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ビッグモーター騒動ほか不正続出「損保大手3社」株価下落は買いか?長期投資家が見るべきポイント=佐々木悠

いま難しい局面に立たされている業界があります。それは「損害保険」業界です。この業界最大のリスクは大規模な自然災害の発生です。しかしそれに加えて、コンプライアンスのリスクを考えなくてはいけないニュースが出てきています。カルテルとビッグモーター事件で揺れる損害保険業界にどのような影響があるのか、なぜ起こったのか。投資家目線で考えてみましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

カルテルの疑惑

まずは1つ目の不祥事、企業向け保険の「カルテル」疑惑です。

23年6月19日、国内損害保険会社の大手3社(東京海上HD、MS&AD HD、SOMPO HD)が、私鉄グループの東急と仙台国際空港に対して保険料を割高に請求するよう、相互に連絡を取り合い、火災保険料を割高に請求している可能性があることが報道されました。

本来、企業が支払う保険料は、過去の支払い保険金などの履歴から総合的に判断されるものです。例えば東急は、過去の保険金支払いは相対的に少なく、優良企業とされるはずでした。

しかし、大手3社から提示されたものは、過去の実績からはかけ離れた割高な保険料、かつ3社が同じような保険料でした。

これに違和感を持った東急が、不適切な行為の有無を東京海上に確認したことで今回の不祥事が発覚しました。各損保の東急を担当する営業マン同士が、スマートフォンのメッセージなどで情報を共有し合い、事前に保険料の水準を調整していたカルテルの疑いがあるようです。

この行為は独禁法違反の優越的地位の濫用、その他保険業法違反に当たる可能性があると指摘されています。

23年8月7日から公正取引委員会の任意調査が始まり、少しづつその全貌が明らかになるでしょう。

<原因は業界の寡占>

なぜこのようなことが起きたのでしょうか?

背景には、寡占状態の損害保険業界の特性が関係していると考えられます。

企業向け保険のシェアは、大手3社で9割を占めています。

その中でも特に、大手企業の保険受け入れは保険金支払いが巨額になることがあるため、複数の保険会社で分担して保険を受けることが一般的です。

その際、中規模以下の保険会社では保険金支払いのリスクを負えず、自然と大手損保に保険加入をを頼まざる得ない状況になるのです。本来であれば、損保側は少しでも契約を伸ばそうと、保険料の値下げ競争などを仕掛けるはずです。

しかし、今回のように、大手3社に「東急さんの保険料はこれくらいで」と手を結ばれては、会社側に選択肢はありません。このような寡占状態が、今回の不祥事の原因の1つだと考えます。

これが1つ目の不祥事、損保業界の全体に広がるカルテル疑惑です。

Next: 一般ユーザーにも不利益?ビッグモーターと損保ジャパンの癒着

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