終戦時と同じ。コロナ禍と地方衰退に襲われる「統治の空白」ニッポン

 

2つ目は、もう少し詳しく見てゆくと個々の局面で、「誤った世論の感情論」とは一切喧嘩しないという「統治からの逃亡」が見られるということです。例えば、水際対策の問題ですが、水際対策というのは国内が感染ゼロか、感染が少ない状況である一方で、感染拡大が国外で広がっている場合に「島国の特質を生かした(某サイトのコメント欄特有の流行語)」国境をコントロールして「対策の時間を稼ぐ」ものです。

ですが、現状のように「主要国の中で日本の蔓延が最悪」というタイミングでも、ダラダラと水際対策は継続されています。例えば、アメリカ人の場合は、渡航目的を証明し、日本人との家族関係などは戸籍謄本で証明しないとビザが出ないし、ビザがないと渡航できないという奇怪なことになっています。アメリカはまだ大目に見ていますが、一部先進国の入管では怒っていて報復的な措置もやっているようです。

どうして、このように無意味な対策をダラダラと続けて、国益と国の信用を毀損しているのかというと、それは政府が感情論を恐れているからだと思います。つまり、「コロナは外国から入ってくるのが怖い」「コロナが流行しているのは大変だ」「流行して大変な時に外国人を入れるのは怖い」「国境開けるのはコロナが収束してから出ないと安心できない」という「理屈でない感情」というのがあるとしたら、「紳士は感情論とは喧嘩しない」という岸田哲学でやっているのだと思います。

これは哲学でも何でもなく、統治の放棄だと思います。例えば、「子を持つ親の直感的なワクチン忌避感情とは喧嘩しない」というのも同じで、過去に先進国中で日本だけ感染症を蔓延させてきたのもこの敗北主義であり、今回の「第7波」が相当にひどくなったのも、同じことだと思います。

百歩譲って選挙前ならともかく、当面は国政選挙はないのですから、勇気を持って丁寧に説明すればいいのに、それをしないというのは、政治姿勢として姑息であり、統治として空白を生じる行為だと思うのです。

ちなみに、水際対策の中では、これまでは日本から外国に「弾丸出張」をする際には、日本出国前のPCR検査結果が陰性でも適用できないというルールがありました。つまり日本で陰性証明があり、その後72時間以内に出張先の国に入国して帰国した場合には、その「日本での検査が陰性」というのは無効とされていました。

これは、「出張先の国に入国した際に感染する危険」を考えてのことですが、何と、この月曜日(15日)から、厚労省はこの「72時間ルール」を緩和したのです。つまり、弾丸出張の場合は、日本で検査して陰性なら、行って帰ってきた場合にその日本の検査結果で入国させるというのです。

厚労省の一次情報(新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(日本出国前に日本で取得した検査証明書の扱いについて)では、

日本への帰国・入国に際する出国前検査証明書について、これまでは外国で取得した検査証明書のみ有効としてきましたが、令和4年8月15日午前0時(日本時間)日本到着以降は、日本から外国へ短期渡航する者が、日本出国前に日本で検査証明書を取得し、且つその検査証明書が外国を出国する前72時間以内に取得(検体採取)されたものである場合(※)、日本への帰国(再入国)に当たり有効な検査証明書として取り扱います。

というのです。こうなると、陰性証明書の提出そのものの意義が怪しくなる訳です。世論の感情云々ということよりも、自分の役所の面子を守るためにやっているのかもしれませんが、おかしな話です。このレベルの「おかしさ」というのが、平気で中央官庁の取り扱い規則として公表されて運用されるというのも、過去には余り見たことはないように思います。

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