株式会社ビーエイブル(604A)のスタンダード上場を記念した記者会見が行われ、代表取締役社長の佐藤順英氏と取締役CFOの神谷均氏が登壇しました。
企業情報
設立:1991年3月
事業内容:火力・原子力発電プラントの建設、メンテナンス、廃止措置等の工事/再生可能エネルギーの開発・施工・メンテナンス/健康事業(元氣ジム)/設備設計・製作・操作/調査・研究コンサルティング/土木・建築等工事
登壇者名
株式会社ビーエイブル 代表取締役社長 佐藤順英 氏
株式会社ビーエイブル 取締役CFO 神谷均 氏
会社概要
佐藤順英氏(以下、佐藤):株式会社ビーエイブル代表取締役社長の佐藤です。みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます。
弊社の会社概要について簡単にお話しします。弊社は35年前に設立し、原子力発電所のメンテナンスを主な業務として現在に至ります。
沿革

ティッピングポイントとなったのは、2011年3月11日に起きた東日本大震災です。それ以前は、原子力発電所の中でも特殊な部位、例えば原子炉本体周辺の特殊な機器や非常用発電機など、手間がかかり利益率が低い分野に特化していました。
東日本大震災の発生時、現場では弊社の社員が多く働いていましたが、奇跡的に全員が無事で、家族もみんな助かりました。みんなでこの命を何に使おうかと考え、「我々は原子力のことをよく知っているから、福島第一原子力発電所の沈静化に向かおう」と全員が一丸となり、沈静化に取り組みました。
弊社は原子力発電所の重要な部分について十分な知識を有しており、どのように対応すればよいか、どこにどのような機器があるのかといったことを把握していたため、沈静化を比較的速やかに進めることができました。
2011年12月16日に冷温停止状態が宣言され、それ以降は廃炉作業に移行し、現在に至っています。
社是・経営理念

弊社の理念は、「人として最高の行為は世のため人のために尽くすことである」という私の価値観から来ています。社是として「利他」を掲げ、人のために尽くすことを念頭に置きながら事業を進めてきました。そのため、震災時も社員が一丸となり、沈静化に向けた作業に取り組むことができたと考えています。
また、このような仕事をするにあたって、「人として正しいことを正しいままに貫く」という考え方を大切にし、自分や会社にとっての損得ではなく、人として正しいかどうかを基準に行動しています。
事業内容

人類として正しいことと考えると、再生可能エネルギーの確保やCO2の削減は重要な課題です。震災後は、関西電力の協力を得ながら、CO2を排出しないバイオマス発電所を地元に建設することができました。国内最大級の112メガワットの電力を供給しています。
放射線業務従事者は法令により被ばく線量が定められており、沈静化に取り組む中で、1年間は働けない方が多く出ました。このバイオマス発電所の建設には、そのような方々の雇用の場を創出する目的もありました。結果として、日本一の規模を誇るバイオマス発電所となっています。
当時の再生可能エネルギーブームにのって発電所を作ろうと考えたのではなく、「福島第一原子力発電所の沈静化を早期に行い、放射能から日本を守ろう、東北や関東を守ろう」といった思いを持ち続けてきた結果、東京電力からの元請け工事が増えてきました。
そのような中で、コンプライアンスやガバナンスがしっかりとした会社であるべきだと考えました。上場することで、信頼できる会社がこのような重要な仕事に取り組んでいることを世の中に示す必要があると考え、今回実現に至りました。
これにより、これからも地域のため、福島のため、そして日本のためにさらなる努力を重ねていけると感謝しています。
震災後は、途中から介護事業も手掛けるようになりました。「なぜ突然介護事業を始めたのですか?」と聞かれることがありますが、福島第一原子力発電所で過酷な作業を行っている社員から「親を介護しなければいけないので1週間休ませてください」という話があり、原子力発電所の近くに介護施設を設立したという経緯があります。
社員が出社の前に「おじいちゃん、ちょっと行ってくるからね」と挨拶し、作業を終えた後も「おじいちゃん、元気だよ」といった会話ができるような施設を作りたいという思いから、震災後数年して介護事業を立ち上げました。
すべては原子力の沈静化、復旧・復興を起点とした事業であり、飛び石を売っているわけではありません。現在では介護事業も活性化が進み、来年には本格的に利益を出せる段階に来ています。上場することで事業を加速させ、今後しっかり成長させていきたいと考えています。
当社の強みと今後の事業展開

弊社の強みについてです。現在、廃炉・復興において国や東京電力が全責任を持つとおっしゃっているため、その流れに乗り、少しでもお役に立てればと考えています。
また、昨今のホルムズ海峡をめぐる問題の影響もあり、エネルギー価格が高騰しています。さらに、日本は資源の乏しい国であることから、停止していた原子力発電所を再稼働させる動きが急速に進んでいます。
そのような中、弊社は他のプラントの再稼働に向けた準備工事を手掛けるほか、再稼働した島根原子力発電所や柏崎刈羽原子力発電所6号機などにおいて、弊社が得意とする原子炉周辺の特殊な部分の点検や制御棒に関する業務に力を注いでいます。
車検のように定期検査を毎年行う必要があるため、今後も継続するストックビジネスにつながると考えています。
また、バイオマス発電所は、原子力発電所において放射線被ばく線量を超えて働くことができない方々のための雇用の場として手掛けましたが、CO2や温暖化の問題により再生可能エネルギーが非常に重要な位置づけとなっています。
その中で、現在、日本最大規模である112メガワットのバイオマス発電所を軸に水平展開を進め、発電所の開発および運用・保守(O&M)を行っています。
さらに、国と県が主体となって福島の阿武隈山系に作った福島復興風力の風力発電所において、現在GEベルノバから特命で指名されてメンテナンスを担当しています。
国内にはまだ数千基の陸上風力発電設備が稼働しているため、これらにおいても差別化を図りながら挑戦していきたいと考えています。このように、時流に乗ったビジネスを行っています。
当社の強みと今後の事業展開

弊社が他社と比較して優位である点は、福島第一原子力発電所の廃炉においては各種ロボットの開発や特殊工法の開発を行っていることです。
もともと現場作業を主とする会社であるため、現場作業をロボット化するなど、現場で蓄積した知見を活用し、「現場を科学する」と呼んでいますが、今の技術と現場力を組み合わせて進めていくことが弊社の特徴です。
高難度で他社が忌避するような作業についても、社内でさまざまなアイデアを出しながらチャレンジしており、このような姿勢が弊社の優位性となっています。他の電力会社からもさまざまな相談を受けており、今後も水平展開が進むのではないかと考えています。
また、雇用の場として手掛けた日本最大級の112メガワットのバイオマス発電所を持株会社が運営していますが、数年後には原資を回収し、配当も入ってきます。この大きなリターンは、より安定した企業経営に寄与するものと考えています。
当社の強みと今後の事業展開

将来については、廃炉分野で開発した新技術を、廃炉にとどまらず他分野へ水平展開していきたいと考えています。
その中で「こんなことを自動化でできないか」など、未来に向けた注文をさまざまな企業からいただいています。福島県、大熊町の隣にある双葉町では、研究開発センターを建設中です。このセンターで、さまざまなロボット開発やフィジカルAIの研究開発を進めていく予定です。
さらに、将来的には原子力発電所の再稼働に伴い、定期検査のストックビジネスが収益化されていくと見込んでいます。
再生可能エネルギー分野では、7メガワット規模のバイオマス発電所を建設中で、こちらは東京メトロがすべて再生可能エネルギーとして購入することが決定しています。2年から3年後に発電所が完成し、O&Mも弊社が行う予定です。また、陸上風力発電所のメンテナンス事業もエリアを拡大していきます。
さらにその先には、小型原子炉であるSMRに関する事業も視野に入れています。こちらは、IHIからの出資を受け、社員がIHIに出向いて検査機器の開発を共同で進めています。日本で認可が下りた時は、SMRの建設にも携われるようになると考えています。
そして現在、波力による発電装置を開発中です。今年2月に海上で試験を行い、発電が可能であることの確証を得ました。今後、数年かけて実用化を目指し、まだ誰も手掛けていない波力発電を大きなエンジンにしていく考えです。
まとめると、廃炉分野技術の水平展開による他電力会社の廃炉への応用、再稼働する他の発電所におけるストックビジネスの増加、将来におけるSMRへの関与、再生可能エネルギーとしてのバイオマス発電所を軸にした開発、陸上風力発電のメンテナンスの差別化を進めていきます。加えて、波力発電が成功すると、大きなエンジンの1つになると考えています。
このように、将来的には右肩上がりの成長をさらに加速していけるよう、努力していきます。以上が、弊社の成り立ちから将来についてのご説明です。
質疑応答:研究開発センターの建設の狙いと廃炉ビジネスの拡大について
質問者:双葉町における研究開発センターの建設は、国内での廃炉ビジネスの将来的な拡大への期待が込められているのではないかと考えています。あらためて、建設の狙いと廃炉ビジネス拡大への期待についてお聞かせください。
佐藤:廃炉は、「こうしなければいけない」といった工法が決まっているわけではありません。その都度考えながら、対応するロボットや工法を決定する必要があります。それらを双葉町の研究開発センターで試作し、検証を経てから現場に導入していきます。
近くには「東日本大震災・原子力災害伝承館」があり、学生をはじめさまざまな方が多く見学に訪れます。そのため、廃炉で使用するロボットを展示し、操作を体験できる場として、将来の技術者に興味を持ってもらうことも狙いとしています。
また現在、JRから新幹線の清掃についてのお話もあり、廃炉技術を応用して開発を進めているところです。そのようなことも含め、廃炉をベースとしながら他への応用も視野に入れて開発を進めていきたいと考えています。
質問者:現在、浜通りでは福島イノベーション・コースト構想などにより、廃炉やロボット技術の産業集積を目指しています。そのような背景を踏まえ、研究開発センターを通じ、他分野へ応用可能なロボット技術や自動化技術の開発を目指しているという認識でよろしいでしょうか?
佐藤:おっしゃるとおりです。
質疑応答:SMRの戦略について
質問者:SMRについてです。量産化や実装が進むと、メンテナンスが従来の大型のものに比べて取り回しが良くなると考えています。そのため、数を売って案件を獲得していくのではないかというイメージを持っていますが、どのような戦略を考えていますか?
佐藤:弊社では炉の製造は行わず、IHIが行います。IHIは弊社にも出資しており、IHIが受注した案件において必要な定期検査を自動化するための開発を共同で行っています。具体的にどの部分を重点的に点検する必要があるのかについてIHIから教えてもらいながら、「ここは自動化装置を作れる」といった議論を重ね、現在一緒に開発を進めています。
質疑応答:尾去沢鉱山のデータセンターの用途について
質問者:秋田県鹿角市の尾去沢鉱山で建設が進められているデータセンターは、あくまでBCP向けを想定しているのでしょうか? それとも、電源の問題は別として、例えばAIデータセンターのようなものへ発展する可能性があるのでしょうか?
佐藤:現時点ではBCPをメインに考えています。
質疑応答:事業拡大と株主対応のバランスについて
質問者:今までは廃炉など必要に駆られて事業を拡大してきた部分もあったと思いますが、上場すると株主の目もあり、稼ぐ必要性が出てくるかと思います。そのバランスについてはどのように考えていますか?
佐藤:弊社の社是は「利他」で、「人のために尽くす」という理念を掲げています。そのため、大事なお金を投じてくださる株主のみなさまを裏切ることはできませんし、喜んでいただきたいと全社員が考えています。
利益を生み出すためには、広報活動を行い、社内経費を最小限に抑えることが必要です。また、私は売上高を「お役立ち高」と捉えており、廃炉や地域に対する貢献が、結果として弊社の売上に反映されると思っています。
「利益=貢献度」と考えていますので、社内の無駄をなるべく省き、経営のスリム化や自動化を進めていきます。さらに、管理部門においてはAIを活用し、従業員が別のところでも活躍できる環境を整えたいと考えています。8月以降は、そのような改革やチャレンジをさっそく進めていく予定です。
質疑応答:組織規模の拡大とガバナンスの強化について
質問者:会社の規模は大きいほうではないと思いますが、これからどのくらい規模とガバナンスを強化していく予定ですか?
佐藤:全国の原子力発電所の廃炉を含めたメンテナンスや再生可能エネルギーの展開を進めていくために、規模はそれなりに大きくなっていくと思います。それに応じてガバナンスやコンプライアンスを強化し、これを契機にさらに上を目指していきたいと考えています。
質問者:廃炉・原子力事業は息が長い事業だと思いますが、今後の課題や当面のスケジュール感はどのように考えていますか?
佐藤:規模を大きくするためには、全国的にそれなりの体制を整えなければなりません。そのため、これからそのような組織を構築し、安全や品質管理をしっかりと保てる体制を整え、全国展開の地盤を固めることが必要です。5年後には安定した体制を整え、10年後にはコンプスで比較された会社と同規模に成長したいと考えています。
質疑応答:投資家からの期待と課題について
質問者:今回の上場にあたってさまざまな投資家と対面されたと思いますが、投資家からは事業面でどのような期待を感じましたか? また、課題を指摘される場面もあったかと思いますので、期待と課題について投資家がどのような印象を持っていたのかをお聞かせください。
佐藤:投資家から指摘されたのは、廃炉の成長性についてです。我々のように内部で直接携わっている者からすると、取り組むべきことはたくさんあり、十分な成長性があると思っていますが、それを具体的に示すことが難しい部分があります。
実際の予算の枠も、我々にとっては非常に大きな金額であるものの、現段階では弊社が担っているのは全体のわずか2パーセントから3パーセント程度に過ぎません。この比率を少しでも上げることができれば、弊社にとっては非常に大きなお金になっていくと考えています。
まだまだやることが山積している中、現時点ではほんの一部しか取り組めていませんが、これを進めていくことで、現状の2パーセント、3パーセントから10パーセント程度まで引き上げることが可能だと考えています。
ただし、それを具体的に示すことが難しく、事業の内容も複雑であり、また詳細をお話しできない部分もあったため、苦労しました。投資家からはそのような点が見えにくいという声が多かったと思います。
質疑応答:今後資本関係が発生する見通しについて
質問者:上場前にIHIが資本参加したとのことですが、今回の上場にあわせて、クラフティアも親引けというかたちで株式を保有しています。大手企業や外部企業との資本関係がこれからも起こるかどうかを教えてください。また、どのような投資家を株主として期待していますか?
佐藤:IHIは非常に多様な技術を有しています。弊社の現場力によって作業的な課題はロボティクスやフィジカルな手法で解決していきますが、エンジニアリング的な課題に関しては弊社だけでは追いつかない部分があります。そこで、IHIのエンジニアリング力をお借りし、廃炉ビジネスの加速化をより進めるべく協業を行うことになりました。
親引け先であるクラフティアについてもご説明します。上場前に九州電力の子会社の方が弊社を視察されました。九州電力も今後クリエイティブな改革を進める必要があるとのことで、「技術交流を行いましょう」という話が出ていた中で、間を取り持ってくれたのがクラフティアです。
今回、クラフティアも九州地方との技術的な交流をさらに深め、将来的に九州電力との取り組みも考慮したいということで、親引け先となっていただきました。その他の電力会社においても親引けの話がありましたが、ルールが複雑で期間も足りず、実現には至りませんでした。ただし今後、上場後に検討していただける可能性があると考えています。
質疑応答:株主構成について
質問者:今回、みずほ証券を中心に株式の割当先の準備を行われたとのことですが、機関投資家や個人投資家のほか、一般的には地元の株主や上場企業が割当先になると思います。
一方で、海外株主が株式を取得されることもあると思いますが、そのような意味で今後の株主構成をどのように考えていますか?
佐藤:株主構成は先ほどお伝えした会社を中心としながら、海外についてはまだ先になると考えています。
神谷均氏:取締役CFOの神谷です。まずは、国内の投資家との関係をしっかりと構築することに注力したいと考えています。ただし、SMRが海外で主流になりつつある状況を踏まえ、将来的には弊社も海外展開を視野に入れる必要があると認識しています。この先、そのようなステージに向けて動き出したいと考えています。
質疑応答:今期の配当と株主還元方針について

質問者:2026年7月期は36期目になるかと思いますが、1株当たり20円の配当を予定されています。これは初配でしょうか? それとも過去に配当を行っていたことがあるのでしょうか?
佐藤:配当は今回が初めてです。最低でも20円とすることを考えています。
質問者:今後の株主還元についてはどのように考えていますか?
佐藤:利益が出れば、それに連動して配当を増やしたいと思っています。ただし、一度増やすと業績が落ちた時に下げにくい部分もありますので、記念配当のようなかたちで、利益が出た分を少しでも還元していきたいと考えています。
質疑応答:原子力発電所再稼働における廃炉ビジネスの競争優位性と受注拡大の意向について
質問者:廃炉ビジネスは、福島第一原子力発電所での実績やノウハウが強みになるという点は理解しました。原子力発電所の再稼働の流れの中で、現在、島根原子力発電所などいくつかを受注していると思います。再稼働する原子力発電所についてさらなる受注拡大の余地があるかを教えてください。
佐藤:原子力発電所にはPWRとBWRの2種類があり、弊社は主にPWRのメンテナンスを行っています。東京電力の福島第一原子力発電所の原子炉はBWRです。関西電力などが運用するPWRとはタイプが異なり、事故を起こしたタイプのため長らく再稼働していませんでした。
しかし、いよいよ再稼働が始まり、弊社はBWRの特殊なコアの原子炉に付随する機器を得意としています。この15年間、動いていなかったこともあり、その機器の対応を行っていた企業の中には事業を撤退したところも多くあります。弊社ではそのスキルを持つメンバーが今も在籍しています。
島根原子力発電所を含め、再稼働に伴い原子炉の点検業務に取り組み、この間完了したところです。そのような中で、弊社は他社では対応が難しい特殊な領域については、必ず注文が来ると考えています。
