軌道に乗せることができると考えていました。
過去にもこのような枠内で工面していた実績があり、制約が厳しくなっても適応できるはずだと見込んでいました。しかしながら実際にはそう簡単にはいかないということがありました。
ただし、市場の変化に対応していくため、引越事業の売上が鈍化した場合にはグループの売上を加算していこう、現在取り組んでいる第2層領域である引越付帯事業の売上を伸ばしていこうということになりました。
したがって、会社としては引越事業を堅実に成長させつつ、新たに引越付帯事業を拡大させる戦略を採用し、グループ戦略としてその方針をお伝えしてきました。
そのグループ戦略が、前期から徐々に崩れ始めています。具体的には、従業員にもグループ戦略を意識させるために、インセンティブや給与体系を変更し、グループの売上を上げることによりポイントや評価が上がるような制度を導入していました。
導入当初は効果が生まれ、従業員の意識付けにも成功しましたが、次第に「きつい引越業務を行うよりも、グループの商品を販売したほうが給与が上がる」という風潮が広がり、引越業務の売上を重視しなくなってきたという状況があります。この傾向が、前期から特に顕著になり始めています。
これにより、最も利益率の高い引越業務の売上が鈍化し、利益率の低い商品販売、引越付帯作業の売上の割合が増加した結果、第2四半期から第4四半期にかけて利益が大きく苦戦する状態になりました。
そこで現在、この傾向を是正することを第一に取り組みを進めています。そのために第1層領域である引越業務の売上を再び強化し、利益を改善していこうという方針です。
ただし、インセンティブプランや給与制度により物販を重視してきた背景もあり、いきなり引越業務を優先させる変更を行うと、従業員の士気が低下し、離職につながる懸念があります。
そこで進行期も含めて事業基盤の再構築と位置づけ、慎重に「土台固め」を進める方針です。この基盤を1年間で整えた上で、2年目、3年目から加速させる戦略を立てています。
利益改善においては、再び引越業務を強化し、その売上を伸ばすことで達成したいと考えています。
人材確保に関しては、実際にこれまでも採用を強化しており、今はアルバイトもかなり増えています。次の段階としてはドライバーなどの正社員を増やしていくということで、その取り組みを着実に進めていきたいと考えています。
また、従業員の意識が変わったことを踏まえ、もう一度引越事業に注力するために、この中期経営計画を活用して従業員への意識浸透を図りたいと考えています。
質問者:インセンティブについて、制度の見直しなどはすでに進めているのでしょうか?
山野:制度の見直しや給与体制の見直しを含めて、特に新入社員の給料変更など、さまざまな改革を進めています。当社では社員会というものがあり、従業員の代表と協議を重ねながら給与体系を変更している最中です。
こうした現状を踏まえつつ、中期経営計画を説明し、従業員に理解いただいた上で給与体系を変更していきたいと考えています。
また土台作りや創業者の思いを原点回帰として掲げて「サカイ引越センターは引越業者であり、引越をきちんと手掛けていく」というところを再度従業員に訴えかけていきたいと思います。このように、適宜改善を実施していく考えです。
質疑応答:投資方針や投資判断基準について

質問者:資本効率についてうかがいます。これまで投資が進まず現預金が積み上がってきた経緯もあったかと思いますが、今回成長投資として115億円を設定されています。
こちらについて、投資方針や投資判断基準の見直しが行われているのかどうかをお聞かせください。
山野:投資判断の基準については、さまざまな投資を進めていきたいと考えています。現在検討中の投資についても継続して進行させていますが、最終的には資本政策委員会と戦略投資委員会で決定します。
これらの委員会には役員と社外取締役が参加しており、ここで慎重に議論を経て進めることになります。
ただし、いきなり議論を始めると物事が進みにくいということもあり、SHIFT社の提言する企業価値向上タスクフォース「TEVA」を基にMプロジェクトというプロジェクトチームを運営し、IRチームとも連携を取りながらワーキンググループを動かしていきます。このような体制で、投資の迅速な実行を目指しています。
このプロジェクトを早急に推進していきたいと考えています。
多田:投資金額の決定方法についてのご質問について、まず今回は自己資本を積み上げないようにするという方針のもと、株主還元の金額を決定しています。
その上で投資に関しては、更新投資について従前から必要な金額を把握しているため、その金額を基に検討しています。
前期は東海サービスセンター、今期はファミリー引越センターをM&Aしました。それ以外にも検討中の案件やシステム投資など、ある程度の大枠を検討した上で必要な金額を見積もっています。
先ほど借入の話もありましたが、もし想定を超える案件が発生すれば、負債の活用も含めて検討していきます。それについては「M(まごころ) Project」と資本政策委員会や戦略投資委員会で進めていく予定です。
山野:第3四半期、第4四半期の時に予算を修正せず、このまま進めてきた背景についてご説明します。第3四半期が終わった時点では、引越業界において第4四半期が最も大きな山場となるため、十分挽回可能と判断していました。
しかしながら最も致命的だったのが2月でした。3月については昨年と同じ轍を踏まないようにするため、12月頃から3月の引越受注を少しずつ進めていました。
2月についてはそこまで受注しておらず、例年通りの2月分を見込んでいました。しかしながら「引越難民」に関する報道の影響もあり、受注依頼が早期に止まる傾向が12月頃から出ていました。その結果、2月は失速し予算を達成できませんでした。
また利益面においても、外注費や売上原価の価格高騰が進んだことで、売上の伸びに比べて利益が拡大しませんでした。さらに、先ほどお話ししたとおり引越事業よりも利益率の低い物販売上が増え、売上構成が変化したことが予算達成を困難にする要因となりました。
今の状況として、引越がかなり早まっています。例えば5月の引越であれば、5月にはもう受注がないという状況になっています。引越難民の話が出てから影響を受けているのかもしれませんが、かなり早まっているので、対応戦略を是正しながら、適切に引越の受注を確保して進めていきたいと思います。
質疑応答:原油価格高騰と価格転嫁について
質問者:現時点では原油価格は抑えられていますが、仮に政府の措置がなくなり価格が上昇した場合、その費用に占める感応度について、なにかご示唆があれば教えてください。
またガソリン代の上昇分を価格に転嫁できるのかどうか教えてください。
多田:原油価格の高騰についてお答えします。もともと原油価格が高騰する以前に、ガソリン減税がありました。その影響で私たちはおおよそ1億3,000万円の利益を得ました。しかしながら足元で続く原油高により、実際にはそのプラスの影響がほぼゼロとなっています。したがって前年に対してトントンの状況となっています。
今後の見通しについては、実際のところどこまで価格が上昇するかを把握するのは難しいですが、私たちの燃料費は売上高に占める割合が約2パーセントです。そのため、想定外の大幅な価格上昇がない限り、業績に大きな影響を及ぼすことはないと考えています。
山野:価格転嫁については、ここ数年で適宜進めてきました。当然ながら、お客さまのご理解を得ながら進めることが重要であり、法人のお客さまに関してはサーチャージを含め、国土交通省から「検討するように」という提案もあるため、そのようなものも組み入れていきたいと考えています。
一方で、一般個人のお客さまについては同業他社も存在し、安価な引越業者を選ぶ場合もあります。そのため、お客さまの状況を見極めながら、適切に価格転嫁を進めていきたいと考えています。
値上げに関しては、2023年と2024年において実施しています。
質疑応答:引越業界の今後について
質問者:引越業界全体における御社のシェアについてうかがいたいと思います。一般的には引越件数が減少し、単価が上昇していることで、市場規模は横ばいか緩やかな上昇傾向にあると認識しています。
その中で御社の市場シェアは約4割、アート引越センターが約20パーセントから30パーセント、日本通運が10パーセント程度となっており、業界全体で寡占が進んでいるのではないかと思います。
その次に位置する中小業者の今後も含めて、業界の動向や寡占化について見解をうかがえますでしょうか?
山野:現状では上位5社で市場の約6割を占めています。その中でサカイ引越センターは、約5,000億円の市場の中で約1,000億円と、約2割のシェアを有しています。我々は他社の市場も取り込みながら約3割のシェアを目標としており、これを1つのマイルストーンと位置づけて取り組んでいます。
業界の今後については、大手は引越専業業者2社に集約されていくのではないかと考えています。最も厳しい状況に置かれるのは中堅規模の業者だと思います。数名で営業されている小規模の会社は、地域に特化して現金で運営を続けながら存続していくと見ています。
業界全体では裾野は広いものの、中堅規模が減少していく中で、大手企業では当社とアート引越センターが市場を取っていく構図になるのではないかと思っています。
質問者:中堅・中小業者が厳しくなる要因は、やはり人手不足でしょうか?
山野:おっしゃるとおりです。今年の春はサカイ引越センターで新入社員を約450名採用、その中でも高校卒業の方々にも250名に入社していただいています。これはこれまでのブランド力だけでなく、人事部と大学との関係性もあってこの人数を採用できています。
「引越業界は30歳ぐらいで辞めないといけないのではないか」というイメージを持たれることが多いですが、サカイ引越センターグループに入社していただくと、「グループで生涯の雇用を担保します」ということを、先生方や保護者のみなさまにもお話しています。
例えば引越の仕事に嫌気がさしても、グループ内の電気工事会社や一般物流の会社で働くこともできるし、リユース業務を希望する場合はリユースに携わることもできるわけです。このように「サカイ引越センターグループの中で全部面倒を見ます」というご説明をして入社していただいています。
しかしながら、一般の引越会社が「当社に来てほしい」と言っても、おそらく難しいのではないかと思います。先日ファミリー引越センターを買収した際に社長とお話ししたところ、グループ採用を提案したら「ぜひお願いします」とおっしゃっていました。
「高卒は絶対に採用が難しい。大卒もエージェントに費用を払いながら採用している」という話をされていました。このように、特に中堅・中小規模の引越会社では、人を採用できないということで、なかなか仕事を増やせないという状況だと考えています。
質疑応答:引越外事業の範囲と方向性について
質問者:長期ビジョンと中期経営計画の中で説明されている第3層領域の引越外事業についてうかがいます。本日のご説明の中では、仮に引越以外の事業であっても、最終的には引越のお客さまにつなげたいというお話がありました。
一方で、既存の事業に関しては、それが引越と直接結びつくわけではないという印象を受けました。例えば、電気工事やリユース事業、メンテナンスといった周辺事業について、どの範囲までの投資をお考えなのか、もう少し具体的に教えていただけますか?
山野:ビルメンテナンス事業がその一例となります。ビルメンテナンス事業自体は、引越事業との関連も若干あるものの、それよりも、例えば清掃業務で言えばBtoBの清掃のプロであるSDホールディングスが、十分に対応可能です。
また什器購入・手配を含めた業務に関しては新世紀サービスが担っています。そしてエアコンの調整やLANの配線などを担っているのがエレコンや東海サービスセンターです。
持分法適用会社であるキャンディルは、家屋の修理や原状復帰を手掛けている会社です。退去時の修理を含め、原状復帰業務をキャンディルに任せています。
その最後に、サカイ引越センターが退去時や入居時の引越作業を担当するかたちを想定しています。
このように、ビルメンテナンスを行うことで最終的に引越業務につながってくるという流れです。そのためにも、グループ全体のシナジーを生み出していきたいと考えています。このようなイメージで第3層領域も入り口になると思っています。
またクリーンサービスについても、ご縁があって現在参入しています。今後はこの領域を着実に伸ばしていきます。ただし、引越業務に直接関係のない事業には関与しない方針です。「引越」を基軸とし、最終的にメリットのある領域を見極め、M&A戦略を進めていきます。
