■会社概要
1. 会社概要
冨士ダイス<6167>は、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ「超硬合金」を用いた耐摩耗工具・金型の製造販売を主力事業としている。独自の粉末冶金技術と超精密加工技術に強みを持ち、国内市場において30%超のトップシェアを長期にわたり堅持している。開発力・技術力に加え、原料粉末の調製から焼結、超精密加工、製品検査に至るまでの一貫生産体制を敷き、顧客の生産プロセスに合わせたオーダーメイド製品を直販で提供している点に強みを持つ。これにより、多品種少量生産による高付加価値製品を提供し、素材販売が中心の競合他社と差別化を図っている。自動車、鉄鋼、電子部品、製缶など多くの業種にわたる約3,000社に及ぶ顧客基盤を持ち、特定業種の景気変動リスクを分散できる点にも強みがある。創業以来黒字経営を継続しており、2026年3月期末の自己資本比率も79.6%と財務健全性も高い。
同社グループは、同社及び子会社7社(国内法人2社、海外法人5社)で構成される。2026年3月期末時点において、国内では、郡山、秦野、名古屋、岡山、熊本の生産拠点のほか、営業拠点10ヶ所を設けており、海外では、タイ及びインドネシアに生産・営業拠点、中国、マレーシア、インド(期末時点は休眠、2026年4月1日に事業再開)に営業拠点を設けている。これらの営業拠点に約100名の営業担当者を配置して、直接顧客を訪問してコミュニケーションを図ることによって、顧客ニーズの把握に努めている。
2. 沿革
同社の創業は、1949年6月に創業者の新庄鷹義が福岡県戸畑市において耐摩耗工具加工を目的とする冨士ダイス製作所を設立したことに遡る。1953年12月に東京都大田区下丸子に東京工場(現 本社)を建設し、この頃より超硬耐摩耗工具製造を本格的に開始した。1956年4月に現社名となり、1957年3月には本店を東京都大田区下丸子に移転した。その後、国内の工場や営業拠点の整備を進め、2000年代以降は中国、タイ、インドネシア、マレーシア、インドなど海外に拠点を展開している。2015年6月に東京証券取引所市場第2部に株式を上場後、2017年4月に東京証券取引所市場第1部へ市場変更した。2022年4月には東京証券取引所の市場区分の見直しに伴い、同市場第1部からプライム市場へ移行した。
■事業概要
超硬合金を用いた耐摩耗工具を専門に取り扱い、幅広い産業を支える
超硬合金は、タングステンカーバイドに代表される硬質の金属炭化物と、コバルトなどの鉄系金属を粉末状にして混ぜ合わせ、型に入れて成形し、高温で焼き固める方法(粉末冶金法)によって作られる合金である。ダイヤモンドに次ぐ高い硬度と優れた耐摩耗性を持ち、主に金属の塑性(切屑の出ない)加工に用いられる工具や金型に広く使用されているほか、一部は中間製品である超硬合金チップとしても販売している。
同社グループは、超硬合金を用いた耐摩耗工具を専門に取り扱うため、報告セグメントは耐摩耗工具関連事業のみの単一セグメントだが、売上高については製品別に区分して開示している。
1. 製品区分別の分類
同社グループの超硬合金を用いた製品は「超硬製工具類」「超硬製金型類」「その他の超硬製品」の各区分に分類され、輸送用機械、鉄鋼、非鉄金属、飲料缶に代表される金属製品、電機・電子部品、生産・業務用機械等の幅広い分野で使用される。また、超硬合金の精密加工で培った加工技術、検査技術を活用して、超硬合金以外の素材(鋼やセラミックスなど)を用いた耐摩耗工具等の製造販売も行っており、これは「超硬以外の製品」の区分に分類される。
なお、2026年3月期における製品区分別の売上構成比は、超硬製工具類24.9%、超硬製金型類26.8%、その他の超硬製品28.1%、超硬以外の製品20.3%となっている。このうち、超硬製工具類、超硬製金型類、その他の超硬製品が主力製品であり、ほぼバランスが取れている点に特長がある。
2. 主要製品の概要
(1) ダイス、プラグ
「超硬製工具類」の主要製品としてダイス、プラグがある。ダイスは、材料を通す円錐形の穴(ダイス孔)を持つ金型であり、この穴を通すことで材料を目的の外径まで縮小し、断面形状を整える役割を果たす。プラグは、主にパイプの引抜加工において、内部に挿入して使用する金型であり、パイプの内側から圧力をかけることで内径を精密に仕上げ、肉厚を一定に保つ役割を果たす。つまり、外径の寸法を決める工具をダイス、内径を決める工具をプラグといい、この工具は鉄鋼、非鉄金属、自動車、電機・電子部品といった幅広い業界で線材、パイプを生産するために使用される。超硬合金を使用したダイス、プラグは創業当時から現在まで同社グループの主力製品であり、特にダイスは社名の由来にもなっている。
(2) 自動車部品生産用金型
「超硬製金型類」の主要製品として自動車部品生産用金型があり、金属やプラスチックなどの材料を、自動車部品に成形加工するための金型として用いられる耐摩耗工具である。自動車部品の金型は高精度、高強度及び耐摩耗性を有した超硬合金を使用したものが多く、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ステアリング、安全装置部品、燃料電池車等に組み込まれるクリーンエネルギーシステムなどの部品が耐摩耗工具で製造される。
(3) 製缶金型
「超硬製金型類」の主要製品として製缶金型があり、金属板を切断、曲げ、溶接して立体構造物を作る「製缶加工」において、材料を正確に曲げたり、穴を開けたりするために使用する金型として用いられる耐摩耗工具である。この工具で作られた製品としては飲料缶、食缶、エアゾール缶、一斗缶などがある。特にビール等の低アルコール飲料やコーヒー等に使用される飲料缶については、非常に生産量が多く、原材料からの歩留まりや製品精度が重要視され、高い精度及び耐摩耗性が求められることから、超硬合金の製缶金型が使用されることが多い。
(4) 超硬合金チップ
「その他の超硬製品」の主要製品として超硬合金チップがあり、丸棒、板材、ニアネット形状の原料を焼結し、超硬合金とした塑性加工用の工具、金型の素材になる。超硬合金チップは、同社グループの中では海外への販売比率が高い製品である。
(5) 鋼製品
「超硬以外の製品」の主要製品として鋼製品があり、同社が超硬合金の精密加工で培った高い加工技術、検査技術を活かし、超硬合金の耐摩耗工具と重なる使用分野において鋼工具の製品の提供を行っている。顧客の生産ラインの各工程では、使用環境や被加工材、加工方法等によって、耐摩耗性、耐衝撃性、コスト等、求められる工具の性能がそれぞれ異なるのが一般的であり、求められる工具性能に応じて超硬合金と鋼の両方の材料が使い分けられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)
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