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株価ピークから4割下落「レゾナック」は買いか?AI半導体で重宝される3つの強みと投資判断のポイント=元村浩之

<高成長が期待される3つの物理的な理由>

レゾナックの半導体材料が将来どの程度成長するかを、正確に定量化することは簡単ではありません。
ただし、AI半導体の構造変化を考えると、材料の使用量が増えると考えられる物理的な理由があります。

第一に、AI半導体の高性能化に伴ってパッケージ基板が大型化しています。
搭載するチップや機能が増え、基板の面積が大きくなれば、パッケージ基板用材料の使用量も増えます。

第二に、高性能な半導体ほど発熱量が大きくなります。
発生した熱を外へ逃がすため、より広い面積で、より高性能な放熱材料が必要になります。

第三に、AIの学習や推論ではHBM(広帯域メモリー)の重要性が高まっています。
HBMはメモリーを縦方向に積み重ねて性能を高めるため、それぞれの層の間に絶縁材料などが必要です。
積層数や生産量が増えれば、関連材料の需要拡大も期待できます。

このように、単に「AI半導体市場が伸びるから材料も伸びる」と考えるだけではなく、半導体の構造がどのように変わり、そのどこにレゾナックの材料が使われるかを確認することが重要です。

半導体材料は伸びているのに、全社業績が目立たない理由

世界シェアの高い製品を多数持っているのであれば、レゾナックの売上高や利益は大きく伸びていてもよさそうです。
しかし、全社業績の推移だけを見ると、成長がまだ明確に表れていないように見えます。

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出典:マネックス証券

これには理由があります。

経営統合後のレゾナックは、汎用化学品などの不採算・低収益事業を売却し、固定資産の整理や減損処理も進めてきました。
成長分野が伸びる一方で、事業売却によって売上高が減り、特別損失も発生したため、全社の数字では成長が見えにくかったのです。

一方、半導体・電子材料分野の利益は2022年12月期の約440億円から直近では約1,080億円へと、2倍以上に増えていました。
全社ではケミカル事業の赤字などが重荷となるものの、中心となる半導体・電子材料事業は成長していることが分かります。

収益性も高く、半導体・電子材料事業のEBITDAマージンは約30%、コア営業利益率は約20%です。

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出典:レゾナック 決算説明資料

つまり、レゾナックは「優良事業がすでに高い利益を生んでいる一方、低収益事業や事業再編の費用が全社業績を覆い隠している」状態だと考えられます。

今後、不採算事業の整理が進み、減損や事業売却に伴う一時的な損失が減れば、半導体材料事業の成長が全社業績へ表れやすくなる可能性があります。

ただし、世界シェア1位の製品であっても、市場そのものが小さければ業績への貢献は限られます。
AI半導体向け後工程材料は、まさに市場が立ち上がりつつある段階です。
将来性を見るうえでは、各製品のシェアだけでなく、市場規模と需要の伸びを継続的に確認する必要があります。

強み2:大規模な統合を進める「経営変革力」

レゾナックの第2の強みは、経営を変える力です。

「小が大をのむ」大型買収では、買収契約を結ぶこと以上に、統合後の企業運営が難しくなります。
規模も歴史も違う会社同士では、企業文化、評価制度、意思決定の方法、仕事の進め方などに大きな差があるからです。

どれほど事業上の相乗効果が期待できても、組織が分断されたままでは技術や人材を十分に生かせません。

レゾナックは、この難しい統合を比較的うまく進めているように見えます。
その客観的な手掛かりとして動画で取り上げたのが、社員口コミサイト「OpenWork」の評価です。
レゾナックは数ある企業の上位2%に入る評価を得ていました。
さらに、退職者を含む総合評価だけでなく、現職社員からの評価も高いことが示されていました。
口コミはあくまで個々の社員の主観であり、これだけで企業価値を判断することはできませんが、それでも2023年以降のレゾナックに対する口コミからは、経営改革を進めながらも、現場の意見を尊重しようとする文化がうかがえます。

<「昭和型」の組織からフラットな組織へ>

旧昭和電工は、その歴史の長さもあって、かつては典型的な日本の伝統的大企業、いわゆる「JTC(Japanese Traditional Company)」に近い文化を持っていたといわれます。

たとえば、1つの稟議を通すために何人もの承認が必要になる、役職名で相手を呼ぶ、階層的な組織構造が強く、部門や役職を越えた意思疎通が難しい、といった特徴です。

レゾナックは、評価制度を変える、社員同士を「さん」付けで呼ぶ、服装をカジュアルにするなど、一つひとつは小さく見える改革を重ねてきました。

目的は、単に職場をくだけた雰囲気にすることではありません。
役職や旧所属会社の壁を越え、社員がよりフラットに意見を交換できる組織をつくることです。

将来必要となる材料を開発するためには、営業力だけでは不十分です。
10年、20年先の変化を読み、さまざまな立場の人が想像力やアイデアを出し合う必要があります。
レゾナックが進める組織改革は、研究開発型企業として人材の力を引き出すための変革だと考えられます。

<現場を尊重しながら、重要な意思決定は速く>

現場の意見を尊重するだけでは、改革が遅くなる可能性もあります。
特に不採算事業の売却には痛みが伴い、全員の合意を待っていては判断が遅れかねません。

この点でレゾナックは、現場を生かす経営と、トップによる迅速な意思決定を使い分けています。

高橋秀仁社長の元、すでに17前後の事業売却を進めてきました。
会社のロードマップや進むべき方向に関わる重要事項は、最終的に社長自らが判断し、スピード感を持って実行しているということです。

汎用化学品など収益性の低い事業を早期に切り離し、将来の収益源となる分野へ研究開発費を振り向けることで、事業ポートフォリオを変えようとしています。

社員が意見を出しやすい組織をつくりながら、撤退や資源配分では経営トップが決断する。
このバランスが、レゾナックの変革力を支えていると考えられます。

強み3:業界を巻き込む「共創リーダーシップ」

レゾナックの第3の強みが、他社と「共に創る」共創リーダーシップです。

AI半導体メーカーの要求は、技術的に厳しいだけでなく、変化のスピードも非常に速くなっています。
顧客から具体的な要求を突然受けてから研究を始めたのでは、開発競争に間に合わない可能性があります。

そこでレゾナックは、半導体メーカーや材料・装置メーカーが早い段階から相談し、共同で技術開発や実証実験を進められる仕組みをつくっています。
その中心にあるのが、半導体後工程のコンソーシアムです。

コンソーシアムとは、共通の目的を持つ企業などが集まった企業連合を意味します。

Next: なぜ半導体の「後工程」が重要なのか?レゾナックが選ばれる理由

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