■エヌ・シー・エヌ<7057>の業績動向
2. 分野別売上高
(1) 住宅分野
売上高は4,754百万円(前期比0.5%増)となった。KPIである構造計算出荷数は932棟(同5.8%減)、構造計算出荷数の前提となるSE構法出荷数は848棟(同6.0%減)といずれも減少した。しかし、SE構法については1棟当たりの平均売上金額は前期比6.9%増加した。要因の1つとして、SE構法のブランド住宅「重量木骨の家」の販売推進が挙げられ、同ブランドの平均販売金額が同15.6%増の5,630万円、平均平米数も同2.4%増の139.2平方メートルに上昇した結果、SE構法平均売上金額を押し上げた。一方、2025年4月の法改正による建築確認審査期間の7日から35日への長期化について、同社は出荷ペースの遅延を見通し業績予想を立てた。しかし、想定以上の停滞・長期化を要因に、構造計算は完了したものの出荷できない状況から、売上未計上が増加した。この背景に鑑みると、構造計算の受注そのものは堅調に推移していることを示している。なお、未出荷分は受注ストックとなり、2026年3月期末の受注ストックは同108件増となるため、2027年3月期の確実な売上計上が期待される。また同社が全国にネットワーク展開する登録施工店数は2026年3月期に新たに38社加入、廃業等は22社となり、期末時点で同16社増の637社となった。SE構法の利点が浸透し、取扱い工務店等の数は着実に増加している。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
売上高は3,077百万円(前期比4.5%増)となった。KPIである構造計算出荷数は261棟(同9.2%増)となった。内訳は、SE構法183棟(同22.8%増)に対し、木構造デザインによるSE構法以外は78棟(同13.3%減)とSE構法の割合が高まった。SE構法については2026年3月期に設立した「大規模木造建築ネットワーク」や、「SE構法Ver.3」のリリースが、受注件数の増加をけん引した。SE構法以外の減少は、好調だった前期からの反動減が要因である。
(3) 環境設計分野
売上高は403百万円(前期比39.0%増)と、大きく伸長した。新築住宅(戸建・集合住宅)で省エネ基準への適合が義務化されたことに伴い、戸建住宅の省エネ計算数が1,633棟(同12.3%増)に増加した。この流れを受け、集合住宅・非住宅の省エネ計算数も2,247棟(同53.4%増)と大きく伸びた。2010年から開始した省エネ計算サービスの成果が実を結び始めている。加えて、中古マンションリノベーション向けの出荷数も435棟(同44.5%増)と大幅に伸長した。背景には、新築マンションの高値推移が継続するなかでの、マンションリノベーションの省エネ対応への注力が挙げられる。具体的には、(株)コスモスイニシアと提携し、2025年度再販物件における「住宅省エネルギー性能証明書(ZEH※水準・省エネ基準)」の取得を推進している。ほかにも、2025年に三菱地所レジデンス(株)と提携し業界に先駆けて取り組んだ「中古マンションのリノベーションによる省エネ化」に続き、大手マンション再販事業者と同領域での提携を拡大する方針である。同分野における業績への寄与が今後も期待される。
※ ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語で、家庭で1年間に消費する一次エネルギー(化石燃料やウラン太陽光等の自然界に存在するエネルギー)の収支が、正味ゼロまたはマイナスになる住宅を指す。
(4) DX・その他の分野
売上高は179百万円(前期比13.0%増)と堅調に推移した。木造建築向けBIMソリューションを開発・展開する子会社KINO BIMでは、2021年10月から提供を開始した高画質建築空間シミュレーションサービス「MAKE ViZ」の受注が好調に推移し、増収に貢献した。「MAKE ViZ」は、2次元の設計図面から精緻な3Dパース(視覚的な表現手法)が作成可能である。大手のみならず地方のハウスメーカーでも、SE構法による高級注文住宅向けのプレゼンテーション資料で使用するケースが増加しており、SE構法の受注増に伴い「MAKE ViZ」の受注も増加している。加えて、設計書類の電子化が今後さらに進む見込みであり、BIM技術の活用用途の拡がりが期待される。
3. トピックス
(1) コスモスイニシアの「ZEH水準・省エネ基準」が取得率37%達成
同社は、コスモスイニシアが展開するリノベーションマンション事業「INITIA&Renovation」において、省エネルギー設計のパートナーとして協業している。その成果として、同事業の2025年度着工物件における「住宅省エネルギー性能証明書(ZEH水準・省エネ基準)」の取得率が、当初目標の約37%を達成したことを2026年4月に発表した。これを背景に、同社は、既存マンションのリノベーションにおけるZEH水準化・省エネ化推進に向け、コスモスイニシア、YKK AP(株)、u.company(株)との4社連携体制に参画した。同社は、省エネ設計のノウハウを生かし、高い省エネ性能の実現が難しい、1995年竣工や2006年竣工といった築年数の長い物件においても、「省エネ基準」や「ZEH水準」の取得をサポートした。この連携体制の主幹となるコスモスイニシアでは、2026年度の「ZEH水準・省エネ水準」取得率の目標を60%に引き上げる方針を掲げており、同社もその目標達成に向けた協力体制を強化する。既存マンションリノベーションでの高い省エネ性能実現による、業績寄与が期待される。
(2) 「中大規模木造ビルディングサポートセンター」の設置
2027年3月期から「中大規模木造ビルディングサポートセンター」と称する相談窓口を開設し、木造建築に関わる大規模プロジェクトをトータルサポートする。この窓口ではSE構法はもちろん、環境設計やKINO BIMでの意匠設計に加え、従来の在来工法、CLT工法等、あらゆる木造建築に対応する。さらに同社の経験とネットワークを活用することで材料の調達や建設会社の探索等、木造建築に係る悩みや課題に対し解決策を提供する。これにより、新規取引先との接点を増やし、非住宅大規模木造建築に関する構造設計依頼数の増加につなげる方針である。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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