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独自路線で挑むユーロズロチ攻略の真髄|老舗FXブログ「為替研究所」運営者 Yuki氏インタビュー

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かつては知る人ぞ知るマイナー通貨ペアに過ぎなかったポーランドズロチ。

ユーロとの組み合わせを提供するFX会社が登場し、高金利スワップと特徴的な値動きに注目が集まったことで、投資家の関心が一気に高まりました。

この記事では、老舗ブログ「為替研究所」を運営するYukiさんに、この通貨ペア運用の根底にある発想を伺い、マイナー通貨に挑戦してきたからこそ見える視点を読者の皆さんにお届けします。

聞き手:鹿内武蔵
(FX雑誌『外国為替』vol.4より改変/インタビュー日:2023年3月14日)

 

Yuki氏プロフィール

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自営業の専門職として働く傍ら、2010年より老舗FXブログ「為替研究所」を運営する兼業トレーダー。ファンダメンタルズを軸にしながらスイングトレードやリピート系自動売買に取り組む。認定テクニカルアナリストの資格も保有。

 

高金利が魅力のポーランドズロチ

―Yukiさんとは何度かお会いしていますが、改めてご経歴を伺います。投資やFXとの関わりはどのように始まったのでしょうか。

FX歴は10年以上になります。相場の見通しや運用に関するブログ『為替研究所』を立ち上げたのは2010年です。そもそも大学時代に友人がFXをしているのを見て、自分も興味を持ったのがきっかけで、それ以来ずっと続けています。

当初はデイトレードやスキャルピングを中心に行っていました。始めてから3年ほどで年間収支がプラスになりましたが、段々と短期売買の勝った負けたに疲れを感じるようになり、徐々に高金利通貨のスワップポイント狙いや、ゆったりとしたスイングトレードにシフトしていきました。2018年頃からはループイフダントラリピトライオートFXといったリピート系自動売買も利用するようになり、今では自動売買が取引の主軸となっています。

ブログで公開していますが、運用比率が最も大きいのはループイフダン、その次がグルトレです。通貨は豪ドル/NZドルが中心で、ユーロ/ポーランドズロチやユーロ/チェココルナも取引対象にしています。昨年は豪ドル/NZドルに資金を厚く入れていましたが、1.15手前までの急上昇で半分くらい損切りし、ポジションを縮小しました。ただ今も一番メインの通貨ではあり、そして最近は豪ドルNZドルも落ち着いているので、気持ちよくトレードができています。

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―ユーロ/ポーランドズロチは、最近ますます注目度が上がっていますね。

もともと一部の投資家の間で、ユーロ/円売りとポーランドズロチ/円買いの組み合わせが密かに人気でした。そこに2021年後半からのポーランド利上げによるスワップポイント上昇が加わり、さらにあっきんさんや鈴さんといった著名トレーダーが再び取り組み始めた影響で、最近は一段と注目されていると感じます。

―ポーランドズロチを発行するポーランドは、どんな特徴を持つ国なのでしょうか。

地理的にはウクライナとドイツに挟まれた中東欧エリアにある国で、輸出産業は自動車が盛んで、輸出品は欧州、特にドイツ向けがほとんど。欧州との関係の強さから、ポーランドズロチはユーロとの連動が見られる通貨です。

2018年当時はEUがマイナス金利だったので、金利のあるポーランドズロチ/円を買い、マイナス金利のユーロ/円を売ると双方からスワップポイントが得られ、為替リスクをユーロ売りでヘッジしながら年利益率10%程度のスワップポイントを狙うというのが当時のコンセプトでした。

しかし、その後の2020年のコロナショックでポーランドは政策金利を1.5%から0.1%へ引き下げたため、スワップポイントは一応プラスではあるものの、スワップポイントを目的に取引するような通貨ペアではなくなり、廃れかけた時代もありました。

それでも私は当時も「ユーロ/ポーランドズロチには独特の値動きのクセがある」点に着目し、裁量取引を継続していました。そして2021年くらいからポーランドが利上げを始め、再びスワップポイントがもらえる通貨になって人気が爆発したという感じです。

2023年3月時点でポーランドの政策金利は6.75%、EUは3.5%です。ユーロを売って、ポーランドズロチを買うとスワップポイントがもらえます。ユーロ/ポーランドズロチを売りで保有する取引ですね。

節目の直前を狙う指値注文が有効

―ユーロ/ポーランドズロチの値動きの特徴について教えてください。

日足チャートで確認すると、急上昇したあとにすぐ戻るという特徴があります。2022年9〜11月や2023年2〜3月が分かりやすい例です。チャンスは一瞬なので、エントリーは早めの方が良いですね。

私の考えでは、ポーランドズロチは流動性が乏しい新興国通貨のため、相場変動が起きたときは、まず新興国通貨のポーランドズロチが売られ、それに対してユーロは世界2位の流動性を誇っているので、ある程度は持ちこたえ、それによってユーロ/ポーランドズロチは上がります。そのあとでポーランドズロチはユーロ連動であることが市場参加者に思い出されて、徐々にポーランドズロチが買い戻されて下がってくるのかなと考えています。

ただし必ず戻るわけではなく、コロナショックではそれ以前の4.2ズロチから右肩上がりで上昇を続け、2023年3月時点(編注:2023年3月14日に取材)では4.6ズロチまで上昇し、以前の水準には戻っていません。また、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻でも4.5ズロチ前後から大きく上昇し、今もそこまでは戻っていません。基本的には行き過ぎたらすぐに戻りますが、大きなイベントがあると、元の水準まで帰ってこないことがあり、踏み上げられることもあります。

ロシアのウクライナ侵攻については、ポーランドがウクライナのすぐ横なのでポーランドズロチは売られたのでしょう。2022年3月は4.5ズロチ台から一気に5.0ズロチ台まで上昇しました。私も「これはさすがにやばいか?」と思っていたので、上がり始めても4.8ズロチまでは手を出せなかったです。このときがユーロ/ポーランドズロチを取引していた中で死を覚悟した一番の瞬間でした(笑)。

―振り返ればユーロ/ポーランドズロチは夏前には落ち着いていますね。

ロシアはウクライナ以西に進軍する意図はなく、NATO側も全面衝突を避けたいという思惑で、ある程度はなあなあになったので値動きが落ち着きました。米ドル/円も同日に一時安値をつけましたが、その後すぐ持ち直しましたよね。世界の反応は意外と冷静でした。本当にマズいときは継続的に上がり続けるので、深刻な状態ではなかったとホッとしています。

―長期的な分析ではユーロ/ポーランドズロチをどう見ていますか?

2000年代からの推移を見ると、5.0ズロチ付近が最重要の節目です。2009年やウクライナ侵攻時の高値がほぼ同水準だったので、短期的な戻りを狙う以外には、5.0ズロチをレジスタンスラインと考える発想もありですね。また、ユーロ/ポーランドズロチは4.70や4.75みたいな0.05刻みの水平線に反応しやすいです。

―ちょうど4.68付近で動いている今は?(編注:2023年3月14日に取材)

ポーランドの状況はあまり良くなく、なんでこんなにユーロ/ポーランドズロチが安いんだろうというのが正直な感想で、4.70ズロチは下値としても機能しているので、個人的には4.70ズロチではまだエントリーしたくないですね。ただ4.75ズロチに上がったら狙っていきたいし、4.80ズロチならそれなりに入りたいです。

そしてエントリーの仕方ですが、例えば節目の4.80ズロチじゃなくて、4.79ズロチみたいに節目から0.01や0.02手前に指値注文を設定するのもありだと思います。取引していても、わずかに届かずに折り返すことも多いですし、それなりにオーバーシュートしてから戻るときもあるので、その辺りは注意した方が良いです。

―イメージ的には短期売買ですよね。

いや、1〜2か月くらいのスイングトレードのイメージです。スプレッドが広すぎるので、デイトレードやスキャルピングで利益を取るのはかなり難しいと思います。ユーロポーランドズロチなりの短期売買ですね。

スワップポイントを狙う通貨ペアではない

―ユーロ/ポーランドズロチを長期で保有する戦略についてはどうお考えですか。

まず「ユーロ/ポーランドズロチは長期保有に適した通貨ペアなのか?」という疑問があります。スワップポイントは受け取れますが、EUはまだまだ利上げモードですよね。2023年3月時点の市場予想だと、EUの政策金利は3.75~4%まで上がるとの予想が多いので、今後はスワップポイントが減る可能性は十分にあります。

―金利の上昇がユーロ買い要因となって、ユーロ/ポーランドズロチは上昇すると。

不思議なことにユーロ/ポーランドズロチは金利差に反応しないんです。ポーランドは2021年10~11月に利上げしているので、ユーロ/ポーランドズロチはそこでズロチ買いが起きて価格が下がってもおかしくなかったのですが、実際はジリ上げでした。

2022~2023年にかけてはEUが利上げしているのに、ユーロ/ポーランドズロチは上がるどころか下がっています。コロナショック時も一時的に大きく上昇して下落しましたが、ポーランドが1.5%から0.1%まで金利を下げたとはいえ、それが下落要因になったという感じでもなかったんです。

それを踏まえると、あまり金利差に反応しない通貨という印象です。ユーロが買われるときに自動売買的な感じでポーランドズロチを買っている層がいるのかもしれないですが、詳しい理由は分かりません。

金利に反応しにくいユーロ/ポーランドズロチでEUの金利を気にした理由は、EUの金利が大きくなるほど金利差が縮まってもらえるスワップポイントが減るからです。それを考えるとユーロ/ポーランドズロチでスワップポイント狙いの長期投資は違う気がします。長期投資をするならチェココルナの方が良い気がします。

―チェココルナはどんな特徴の通貨でしょうか。

チェココルナはポーランドズロチと似ていますが、ポーランドズロチよりも値動きが安定していて、対ユーロだとチェココルナの方が強いです。ユーロ/チェココルナのチャートを見ると、今は下がっているので、チェココルナ高です。

また、東欧通貨はチェココルナ、ポーランドズロチ、ハンガリーフォリントが主にありますが、強い順だとチェココルナ、ポーランドズロチ、ハンガリーフォリントです。金利だと、ハンガリーが圧倒的に高く、その次にチェコで、ポーランドがチェコの少し下という感じです。レート的には、ユーロ/チェココルナだとチェココルナが割高になっています。

―欧州通貨の奥深さを感じます。やはりユーロ/ポーランドズロチは長期保有には向きませんか。

はい。スワップポイントが高い=長期投資という発想を持つ人が多いのですが、そうしたタイプの通貨ペアではないと思います。

―スワップは副産物で、あくまでキャピタルゲインがメインという。

そうはいっても、今のスワップポイントが続くと仮定して年利益率を計算すると、みんなのFXを使えば約30%、IG証券だと20%台なんですよ。月あたりで2~3%を狙えるので、全く無意味ではないですね。価格が上昇して含み損が出ても「スワップポイントの収益があるから」と思える点はメリットです。

■ユーロ/ポーランドズロチ(EUR/PLN)を取引できるFX口座

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―もし長期保有するとしたら、どの程度のレバレッジが妥当ですか。

レバレッジという概念ではあまり考えておらず、個人的には「20万円で1万通貨」くらいを目安にやっています。これだと4.75スタートでも5.15くらいまでは耐えられる想定になっており、史上最高値の5.00を多少オーバーシュートしても耐えられます。

ただ、これであれば長期保有もできるかといわれるとそうともいえず、直近だとロシアのウクライナ侵攻のとき以外は越えていませんが、長期的に見れば価格は緩やかな右肩上がりを続けているので、5.00ズロチは史上最高値だから安心していいのかといわれると疑問です。先ほども述べたように、やはり私はこの通貨ペアは長期保有する通貨ペアではなく、スイングトレード向けの通貨ペアだと思っています。

ただ、そうだとすると20万円で1万通貨というのは「慎重すぎる」という意見も聞きますし、それも確かに一理あるなと思いながら聞いています。

―もっと攻めても良いという意見ですね。

ノックアウトオプションを使って1単位10万円でやっている人もいて、私のTwitterなどに「ノックアウトオプションで儲かりました。ありがとうございます」「1単位10万円で取引しようと思っているのですが、どうでしょうか」みたいな質問が来ます。個人的には1単位10万円は攻めすぎじゃないかなという気もしますが、ノックアウトオプション等を使ってしっかりと損切りも入れて、その上で戻ったときとのリスクリターンを考えてペイするなら、そういったやり方も全然ありだとは思います。

―将来的に欧州とポーランドの金利が逆転する可能性はありますかね。

さすがにないと思います。そこまでインフレが加速すればポーランドも必ず利上げするはずなので。ただし金利差が縮まる展開はあり得ます。今のポーランドの金利は6.75%で据え置かれていますがEUも金利を上げていて、ピークは4%近くまで上昇すると予想されているので、追いつかれる範囲内だと思います。

―なるほど。ちなみにユーロポーランドズロチの取引で、分割や積立投資のような手法は有効ですか。

積立をするような通貨ペアではないと思っていますが、例えば直近の4.75ズロチで少しエントリーして、4.80ズロチや4.85ズロチに売りの指値を仕掛けるような方法は有効だと思います。イメージとしてはナンピンで、むしろそのような手法の方が良いのではないでしょうか。

損切りの一つの基準は5.00ズロチ突破

―ここからはユーロポーランドズロチの利食いと損切りのタイミングについてお聞きします。出口のイメージはどのような感じが良いでしょうか。

損切り基準の一つは、5.00ズロチを明確に超えて、その水準で推移し続けた場合です。

もう一つはイベント発生時。たとえば「ロシアがEUへ侵攻」「核兵器使用」「NATO軍が派兵」といった事態です。そうなればレートがいきなりぶっ飛ぶリスクもあるので、FXでユーロ/ポーランドズロチを取引するのはおすすめできず、その場合は指定したレートで必ず損切りされるノックアウトオプションを使うのが良いと思っています。そのときに5.00ズロチに近いならノックアウトオプションでエントリーすることに反対しないですし、むしろ私がエントリーしたいくらいです。

―流動性の低い通貨ペアは狙ったところで損切りができないですよね。

まさにその通りで、スイスショックのときの追証地獄みたいな事態を防ぐためにも、そういう「やばい状況」ではノックアウトオプションを使うのがリスク管理として必須だと思っています。私自身、ロシアのウクライナ侵攻時にFXの全てのポジションを決済してノックアウトオプションのベアでポジションを持ち直しました。IG証券だとスワップポイントはFXでもノックアウトオプションでも同じなので、その点もありがたかったですね。

―損切りは価格だと5.00ズロチが目安として、利食いのイメージはいかがでしょうか?

利食いは明確で、節目から0.01ズロチくらい手前で利食いです。例えば、4.79ズロチで売りエントリーしたなら、4.70ズロチの少し手前の4.705ズロチや4.71ズロチで利確します。明確な数値は決まっていなくて、本人の気持ち次第です。4.71ズロチで半分を利確して、4.69ズロチで残りを利確するみたいな取引でも良いと思います。

―ちなみに、このやり方で利益の方は…?

はい。2022年は豪ドル/NZドルで大損していましたが、ユーロ/ポーランドズロチはプラスになりました。

正統派取引ではなく色物通貨で勝ちたい

―YukiさんはIG証券とみんなのFXで取引されているようですが、ユーロ/ポーランドズロチを取引するのはどの口座が良さそうですか。

取引する人の好み次第でしょう。IG証券の強みはユーロ/ポーランドズロチを昔から取り扱っていて、条件が安定しています。IG証券のスワップポイントはカバー先から出たレートにマークアップを乗せて自動的に出していると聞いたこともあり、実際に使ってスワップ推移を見ていても、マーケットに準じているなという感覚があります。良くなれば良くなるし、悪くなれば悪くなる、という具合に相場に忠実です。それと英国の会社なので、欧州系の通貨に強い点も良いですね。

みんなのFXLIGHT FXはスペック面だとIG証券よりも上です。特に1000通貨単位で取引可能な点は圧倒的な強みです。一方で、この会社は売り買いスワップがほぼ同じことからも分かるように、スワップについて良くも悪くも販売促進的な面があります。今はユーロ/ポーランドズロチを導入したばかりで、投資家の間でも盛り上がっていて、その割にレートも安定しているのでスプレッドやスワップポイントも良い水準ですが、経営方針で変わる可能性があるので、将来的にずっと続くかはわかりません。

―IG証券はノックアウトオプション前提ですか?

落ち着いた相場環境ならIG証券のFXを使いますね。ノックアウトオプションは資金効率の良さや確実な損切りなどのメリットがある一方で、スプレッドがFXより若干高く、また指値注文でのエントリーができないといったデメリットもあるため、落ち着いた環境ではFXで良いかなと思っています。ただ、何かとんでもないことが起こったときは、またFXを損切りしてノックアウトオプションに持ち替えると思います。

―最後に今後の展望を。

米ドル/円をスキャルで戦うような正統派ではなく、あまり人気のない通貨ぺアのような隙間を見つけて勝ちたいと思っています。豪ドル/NZドルも今ではメジャー通貨ペアですが、2018年くらいは色物扱いでしたし、ユーロ/ポーランドズロチも色物ですよね。面白そうな通貨ペアで、短期取引でなくても取引できるような仕組み作りを考えたいです。

インタビュー日:2023年3月14日

■ユーロ/ポーランドズロチ(EUR/PLN)を取引できるFX口座

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