株価はなぜ急上昇したのか
レゾナックの株価は年初から急上昇していました。
前年4月の安値と比べると一時は10倍近く、その後の水準でも約6倍に達するほどの大きな上昇でした。

レゾナック・ホールディングス<4004> 日足(SBI証券提供)
背景として考えられるのは、次のような変化です。
- AI半導体の性能向上には後工程が重要だという認識が広がった
- レゾナックが後工程材料の総合力を持つ企業として評価され始めた
- 不採算事業の整理と半導体・電子材料への集中が進んだ
- コンソーシアムの活動など、統合後の成果が見え始めた
- ハイパースケーラー各社が独自のAI半導体を開発する流れが強まった
特に、MicrosoftやGoogleなどが自社の用途に適した半導体を開発するようになれば、チップの種類や要求性能はさらに多様化します。
複雑な要求を一社だけで解決できない場合、レゾナックを中心とする企業連合が相談先として頼られる場面が増える可能性があります。
一方で、足元の業績が株価と同じ勢いで急成長したわけではありません。
したがって、株価上昇には将来への期待が相当程度織り込まれていると考えるべきでしょう。
また、レゾナックは「この一製品が伸びたから株価が上がった」と説明しやすい企業ではありません。
多数の材料、顧客への提案力、コンソーシアムにおける立場などを合わせた「総合力」が評価されている可能性があります。
しかし、総合力に対する評価が短期間で急激に高まった理由は、業績だけでは説明し切れない部分もあります。
株価の上昇要因を一つに絞らず、市場の期待が実際の受注や利益へ結び付くかを慎重に見ていく必要があります。
<レゾナックを分析する際に確認したいポイント>
ここまでの分析から、今後レゾナックを見るうえでは、次の点が重要になります。
<1.半導体・電子材料事業の成長>
全社売上高だけでなく、半導体・電子材料事業の売上高、利益、利益率を確認する必要があります。
AI半導体向け需要の拡大が、実際に事業数字へどの程度反映されるかが重要です。
<2.不採算・低収益事業の整理>
事業売却や固定資産の整理が一巡すれば、特別損失が減り、収益構造が分かりやすくなる可能性があります。
半導体材料の成長が全社利益へ表れやすくなるかに注目です。
<3.研究開発投資の成果>
低収益事業から成長事業へ経営資源を移し、新製品や採用案件を生み出せるかが問われます。
研究開発費を増やすだけでなく、それが量産や利益につながっているかを確認したいところです。
<4.JOINT2・JOINT3・US-JOINTの具体的な成果>
コンソーシアムの参加企業数や活動内容だけでなく、顧客との共同開発、採用、量産化など、具体的な成果を見る必要があります。
<5.競合企業との技術競争>
一社に特化した競合と、複数企業による共創のどちらが有利になるかは、解決すべき課題によって変わります。
顧客が最終的にどの材料と製造技術を選ぶかが重要です。
<6.株価に織り込まれた期待>
株価が大幅に上昇した局面では、優れた企業であることと、割安な株式であることを分けて考えなければなりません。
将来の利益成長がどこまで株価に織り込まれているかを確認する必要があります。
まとめ:レゾナックは「大化けの手前」にいるのか
レゾナックの魅力は、単一のヒット製品に依存するのではなく、AI半導体の後工程を支える幅広い材料と提案力を持っていることです。
旧昭和電工の川上側の素材技術と、旧日立化成の川下側の応用技術を組み合わせ、多数の世界トップクラス製品を育ててきました。
さらに、社員の力を引き出す組織改革、不採算事業を整理するトップの決断力、業界全体を巻き込むコンソーシアム運営が、その製品力を支えています。
AI半導体の大型化、発熱量の増加、HBMの積層化、先端パッケージングの進展を考えれば、同社の材料使用量が増えていく方向性には一定の説得力があります。
一方で、現時点では半導体材料事業の成長が全社業績へ完全に表れているわけではありません。
共創の取り組みが、どれほどの受注・量産・利益につながるかも、まだ継続的な確認が必要です。
株価はすでに大きく上昇しており、将来への期待が先行している可能性にも注意しなければなりません。
レゾナックは、優れた材料を持つだけでなく、企業統合と業界連携によって「総合力」をつくろうとしている企業です。
その総合力が本格的な利益成長に結び付けば、大きく変わる可能性があります。
ただし、その可能性と投資判断は別です。
今後も事業別の利益、不採算事業の整理、次世代技術の採用実績、株価水準を一つずつ確認しながら、企業価値を見極めていくことが大切です。
皆さんは、レゾナックの製品力や共創戦略をどのように評価しますか。
ぜひ、それぞれの視点で考えてみてください。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年7月30日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。