■中長期の成長戦略
NSグループ<471A>は、2025年11月12日に2027年12月期までの中期経営計画を公表し、家賃債務保証事業の拡大と収益構造の高度化を軸とする成長戦略を掲げている。主力である家賃債務保証事業の競争力を高めつつ、保証領域の拡張や不動産DX関連サービスの拡大も視野に入れ、業界トップのポジションをより強固にする方針である。
2027年12月期の定量目標として、営業収益約365億円(2024年12月期から2027年12月期までの年平均成長率約12%)、調整後EBITDAマージン約43.0%を掲げており、高い売上成長と収益性の両立を目指す。事業KPIとしては、新規契約件数約38.5万件、新規保証料約185億円を目標としている。内訳は、住居用保証が新規契約約29.5万件、新規保証料約115億円、事業用保証が新規契約約3.5万件、新規保証料約60億円であり、住居用、事業用の双方で契約数の拡大を図る。
成長の中核となるのは、既存の家賃債務保証事業の拡大である。住居用保証では、大都市圏での営業強化が主な施策となる。東京本社と大阪本社を軸とした営業体制を生かし、都市圏のなかでもシェアが低いエリアや未開拓地域に人員を重点配置する。顧客の規模やエリアごとに営業戦略を細分化し、営業成果を本部と拠点で継続的に検証する体制も整える。営業生産性を高めながら取扱店の拡大を進めることで、契約件数の増加と市場シェアの向上をねらう。
一方で、事業用保証では店舗やオフィスなどの事業用賃貸市場の拡大を取り込みながら成長を加速させる方針である。住居用保証で培った営業ネットワークやノウハウを活用し、事業用賃貸を扱う不動産会社、デベロッパー、REITなどへの営業を強化する。商品面では企業ニーズに応じた柔軟な商品設計を行い、競合との差別化を図る。事業用保証は単価が高く収益性も高いため、この分野の拡大は収益成長に大きく寄与する可能性がある。
収益施策としては、家賃保証の利用者に対して付加価値サービスを提供し、クロスセルを進めることで、ARPU(Average Revenue Per User、営業収益を保証対象者累計(期中平均)で除した値)の引き上げにも注力する。既に家賃保証と駆けつけサービスを組み合わせた商品や多言語対応プランを提供しており、今後は火災保険とのバンドル商品やテナント向け開業支援サービスなどの拡充も検討している。保証サービスの利用を起点に関連サービスを広げることで、顧客当たり収益の増加を図る考えである。
このほか、収益性の改善につながる施策として、契約に占める集金代行の比率上昇による手数料収入の拡大を図るほか、督促・請求事務手数料の徴収によって滞納対応に伴うコストの回収を進める。加えて、審査機能の高度化やスコアリングの精緻化による与信管理の強化も進めている。業務面では審査プロセスの効率化や収納代行手数料の見直しなどにより、変動費の削減も図る。
なお、中期経営計画には織り込まれていない潜在的なアップサイドも複数存在する。主な施策としては独立系の中堅・中小地域保証会社の買収や信販系家賃債務保証会社との提携による事業基盤の拡大、AIを活用した審査・回収業務の効率化、未開拓地域への出店、コスト構造の見直しなどが挙げられる。このうちM&Aでは、同社にとって初のM&Aとして、7月に九州で家賃債務保証事業を展開するアルファーの買収が実現した。約5,500社の取扱店網を獲得したことで、グループの営業拠点は30都道府県37拠点に広がった。2026年12月期業績への影響は軽微と見込まれるものの、まずは九州でのシェア拡大を図る。中長期的にはAI・システム連携による業務効率化や回収ノウハウの移管、商品プランの見直し、事業用保証の拡販により、アルファーの収益性向上を目指す。
M&A以外では、AI審査の高度化による不採算取引の改善や、回収難易度の分析を活用した回収業務の効率化が収益性の改善に寄与すると考えられる。未開拓地域への出店は営業エリアの拡大に加え、競争が比較的緩やかな地域での顧客獲得にもつながる。信販系家賃債務保証会社との提携や追加的なコスト削減も含め、これらの施策が進展すれば、中期経営計画に対する上振れ要因となる可能性がある。
営業強化、ARPU向上、各種収益施策の積み重ねが計画どおり進めば、中期経営計画の達成可能性は十分にあると考えられる。家賃債務保証事業を基盤としながら保証領域や不動産関連サービスの拡張を進めることで、中長期的な利益拡大と持続的な企業価値向上が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
いま読まれてます
記事提供: 
元記事を読む