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大型銘柄を徹底ナンピンし、株券を“焼き捨てる”Tさんの投資術

「人の行く裏に道あり花の山」 投資格言にひそむ罠とは?

「こりゃもう俺の客じゃない、不向きだ」と断念してTさんのことは忘れることにした。

すると1969(昭和44)年夏、あの大型株で動きの緩慢な日立が、突如として乱舞する仕手株のごとく上がった。米国のドレイファス・ファンド(※7)の大量買いだと言う。

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紀伊半島の南東端に居る初老のTさんが、ドレイファス・ファンドの大量買いが来るなんてことを知る由はない。野村のニューヨーク支店でさえ、ドレイファス・ファンドの日立大量買いは読んでいなかった。

余談だが、その6年前の1963(昭和38)年、海外に敏感だった野村証券は「世界のカネがやってくる」というパンフレットを作って、将来は海外投資家が日本に来ると言うシナリオ営業を敢行したことがある。ところがその夏、ケネディ大統領による金利平衡税の新設(※8)により海外投資家は日本株を売ってきた。株価は暴落し、私たちは業界から「世界のカブがやってきた」と揶揄されたものである。

ドレイファスの買いからしばらく後、Tさんから電話があった。株を売りに和歌山へ行くから会社に居てくれ、と言う。

その時、日立は買値の3倍になっていた。70円台で買い2年余後に200円前後で売り切ったのだ。彼の買った他の大型株も似たような結果を取った。こうしてTさんは2年半で全株式資産を約3倍にした。

全株を売り切ったTさんは「このカネで何かを買え買えと言ってくるだろうから、カネは全額引き揚げる。だが、カネは焼却するわけにはいかんなあ」と笑った。

そして彼は言った。

歴史ある企業は幾度もの不況、株主総会をこなし、乗り越えてきている。だいたい、海外にも知られている企業でなけりゃ今回のような事は起きないし、或る程度の大型株でなければ株数を沢山買えないから、ホントの大手や投信は注目してれくれない。

だから山崎さん、“人の行く裏に道あり花の山”ではなく大通りにある平凡な株がいいのだよ、と。

Next: 顧客対証券マンの関係を超えて~T氏と23年ぶりの再会、最後の言葉

※7 ドレイファス・ファンド
ジャック・ドレイファス氏(1913-2009)が1951年に創設した米国の投資信託(ミーチュアル・ファンド)

※8 ケネディ大統領による金利平衡税の新設
利子平衡税とも。米国資本の海外流出防止を目的として、1963年7月18日にケネディ大統領が発表。対日証券投資減少への懸念から翌19日の東証ダウ平均は開所以来の下げ幅となる-64.41円(-4.3%)を記録した。その後のケネディ大統領暗殺による株価下落とあわせケネディ・ショックと呼ばれる

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