■TOKAIホールディングス<3167>の今後の見通し
1. 「中期経営計画2028」
(1) 中期経営計画の概要
同社は2027年3月期からスタートする3ヶ年の中期経営計画を発表した。経営基盤の強化による安定的な事業利益拡大と、株主還元強化を両輪として資本効率を高めながら、企業価値の最大化を目指す。事業利益の拡大に向けては、事業ポートフォリオ経営の加速による利益拡大と資産効率を意識した事業運営を推進する。また、株主還元については連結配当性向の水準を引き上げるとともに、機動的な自己株式取得を実施する。
2029年3月期の定量目標として、売上高2,740億円、営業利益235億円、経常利益235億円、親会社株主に帰属する当期純利益135億円、継続取引顧客件数360万件を掲げた。年平均成長率で売上高は約4%、営業利益は約8%となる。前中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)の年平均成長率は売上高で約5%、営業利益で約6%となっており、引き続き安定成長を目指す。なお、継続取引顧客件数は今後の戦略的M&Aの効果を織り込んでいない目標値となっている(LPガス事業における商圏買取は含む)。
経営指標としては、ROEで13.0%、ROICで9.7%、自己資本比率で41.0%、従業員1人当たり営業利益で2026年3月期比15%以上の増加を目標としている。ROE、ROICについてはそれぞれ前期実績と比較して、2.0ポイント、0.8ポイントの上昇を見込んでいる。一方、自己資本比率については5.4ポイント低下する見込みであるが、財務の健全性を維持したうえで、成長投資資金として有利子負債約100億円の積み増しを想定しているためだ。市場環境としては、地政学リスクの高まりや物価上昇など景気の先行き不透明感が強まっているものの、後述する“Triple Accel”戦略を推進することで弊社では達成可能と見ている。
(2) 事業成長戦略
同社は“Triple Accel”戦略の3軸で事業成長を加速度的に推進していく方針だ。Area、Account、ARPUの3つの頭文字を取ったもので、エリアの拡大、顧客数・契約数・対応業種の拡大、サービスメニューの充実やクロスセルによる1顧客当たり売上単価の上昇に取り組むことで、顧客基盤並びに事業規模のさらなる拡大を図る。
また、事業ポートフォリオのなかで資本収益性や成長余地の大きいエネルギー事業、法人向け情報通信事業、CATV事業の3つの事業を注力事業と位置づけ、戦略的M&A投資枠(エネルギー事業で約150億円、情報通信・CATV事業で約50億円)を設けて、積極的な事業投資を進める計画である。一方、コンシューマー向け情報通信事業や建築設備不動産事業、アクア事業については、効率化を推進し現在の競争力を持続するための投資枠を配分する予定である。
a) エネルギー事業
エネルギー事業の2029年3月期営業利益は、2026年3月期比14%増となる121億円を見込む。トップクラスのシェアを持つ静岡での成功モデルを生かし、新規エリアへの進出と積極的なM&Aで顧客基盤を拡大し、また、機器販売や追加サービスの積み上げでARPUの向上を図り、収益を拡大していく戦略だ。
LPガス業界は、人口減少や省エネ機器の普及により需要量が年率1%強のペースで減少が続いているが、一方で、中小零細事業者がまだ多く残っておりシェア拡大による成長余地の大きい市場とも言える。実際、直近10年間の事業者数は年率3%のペースで減少しており、M&Aや商圏買取によって同社を含む大手企業は顧客件数を積み上げ、事業規模を拡大している。2024年7月に施行された「LPガス商慣行是正に向けた改正省令」によって、既存集合住宅のリプレイスが事実上難しくなったことで、中小事業者の経営環境はより厳しくなってきており、今後数年間は業界再編の動きが加速すると見られ、同社にとってはシェア拡大の好機になると弊社では見ている。
同社は今後3年間で約150億円のM&A投資枠を設けており、グループシナジーが見込める案件を中心に、積極的に検討する。150億円分のM&Aを実施した場合、年間の粗利益額は20~30億円の上乗せが想定されるが、中期経営計画期間内はのれん償却費等で相殺される見込みで営業利益への影響は軽微となる見通しだ。なお、新規エリアの進出については、引き続き九州や中・四国など西日本エリアを中心に進める。
b) 情報通信(法人向け)事業
情報通信(法人向け)事業の2029年3月期営業利益は、2026年3月期比40%増の68億円と事業別では伸び率、増益額ともに最も高い成長が見込まれる事業となる。年率10%超の成長ペースが続くクラウドサービス市場において、AI・クラウドの利用増に対する迅速な対応と顧客内製化を支援していくほか、新技術への迅速な対応により新規顧客の獲得並びに契約件数の積み上げを推進する。また、新規エリアとして海外市場への展開を進めている。2024年にインドネシアの現地企業と合弁で設立した子会社で展開しているクラウドサービス関連事業が順調に伸びており、今後もさらなる成長を目指す。ARPUの向上については、生成AI等の新技術を活用したサービスなどを追加することで推進する。
同社では自社で総延長約1.2万kmの光ファイバー網を構築していることや、AWSプレミアティア(最上位)パートナーに認定されており、クラウド導入支援において豊富な実績やノウハウを持つこと、エンジニア700名とビジネスパートナーをあわせて最大2,000名の体制を構築しており、様々な需要に対応可能であることなどを強みとしており、今後も人的リソース拡大のためのM&Aなども検討しながら、事業拡大を図る。
c) CATV事業
CATV事業の2029年3月期営業利益は、2026年3月期比22%増の83億円を見込んでいる。同社グループのサービスエリアにおける世帯数の伸びは鈍化しており、放送サービスについては伸びが見込みにくいなか、クロスセル(通信サービス契約との同時加入)を推進することでARPUを引き上げ、安定成長を目指す。クロスセル率は2026年3月末で46.5%とここ数年は毎年2ポイント前後のペースで上昇を続けており、今後も年間1~2ポイントの上昇は可能と見ている。クロスセル率が上昇すると、顧客獲得・維持コスト低減により収益性向上にも寄与する見通しである。また、エリアの拡大についてはM&Aを実行することで実現を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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