イビデンが選ばれる理由その2「異次元の量産対応力」
AI時代に突入し、イビデンが再び脚光を浴びている理由は、彼らが「AI GPU向け基板の量産」という極めて高い壁を乗り越えることができたからです。
AI用のGPU基板は、これまでのPC向けとは比較にならないほど難易度が高いものです。
現在の技術トレンドである「チップレット」のように、一つの大きな基板の上に多種多様なチップを大量に乗せるため、基板の面積は巨大化しています。
また、AIの高速演算のために配線は極めて微細で、しかも「東京の地下鉄」のように複雑な立体構造の多層配線を、互いにぶつからないように形成しなければなりません。
層の数も激増しており、製造に必要な工程数(工数)も膨大なものとなっています。
<競合を出し抜く「迅速な意思決定」と柔軟な生産体制>
2022年から23年にかけてAI需要が突如として爆発した際、イビデンが取った行動は非常に興味深いものでした。
当時はシリコンサイクルの影響で、PC向けのCPUやメモリの需要が一段落し、Intel向けの生産ラインに余裕が出ていた時期でした。
イビデンは、顧客であるIntelの了承を取りつつ、その既存の生産ラインを迅速にAI GPU向けへと修正し、急増するNVIDIA向けの需要に応えることに成功しました。
こうした顧客調整の難しさや、量産ラインを立ち上げるための意思決定のスピード、そして高い歩留まりを実現する技術力があったからこそ、現在の「AI向けでの圧倒的なポジション」を確立できたのです。
現在では、有価証券報告書の主要な取引先としてNVIDIAの名前が登場するほど、その繋がりは強固なものとなっています。
<先端AIサーバー向け市場での圧倒的な独占状態>
この高度な技術と量産力の結実として、足元では驚くべき数字が出ています。
報道によれば、先端AIサーバー向けのICパッケージ基板において、イビデンの世界シェアは8割から9割に達しているとされています。
資料によっては5割から6割程度とされることもありますが、化学業界の精緻なデータを見れば、この領域におけるイビデンの存在感がいかに突出しているかが分かります。
同じように基板を手がける新光電気工業などの他社と比較しても、技術力と量産対応の面で一歩抜きん出ているのが現状です。
<顧客企業が「前払い金」を払ってまで投資を懇願する異常事態>
イビデンの重要性を象徴する最も象徴的なエピソードが、設備投資の資金調達方法です。
同社は2026年から2028年の3年間で、基板事業に対して5000億円規模という巨額の設備投資を計画しています。
驚くべきは、その資金の一部が、顧客企業からの「前払い金」によって賄われているという事実です。
本来、設備投資はメーカー側のリスクで行うものですが、Intelなどの顧客が「供給ボトルネックを発生させたくない。だからどうか優先的に作ってほしい」と願い、自らお金を出すという異例の事態が起きています。
これは、イビデンが業界内で「供給を左右する鍵」を握っていると、顧客が公式に認めたも同然の出来事であり、これまでの取引関係のパワーバランスが逆転したかのような印象さえ与えます。
これからの伸び代
イビデンの強みは、現在のNVIDIAやIntel向けだけに留まりません。
これからのAI市場は、学習用の万能GPUから、特定の目的に特化した「専用AIチップ(ASIC)」へと広がっていきます。
AIには、モデルを賢くする「学習」と、実際に回答を出す「推論」の2段階がありますが、今後は一般ユーザーや企業が利用する「推論」の用途が激増します。
これは、言わば「受験勉強(学習)」から「テスト本番(推論)」への移行です。
GoogleのTPUやAmazon、Microsoft、Metaが自前で作り始めている個別最適化されたチップに対しても、イビデンはそのニーズに合わせたパッケージ基板を提供するパートナーとしての地位を固めています。
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