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ビッグモーター騒動ほか不正続出「損保大手3社」株価下落は買いか?長期投資家が見るべきポイント=佐々木悠

<最終的にあなたの自動車保険に影響が…>

保険業界は「収支相等の原則」と言って、保険料の総額と予定運用益の総額が、保険金の支払い総額と予定経費の合計に一致するように保険料が算定されています。

つまり「入るお金と出るお金が一緒になる保険料設定」という原則があります。

しかし、ビッグモーターのように意図的に保険金を多く支払う事案があると、当然我々が支払う保険料の額も、余分に高くなるのです。

本当に闇が深いのは、この事案はビッグモーターと保険会社の両方にとってメリットがあり、皺寄せはすべて消費者にくる点です。ビッグモーターは保険金収入によって売上が上がり、保険会社にとっては利益額がかさ増しされます。その増加分を支払うのは我々消費者です。

現在は国土交通省や金融庁の調査が入っている段階になっていますが、この事案は損保会社の信用問題なのです。

これがビッグモーター騒動と保険会社(主に損保ジャパン)の関係性なのです。

業績に与える影響はまちまち

さて、一度冷静に投資家目線で損害保険会社に与える影響を考えましょう。

まず、1つ目のカルテル行為ですが、今回が初めてではありません。1994年にもカルテル行為があったとして、各社に20億円前後の支払い請求がありました。

一方で、23年3月31日時点の各社の現金保有状況は以下となっています。

東京海上:8,700億円
MS&AD:2兆7,000億円
SOMPO:1兆2,500億円

従って、財務状況から考えると、そこまで大きなインパクトを与えるものではないと考えられます。

ビッグモーターについては、損保各社が水増し請求分を返金するよう請求しています。そして不要な修理のため事故認定され、保険料が割高になった被保険者に対しては、適切な保険料に戻すための手続きを行う予定です。従って返金もあれば、保険料の引き下げもあり、業績に与える影響はまちまちです。

しかし、自動車保険の代理店であったビッグモーターと契約が終了するため、今後の自動車保険契約数についてマイナスの影響を与えることも考えられます。

各社はこの騒動に対してなんと言っているのでしょうか?

<東京海上>

過去3年間でビックモーターに関わった全ての事案について顧客に連絡する。全容の解明には一定の時間を要するため、安心して車に乗れるよう様々な策を検討している。

<三井住友海上>

過去5年間のビックモーターで行った修理に関して調査を開始している。不正請求が認められた顧客に対しては正しい支払い保険金の案内を行い、自動車保険の等級の訂正などを案内する。

<SOMPO>

過去3年間のビッグモーターで行っていた修理に関して調査している。自動車保険の等級の訂正と返金手続きを行う。

損害保険会社はPBRの1倍割れの銘柄として、割安感から株価は上がっていましたが、ビッグモーター騒動によってやや下落しました。

出典:Yahoo!ファイナンスより作成

出典:Yahoo!ファイナンスより作成

しかし、本当の問題は損保業界の信用問題です。金融機関が成立する前提の、コンプライアンスリスクが高まっている、と認識するべきです。

Next: 今から損保に投資するのはアリ?ナシ?割安感が出ているが…

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