■中長期の成長戦略
1. 目指す事業ポートフォリオと中期経営計画
グリッド<5582>は、社会インフラ分野における計画立案・意思決定を高度化する「次世代の意思決定基盤」となることを目指している。その実現に向け、AI事業とインフラアセット事業を成長の両輪とし、持続的な企業価値向上を図る方針である。AI事業では、電力ドメインに加えて製造・運輸や都市・交通分野を拡大し、収益源の多様化を進める。一方、インフラアセット事業は蓄電所開発を中心に成長を加速させ、第2の収益基盤として育成する考えである。
この戦略の推進により、2029年6月期における事業構成のイメージとして、電力40%(2026年6月期45.1%)、製造・運輸20%(同15.3%)、都市・交通20%(同12.9%)、インフラアセット20%(同24.2%)を掲げており、よりバランスの取れた事業ポートフォリオの構築を目指している。
なお、同社は現在、今後3年間を対象とする中期経営計画を策定中である。蓄電所開発を中心に複数の成長シナリオを検討しており、資本効率や企業価値向上の観点から各シナリオの確度を見極めたうえで数値目標を公表する方針である。
2. 事業環境
同社を取り巻く事業環境は、中長期的に良好な状況が続くと考えられる。背景には、データセンターの増加に伴う電力需要の拡大、社会インフラ設備の老朽化、労働力不足、生成AIの普及という4つのマクロトレンドがある。
AI事業では、同社が注力する社会インフラ分野で、脱炭素化や再生可能エネルギーの普及、設備の老朽化、安全性・安定供給への要求の高まりを背景に、計画業務が複雑化している。一方、少子高齢化に伴う人材不足が深刻化するなか、生成AIの普及によって業務自動化への関心も高まっている。このため、限られた設備や人員を有効活用し、計画立案や意思決定を高度化するAI・数理最適化技術への需要は、今後も拡大すると見られる。
インフラアセット事業では、生成AIの普及・高度化を背景に、データセンターや半導体工場の新設・増設が進んでいる。これに伴い、国内の需要電力量は2025年度の8,034億kWhから2035年度には8,461億kWhへ増加すると予測されており、同社では今後約430億kWhの追加的な電力需要が発生すると試算している※。一方、政府は第7次エネルギー基本計画において、2040年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を4~5割程度へ引き上げる方針を示しており、再生可能エネルギーの導入拡大が見込まれる。今後は電力需要の増加と再生可能エネルギーの普及が同時に進むことで、電力系統の安定運用に必要な調整力の重要性が一段と高まると考えられる。
※ 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」を基に同社算出。
太陽光発電や風力発電は天候によって出力が変動するため、電力需給を安定させる調整力が不可欠となる。余剰電力を蓄え、需要が高まる時間帯に供給する蓄電池の重要性は一段と高まっており、系統用蓄電所の開発需要も拡大基調で推移している。同社は、AIによる需給予測・計画最適化と蓄電池を組み合わせることで、限られた設備、人員、エネルギーを有効に活用し、社会インフラの供給力拡大を支援する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)
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