■今後の見通し
1. 2027年6月期の業績見通し
一正蒲鉾<2904>の2027年6月期の連結業績は、売上高38,600百万円(前期比8.6%増)、営業利益800百万円(同30.7%増)、経常利益800百万円(同51.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益480百万円(同47.1%増)と、増収かつ大幅な増益を見込んでいる。営業利益率も前期の1.7%から2.1%へ0.4ポイント改善する計画だ。主力の水産練製品・惣菜事業における価格改定による販売単価の上昇と主力商品の拡販に加え、前期まで損失が続いたきのこ事業の利益転換が増益に寄与する見通しとなる。一方、主原料であるすり身価格の大幅な上昇や鶏卵価格の高止まり、中東情勢等を背景とした包装資材・エネルギー価格の上昇、物流費や人件費の増加などを織り込んでおり、利益回復は限定的なものとなる見通しだ。
原材料面では、とりわけ北米産スケソウダラすり身の動向に注意を要する。欧米を中心とする白身魚フィレ需要の強まりを背景にフィレ向けの生産割合が上昇し、すり身の供給が逼迫していることなどから、同社は2026年Bシーズン以降のすり身価格について大幅な上昇を見込んでいる。また、鶏卵価格も高止まりを想定しているほか、ナフサ価格上昇による包装資材、LPG・重油などのエネルギー、人手不足や燃料高による物流コストも上昇を見込む。さらに、人的資本経営の強化に伴う人財育成や処遇改善についても、中長期的な成長に必要な投資として継続する方針である。これらを織り込んだ営業利益の増減要因では、2026年9月から実施する価格改定による効果を11.8億円、販促強化を通じた主力商品の販売数量増加による効果を18.7億円、生産性向上や効率化・省人化等によるコストダウン効果を2.2億円と見込んでいる。一方、すり身の購入単価上昇や使用量増加、副材料・補助材料の高騰による原価コストアップを25.1億円、人件費・物流費・販促費等の増加による販売費及び一般管理費の増加を5.6億円見込む。価格改定と数量拡大による増益効果は大きいものの、原価上昇の影響も前期の17.2億円から一段と拡大する前提となっており、引き続き原材料価格の動向が業績を左右する構図が続く。
なお、2027年6月期は第三次中期経営計画「深化の5年」の初年度にあたり、2027年6月期から2029年6月期までのPhase1「成長基盤創りの3年」がスタートすることになる。まず収益構造改革と営業キャッシュ・フロー創出を優先し、そこで得た原資を海外事業、新規事業、M&A等のインオーガニック成長へ振り向ける方針である。海外では、グローバルトレード室を軸に国内工場からの魚肉たんぱく食品の輸出を強化するとともに、インドネシアのIKFやタイのSmile Heart Foods Co., Ltd.などとのネットワークを活用し、海外拠点の収益性改善と販売拡大を進める。2027年6月期は厳しいコスト環境下で既存事業の収益構造改革を着実に進めながら、中長期的な成長領域への投資余力をいかに確保できるかが焦点となるだろう。
2. 事業セグメント別の見通し
(1) 水産練製品・惣菜事業
売上高33,800百万円(前期比7.9%増)、セグメント利益620百万円(同17.5%減)を見込む。2026年9月1日納品分から価格改定(5%~15%程度)を実施し、販売単価の引き上げを図る一方、消費者の節約志向による買い控えを抑えるため販促を強化し、販売数量の維持・拡大を目指す。販売戦略では、価格訴求商品と高付加価値商品の2軸で需要を取り込む方針で、主力NB商品の拡販に加え、物価高に対応した汎用性の高い「はんぺん」類や、魚肉たんぱくを豊富に含む値ごろ感のある「ちくわ」類の新商品を投入する。また、「魚肉たんぱく+ONE」の考え方に基づく提案強化、たとえば「お椀で食べるおでん」の品ぞろえ拡充や「カリッこ」シリーズの拡販などを通じた新たな購買層の開拓も重要なポイントとなるだろう。一方、損益面では引き続き厳しい環境を想定している。北米産スケソウダラすり身で2026年Bシーズンから大幅な価格上昇を見込むことを中心に、各種コスト増などが収益を圧迫する見通しである。このため、価格改定と数量拡大によって大幅な増収を計画する一方、セグメント利益率は前期の2.4%から1.8%へ低下する見込みである。これに対し、生産性向上や効率化・省人化などのコストダウンを継続するとともに、中期的には全国の生産・物流拠点の最適化を進め、収益基盤の強靭化を図る方針だ。
海外事業は第三次中期経営計画における成長領域の1つに位置付けられており、2027年6月期以降は「グローバルパートナー戦略」の下で事業基盤の再構築と拡大を進める。特に、IKFについては2026年6月期にのれんの減損損失を計上するなど、収益性の改善が急務となっている。売上回復に向けて既存取引先への拡販、過去に取引実績のある顧客との再交渉、新規顧客開拓を進めるほか、IKFのカニかまとSmile Heart FoodsのOEM製品を組み合わせた提案によって商品ラインナップを拡充する。また、生産設備や品質管理体制の向上、市場ニーズを踏まえた商品開発にも取り組む。
(2) きのこ事業
売上高4,300百万円(前期比10.4%増)、セグメント利益70百万円を見込み、前期の247百万円のセグメント損失から利益転換を計画する。販売面では、まいたけの健康機能に関する訴求を強化するとともに、まいたけ発売30周年キャンペーンによる需要喚起、有機まいたけの拡販、業務用・加工食品分野への取り組みを強化する。また、販売単価の引き上げを進める一方、ビタミンDを強化した商品や使い勝手の良い株割パック、有機まいたけ、簡易包装商品などの差別化商品を提案し、価格競争に依存しない商品構成への転換を進める。生産面では、猛暑下でも安定した栽培を継続し、需要期における販売機会のロスを抑制するほか、省資源化・省力化によるコストダウンやエネルギーマネジメントを徹底する。2026年6月期は包装部門の合理化・省人化や生産効率向上を進めたものの、エネルギー・人件費・物流費等の上昇によって損失改善は限定的であった。このため、2027年6月期は販売価格・商品ミックスの改善とコスト構造改革を同時に進めることで、収益構造そのものの転換を目指す。加えて、中期的には菌類研究や知的財産を活用した新たな収益源の創出にも取り組む方針であり、まずは第三次中期経営計画の初年度に利益化を実現できるかが重要な焦点となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 若杉 孝)
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