■業績動向
1. 2026年6月期の業績概要
ギックス<9219>の2026年6月期の連結業績は、売上高が2,765百万円(前期比15.3%増)、コア営業利益が92百万円(前期は74百万円の損失)、営業利益が25百万円(前期は99百万円の損失)、経常利益が2百万円(同101百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が35百万円の損失(同99百万円の損失)となった。
同社では、事業活動によって創出される利益を示す指標として「コア営業利益」を重視している。2026年6月期のコア営業利益は前期比で167百万円改善し黒字転換を達成した。2025年10月に子会社化したメイズに係るのれん償却費及びM&A関連費用を吸収したうえで営業利益も黒字化しており、収益構造改善の成果が表れた決算であったと評価できる。
2026年4月に公表した修正予想(売上高が2,700~2,800百万円、コア営業利益が18~98百万円のレンジで開示)との比較では、売上高はレンジ内、コア営業利益は上限近辺で着地した。一方で、期初予想として掲げていた売上高3,500~4,000百万円、コア営業利益240百万円という目標には届かなかった。これは、期初に想定していたM&A案件が実現しなかったことに加え、大型案件の開始時期が後ろ倒しとなったことなどによる。
ただし、2026年6月期の評価において重要なのは、増収・黒字化ではなく、同社が掲げる「利益を伴う継続的な成長」へ向けた構造転換が進展した点である。同社は案件単位での収益管理の徹底、固定費及び外部リソースの最適化を進めた結果、利益体質の改善を実現した。2025年6月期まで課題となっていた大型不採算案件の影響も解消しつつあり、事業活動そのものの収益力が改善していることが確認できる。
また、事業面ではAI時代を見据えた新たなサービス群の整備が進んだ。従来から強みとしてきたデータ活用コンサルティングに加え、「AI wrapping」「AIP」「セマンティックレイヤー構築支援」などの新サービスを展開し、AIを活用したビジネス変革及びシステム変革支援を強化している。さらに、LINEヤフーとの協業を通じたエンターテインメント領域での「マイグル」活用が進展するなど、パートナー企業との協業モデルも拡大した。
顧客基盤の拡大も着実に進んでいる。Aクライアントは4社(前期比1社増)、Bクライアントは15社(同2社増)となった。既存顧客における他部署・他テーマへの展開が進んでおり、同社が重視する顧客深度の向上が確認できる。一方で、四半期ベースの1人当たり売上高は7.3百万円(前年同期比0.6百万円減)となっており、生産性向上については今後も重要な経営課題として位置付けている。
2. トピックス
(1) AI・データ活用関連
2026年6月期は、同社が掲げる「クライアントを、AI-Informedに。」という戦略の下、AIを活用した新サービス群の整備が大きく進展した。従来のデータ分析やコンサルティング支援に加え、企業の業務やシステムへAIを実装するサービス領域を拡充している。
その1つが「AI wrapping」である。企業内には長年運用されてきた複数のシステムやデータベースが存在し、それぞれが独立しているケースも多い。同サービスは、それらの既存システムを対話型AIによって横断的に利用可能な環境へ統合するものであり、利用者は自然言語による対話を通じて必要な情報へアクセスできる。既存資産を生かしながらAI活用を推進できる点が特徴である。
また、2026年3月には生成AI活用の前提となるデータ基盤整備を支援するサービスとして、「セマンティックレイヤー構築支援」サービスの提供も開始した。企業内には同じ指標であっても部署ごとに定義が異なるケースが少なくなく、生成AIが正確な回答を行ううえで障害となる。同サービスでは、複雑なデータ構造をビジネス用語へ変換し、組織全体で共通の意味体系を構築することで、データ活用やAI活用の精度向上を支援している。
さらに6月には、企業の意思決定高度化を支援する基盤として「AIP」の提供も開始した。AIPは、データ分析やAIによる示唆を業務プロセスへ組み込み、人間による意思決定を支援するプラットフォームである。同社が長年培ってきたData-Informedの思想を、AI時代に対応した形で発展させたサービスとして位置付けている。
人材育成領域では、2025年8月に業務提携先であるBeyondge(株)と共同で「DIGITAL BOOST」の提供を開始した。同サービスは、大企業におけるAI・デジタル人材の育成と内製化を支援するものであり、研修や実践支援を通じて企業内部にデジタル変革を推進できる人材を育成することを目的としている。企業におけるAI活用が本格化するなか、人材不足という課題に対応するサービスとして期待される。
また、2025年12月には「M&A BOOST」の提供を開始した。同サービスは、企業が連続的に実施するM&Aをデータ分析やデジタル技術を活用して支援するものである。買収候補企業の分析からPMI(買収後統合)に至るまでを包括的にサポートする仕組みであり、同社自身がM&Aを推進するなかで培った知見やノウハウをサービス化したものと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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