「サイバーテロで人が死ぬ」ということを理解できない日本の惨状

 

ちなみに誰がやったのかもっとも疑われているのが北朝鮮です。北朝鮮のハッカー集団として知られる「ラザルス」の関与した形跡があると報じられています。

この話しをレクチャーしたとき、眉に唾する人がいましたが、彼の主張は「北朝鮮にそんなことができるの?」。

彼の北朝鮮の印象は「後進国」で、特に拉致問題が明らかになった当時の平壌のイメージが強く、「パソコン室」に並ぶ旧型の機械を後生大事に使う北朝鮮市民を思い出していたのです。

昨年末現在、北朝鮮は166カ国と国交を結び、むしろ国交を結んでいない国の方が少数です。そしてコンピュータを学ぶのは、必ずしも母国である必要がないことを、インド人が体現しています。

マイクロソフトのCEO サティア・ナデラ氏は《インド・ハイデラバードでテルグ語を母国語にする家庭に生まれ(wiki)》で、ざっくりといえば地元の大学を出た後、渡米していますし、グーグルのCEO サンダー・ピチャイ氏もインド生まれ。

トランプ大統領が移民停止(正しくは制限、あるいは適切な管理)を掲げたとき、IT業界が反発したのは、インド人や中国系が多く、むしろ、彼らがいなくなると仕事が回らなくなるからで、つまりは人権とか移民国家とかの理想でんでんではなく利益のため。

古くからインドは米国に人を送り、そこで学ばせ、一定の人材が帰国して、国内のIT産業を興したのです。時差を利用することで、24時間レベルの開発作業環境を実現し、両者は良好な関係を構築しています。

北朝鮮に話しを戻せば、宗主国というか最大の支援国である中国のITはトップクラスで、なによりサイバー攻撃に関しては米国が敵対視するほどのレベルです。

また、金正男氏が暗殺されたマレーシアにしても、数多くの日本企業が進出しており、各種インフラは整備されており、ネット環境とパソコンさえあれば、いつでもどこでも可能となるのがサイバーアタックです。テロに似ていることも、サイバー戦における防御の難しさです。

以下は3月22日の産経新聞(Web)より。

米ニューヨーク連邦準備銀行が管理するバングラデシュ中央銀行の口座が昨年2月にハッカー攻撃を受け、預金8100万ドル(約90億円)が盗まれた事件で、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は22日、米司法当局が北朝鮮の指示による犯行だった疑いがあるとみて捜査していると報じた。

北朝鮮が90億円窃盗指示か 米でバングラ中銀がハッカー攻撃の被害

この数年、核やミサイル開発の速度が上がった理由を、こうしたサイバー攻撃によるこそ泥」で得たキャッシュにあるという指摘もあります。

確かに経済制裁で締め付け、いくら国民に我慢をさせても、そもそもの実入りがなければ、資材も替えず、人材も集められません。

私が追い掛けた例では、中国のとある省からの犯罪でしたが、フィッシング詐欺などの小口だとしても、塵も積もれば山となるわけで、しかも元手はほぼ不要で、技術力と忠誠心(熱意)があれば、巨万の富を集められるのがサイバー犯罪です。

こうした状況証拠がありながら、国際的な規制の声がでないのは、繰り返しになりますが、各国ともにネット空間での武器を欲しているから。陸海空に宇宙、そして第5の戦場がネットです。

print
いま読まれてます

  • 「サイバーテロで人が死ぬ」ということを理解できない日本の惨状
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け