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いい生活 Research Memo(9):中長期成長戦略として顧客基盤の拡大、収益力の強化、将来への布石を掲げる(2)

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■中長期の成長戦略

2. 将来的な戦略
いい生活<3796>は、中長期の戦略以外にも将来の展望として、(1)持続可能な顧客獲得サイクル、(2)プロダクトビジョン、(3)不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォームという戦略イメージを持っている。

(1) 持続可能な顧客獲得サイクル
同社は、不動産取引・管理のあらゆる場面に対応する網羅的なプロダクト群を武器に、顧客の多様かつ深層的なニーズに包括的に応え、既存顧客へのアップセル及びクロスセルを推進する。既存顧客は業務基盤としての定着度が高いため、追加サービス購入を通じて顧客単価が高まる傾向にある。これにより、売上拡大に向けた事業基盤拡大へつながる一連のサイクルが形成される。売上高は、既存顧客向けのアップセル・クロスセルを通じた受注拡大に加え、新たに稼働を開始した新規顧客の売上が上乗せされることで増加する見込みである。不動産管理業を中心としたLTVの高い顧客の増加により、サービス開発などのコストを相殺し、大きな利益を創出する考えである。

(2) プロダクトビジョン
同社は、特化する不動産領域の中でマルチプロダクトを展開、それぞれのSaaSをリアルタイムで自動連携させることで、顧客にとっての全体最適を実現する。会計システム、電子契約、電子決済、Web会議などのサードパーティシステムとの連携を通じて、顧客ビジネスの効率化を推進する。加えて、インボイス制度への対応や設備・修繕管理機能、経営分析機能、金融領域など新機能や新領域の拡充を進め、不動産における多様な業務領域をカバーするプロダクト開発を進める。

同時に、新たな製品の投入を通じたサービスの拡張を進める。「いい生活売買クラウド」では、大規模なUI/UXのリニューアルを実施し、顧客管理から進捗管理まで一気通貫で対応する売買仲介業務特化機能を強化した。これにより、従来の賃貸領域に加え売買領域にも展開を広げ、マルチプロダクト戦略をさらに推進する。「いい生活賃貸管理クラウド」では、点検・清掃・修繕などの建物管理業務機能の提供を新たに開始した。スマートフォンによる現地入力や記録管理に対応し、オーナー報告業務の効率化を図るなど、建物管理業務全体のデジタル化への支援を強化している。

また、各プロダクトへの生成AIをはじめとする最新AI技術の実装を急速に進めており、顧客が意識することなくAIの恩恵(実務の自動化・省力化)を享受できる環境を構築し、さらなる顧客単価の向上と他社との圧倒的な差別化の実現を目指している。

(3) 不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォーム
SaaSを媒介として、不動産に関わる多様なデータが蓄積されたプラットフォームの構築を進める。蓄積された豊富なデータに基づき、多彩な商品やサービスの取引を活発化するマーケットプレイスとなることを目指しており、「いい生活Square」がその役割を担う。これにより、テクノロジーがもたらす付加価値は、エンドユーザー・不動産会社にとどまらず、市場の多様なプレーヤーへ届けられることになる。直近では、ケーブルテレビのJCOM(株)、日本放送協会(NHK)等との提携もスタートし、「いい生活Square」におけるマッチングに基づくトランザクション課金の拡大が視野に入る。今後も不動産の契約がトリガーになりうる商材を「いい生活Square」で扱っていくことで、SaaSの面の拡大とは別次元の収益を追求していく。

不動産市場の周辺領域は広大であり、公共サービスとの連携、引っ越しに伴うeコマース領域、決済など、周辺領域にエコシステムを拡大する大きな機会が広がっていると同社では認識している。

3. 人的資本拡大
2023年4月、「人的資本拡大に関する基本方針」を制定した。この方針は、社会と会社、会社と従業員の双方にとって有益な関係構築に焦点を当てている。同時に、同社のミッションとビジョンを明確化し、組織の存在意義と目指すべき未来像を示した。なお、企業が重視する価値観と個々人が目指すべき行動指針は、6つのバリューとしてまとめている。

同社の6つのバリューは、以下のとおりである。「新たなスタンダードを定着しつづけよう」は、常に既成概念を疑い、経験を形式知として定着させ、未知の探求を通じて新たな知識を組織に取り込み、展開する。「明日の距離感で前進しよう」は、適切な距離感を保ち、誰も置き去りにせず停滞なく前進することを重視する。「優しさと易しさに芯をとおそう」は、優しさと易しさを核とし、明快なコミュニケーションとシステムによって信頼関係を構築する。「多彩な仲間と化学結合を起こそう」は、多様な人材との相互作用を通じて成長を促進する。そして、「信頼を積みかさね歴史をはぐくもう」「挑戦と失敗をまるごと愛そう」は、信頼構築、歴史の育成、挑戦・失敗の包容を通じ、互いに支え合う文化の継承と発展を推進する。

「人的資本拡大に関する基本方針」では、さらに「自発的な価値創造」「目標設定や達成の支援を通じた積極的な対話」「個々人の能力の顕在化とウェルビーイングの追求」「人間性の尊重」及び優れた「タレントの獲得」といった要素を促進する施策を、社内環境整備基本方針として具体的に掲げている。

同社は、プロダクトごとに独立したスモールチームへの権限移譲を進め、APIプラットフォームを中核に各プロダクトチームが連携する、生産性の高い開発環境を構築している。このアプローチを進めるため、自律的なチーム運営を重視し、スクラムを基本としたアジャイル体制を採用している。その結果、同社は開発生産性が優れたエンジニア組織を表彰する「Findy Team + Award 2023」において、ユーザーへの価値提供のサイクル改善が評価され、組織別部門で受賞した。個人の能力を十分に発揮し、チーム全体の学びを促進することは、結果として人的資本の充実へとつながっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山 博詞)
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