■成長戦略・トピック
1. 中期的な経営戦略
中期的な視点では、タイミー<215A>は「守り」から「攻め」に転じるターニングポイントを迎えている。2025年10月期は、競合企業の参入や不正利用強化などの外部環境対応を優先した「守り」のフェーズであった。2026年4月期(6ヶ月)及び2027年4月期上期は再成長に向けた「仕込み」を行い、2027年4月期下期以降に「攻め」に転じる計画である。
具体的な戦略としては、「業界毎の深掘り・ソリューション開発」「介護福祉を中心とした新しい業界の開拓」「戦略的投資を可能にする生産性向上による利益創出」「複数の新規事業・サービスを立ち上げ・拡大」「インオーガニック(M&Aなど)戦略の推進」の5点を掲げている。なお、同社はスポットワーク以外の新規事業や新規サービスをリリースするが、これらはあくまでもスポットワークの成長を加速させるための施策と位置付けている。
2. 物流業界
物流業界においては、大規模拠点を対象として、受入負荷軽減プロジェクトの推進を通じた拠点浸透率の向上を重点施策としている。フィールドマネージャー施策においては、同社が雇用・育成したフィールドマネージャーがクライアント拠点に配置(派遣)され、業務に従事している。
フィールドマネージャーは、クライアントに代わり現場での受け入れ業務、並びにスポットワーカーに対する実務教育などのオペレーション管理を行っている。これにより、クライアント側の管理負担が軽減されると同時に、スポットワーカーの対応可能職種が拡大し、1拠点当たりのタイミー利用率が向上することが実証されている。
既存クライアントにおける利用拡大の余地は依然として大きく、引き続きフィールドマネージャーの採用数拡充とともに、スポットワーカーのワーカーマーケティングも強化する。「習熟度の高いワーカーの可視化」や「必要なスキルを持った人をピンポイントで募集する機能」などスポットワーカーの受入負荷軽減・生産性アップに向けたソリューション(スマートグループ機能)が整備された。これらの取り組みを通じて、物流業界においては、派遣からスポットワークへの切り替えが加速する見通しである。
3. 小売・飲食業界
小売・飲食業界においては、スポットワーク支援に加え、新たに「長期アルバイト採用支援サービス」の展開を推進している。これらの業界は、現場レベルでの利用ニーズは堅調であるものの、原材料価格やエネルギーコストの高騰に伴うクライアント企業の経営層によるコスト抑制方針の影響を受け、利用が鈍化傾向にある。しかし、同業界における長期欠員補充の需要は依然として根強く、既存の求人広告媒体には多額の予算が投じられている。こうした広範な採用ニーズに応えるため、同社はスポットワーカーに対して長期採用のアプローチを可能にする支援サービスの開発を行い、大手企業40社270拠点(2025年10月期時点)において概念実証(PoC)を実施してきた。
この実証実験を通じて、従来の求人広告媒体では応募が集まらないにもかかわらず、掲載費用を支払い続けざるを得なかった「採用困難店舗」を抱える企業から、新しい採用手法として高い実績や期待を寄せる声が顕著に表れる結果となっている。
同社が抱える膨大なスポットワーカーの母数を活用できることに加え、実際の就業体験を経たうえでの長期雇用となるため、ミスマッチが起きにくいという利点がある。長期アルバイトと通常のスポットワークとのカニバリゼーションが当初懸念されたが、むしろ長期アルバイト採用店においてスポットワークの利用が増加する事例も見られるなど、ネガティブな影響は軽微であることが実証されている。同社は本サービスを今夏に正式リリースする予定であり、まずは従来の求人広告では採用が特に困難であった店舗に対して、重点的なアプローチを展開する計画である。
また、こうしたスポットワークにとどまらない多様な雇用形態(長期アルバイトや正社員など)への支援サービスが拡充するなかで、ワーカーが「タイミー」を通じて就業するだけで、多様な就労形態のオファーを受け取ることが可能となる「おさそい(オファー受信)」機能のアプリ内実装を予定している。
4. 介護福祉業界の開拓
同社は、介護福祉業界をスポットワークの活用余地が大きい市場と位置付けている。高齢化に伴う介護需要の拡大の一方で、業界内の労働力不足は構造的な課題となっている。同社は、現役従事者の獲得競争ではなく、スポットワークを通じて「就業の心理的・物理的障壁」を低減させることで、潜在的な有資格者の復職支援、無資格者による介護領域への新規参入を促進し、労働力不足の解決を図る。同業界において強固な市場地位を確立するため、介護福祉業界の有資格ワーカー獲得を目的としたマーケティング予算の集中投下、クライアント開拓に向けた営業人員の倍増といった戦略的投資を行ってきた。これらの施策により、2026年4月期における介護福祉業界の売上高は前年同期比で84.7%増となった。
2026年4月、同社とベネッセキャリオスは、戦略的業務提携に向けた基本合意書を締結した。両者の持つ資源とノウハウを統合することで、無資格・未経験者の業界流入と潜在有資格者の掘り起こしを推進し、深刻化する介護人材不足の本質的解消を目指す。ベネッセキャリオスは、介護事業及び介護周辺事業を展開するベネッセスタイルケアグループにおいて介護・医療特化型のHR事業を行っており、7万を超える取引先事業所を持つ。具体的な提携内容としては、1) タイミーの導入促進とコンサルテーションの促進、2) 資格取得やスキルアップの機会提供、3) 人材紹介サービスの提供による人材定着、などが挙げられる。今後はこれらの取り組みにより、2027年4月期の下期以降に具体的な成果発現が期待される。
5. フィンテック領域への進出
2026年6月、同社は、NTTドコモ及び住信SBIネット銀行と金融領域における業務提携に関する基本合意書の締結を発表した。銀行サービスを含む金融プラットフォーム提供に向けた検討を本格的に進める。同社は、1,420万人(2026年4月末時点)を超えるワーカーに対して、スポットワーク事業を通じて給与の即時振込サービスなどの提供を行っている。ワーカーの短期的な金融ニーズの高さ、ワーカーが抱える将来における経済的な不安、スキルアップへの意欲と経済的な制約といった課題を同社が捉えてきたことが、金融領域への参入に至る背景となった。
NTTドコモと住信SBIネット銀行は、「スマートライフプラットフォーム」構想に取り組んでおり、住信SBIネット銀行は、2026年8月より「ドコモSMTBネット銀行」としての新たなサービス展開を予定している。両社の生活インフラとしての約1億規模の会員基盤、通信、ポイント(dポイント)決済(d払い、dカード)などの顧客接点、BaaSをはじめとする先進的な金融ソリューションなどの強み・基盤がある。これに、「タイミー」の強みである1,400万人以上の登録ワーカー、46万拠点の登録クライアント、5,500万件以上の蓄積された信頼データ、年間流通総額1,300億円規模の給与受け取り接点が組み合わさることで、金融領域においても新たなシナジー創出に有効活用される見込みである。2026年7月には、金融関連ソリューションなどの事業化に向けた子会社を設立した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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