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ギックス Research Memo(3):AIの間接提供と直接提供を組み合わせた独自の事業モデルでクライアントを支援

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■事業概要

ギックス<9219>は2026年6月期より、サービス区分を従来の「個別課題解決」「共通課題解決」から、「Business Innovation(ビジネスイノベーション)」と「System Innovation(システムイノベーション)」の2区分に変更した。加えて、AIによる価値提供の方法を「AIの間接提供(同社コンサルタント・エンジニア自身がAIを活用し生産性・付加価値を高める提供形態)」と「AIの直接提供(AIを業務・システムに組み込み、クライアントが直接使える仕組みとして提供する形態)」の2つに分類しており、「Business Innovation/System Innovation」と「AIの間接提供/直接提供」を掛け合わせた4つのサービス領域を、事業の基本フレームとしている。両者を支える共通基盤として、プロジェクトを通じて蓄積してきたAI・データアセット(アルゴリズム、コンポーネント、業務知識、判断ロジック等)を位置付け、案件間でのアセット再利用によって生産性向上と利益率改善の両立を図っている。

これら4つのサービス領域は、(1) AIを活用して生産性を高める高付加価値な人月ビジネス、(2) 蓄積したAI・データアセットを再利用して継続的にサービス提供する仕組み型モデル、(3) 顧客基盤を持つパートナー企業と協業してスケールさせる協業・協働モデル、という3つの収益モデルを通じて事業化されている。人員数の増加のみに依存しない、再現性のある利益成長の実現を目指す方針である。

1. Business Innovation
Business Innovationは、データインフォームドな判断を業務のどこに組み込み、その判断に基づいてどのような施策を行うべきかを明確化する事業領域である。なかでも、クライアント企業の自社顧客(エンドユーザー)に対する「顧客理解」を促進することによる業績改善と企業価値向上に注力しており、データに基づく問いの設定から仮説構築・施策立案・実行までを一気通貫で伴走支援する。

この領域は、「AIで強化されたコンサルタントやエンジニアが企業の事業成長を支援する(AIの間接提供)」側面と、「『マイグル(Mygru)』のようにアセット・AIを組み込んだプロダクトで顧客企業の事業そのものを変える(AIの直接提供)」側面の両方を含んでいる。同社が創業当初から培ってきた、全件・全量・全粒度のデータを用いた分析、網羅的な事象の可視化、機械学習・数理最適化等の分析手法は、引き続きBusiness Innovation内で提供される。2026年6月期は、幅広い業界でデータ・AI案件の獲得が進展し、PoC(概念実証)や分析支援にとどまらず、データ基盤構築、業務アプリケーション開発、ダッシュボード構築、運用設計など実装フェーズまで踏み込む案件が増加した。

プロダクト面では、“データ・AI×ゲーミフィケーション”によるプラットフォーム「マイグル(Mygru)」を中心に、LINEヤフー<4689>との協業によるエンターテインメント領域での展開が進んだ。LINE公式アカウントを活用した各種キャンペーンでの採用が拡大しており、特定キャンペーンの単発受注にとどまらず、大きなユーザー基盤を持つパートナーと協働してエンタメ領域で横展開できる「型」を作り始めている点に意味があるとしている。今後はこの知見を、「ロイヤルティ・マイグル」のようなストック型サービスへとつなげていく方針だ。

2. System Innovation
System Innovationは、データインフォームドな行動様式をクライアント企業の日々の業務に組み込むために必要な分析基盤・データ基盤を整備・構築する事業領域である。同社がこれまで構築してきたアセットを活用して確立したフレームワーク「ADS(Adaptable Data Systems)」を土台とし、ビジネス環境の変化に柔軟に対応可能な仕組みを、クライアント企業内の基幹系システムや施策実行システムと柔軟につなぎ込みながら構築・提供する。

この領域も、「AIを業務に組み込むための設計・企画を支援する(AIの間接提供)」側面と、「『AIP』のように、AIを搭載した仕組みそのものを構築・提供する(AIの直接提供)」側面から成る。2026年6月期には、業務システムにおけるAI組み込みを迅速に実現する「AI wrapping」、企業内のAI活用基盤を構築する「AIP」、データと業務知識・意味を結び付ける「セマンティックレイヤー構築支援」といった新サービス群を拡充し、データ分析支援から、AIを活用したシステム変革支援へとサービス領域を拡大している。単なるAIツールの提供にとどまらず、ビジネス課題の特定からデータ分析、業務設計、システム実装、運用までを一気通貫で支援できる点は、同社大きな強みである。

3. 市場環境
企業におけるデータ活用やAI導入の機運は急速に高まっている。総務省「令和7年版情報通信白書」によれば、日本国内のAIシステム市場規模(支出額)は2024年に1兆3,412億円となり、前年比56.5%増加した。また、2029年には4兆1,873億円まで拡大すると予測されている。さらに、「令和8年版情報通信白書」では、世界のAI市場規模が2025年の2,442億ドルから2031年には1兆54億ドルまで成長するとの見通しが示されており、生成AIを含むAI関連市場は引き続き高い成長が見込まれる。

企業側の受容状況についても着実な進展が見られる。総務省の調査によれば、生成AIについて「積極的に活用する方針」または「活用領域を限定して利用する方針」を定めている日本企業の割合は2025年度に68.9%となり、前年度の49.7%から大幅に上昇している。さらに中小企業の58.1%が同方針を定めており、AI活用に向けた具体的な業務設計や実装への要求が高まっている。

このような環境下において、同社が掲げる「あらゆる判断を、Data-Informedに。」及び「クライアントを、AI-Informedに。」という思想は、市場ニーズとの親和性が一段と高まっていると考えられる。同社は、企業活動における判断を「経営判断」「業務判断」「個人判断」に分類し、特に企業現場で日常的に行われる「業務判断」の高度化に大きな市場機会があると捉えている。現場で繰り返される膨大な業務判断は、個々の改善効果は小さく見えるものの、組織全体では生産性や収益性に大きな影響を与える領域であり、AIやデータ活用による改善余地も大きい。

同社はこうした課題に対し、AIを活用してコンサルタント・エンジニア自身の生産性や提供価値を高める「AIの間接提供」と、AIを顧客の業務やシステムへ組み込む「AIの直接提供」の両面から支援を行っている。さらに、プロジェクトを通じて蓄積したAI・データアセットを活用することで、データ分析、業務設計、システム実装、運用までを一気通貫で提供できる点を強みとしている。

企業のAI活用がPoC段階から実運用段階へ移行するなか、単なるAIツールの導入ではなく、意思決定や業務プロセスそのものを変革する需要は今後さらに拡大すると見込まれる。特に、AI活用方針を掲げながらも実装・定着に課題を抱える企業が多い現状は、同社が推進するAI-Informed経営支援や業務変革支援の需要拡大を後押しする要因になると考えられる。加えて、中小企業を含めた幅広い企業層においてAI活用が本格化する余地が残されていることから、新規顧客の開拓及び既存顧客における支援領域の拡大の双方において、中長期的な成長機会が存在すると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

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