自民党との「対話」と「癒着」の違いを理解できない芳野氏
賃金体系多様化の中での労組による賃金アップの一律要求について聞かれると、「連合は数字を示しているだけで、要求は加盟組合が交渉で決める。大手を中心に成果・能力主義など色々な賃金体系がある。個々の労使関係の中で判断すればいい」と応じています。
なるほど、2023年春闘のベアと定期昇給を合わせた平均賃上げ率は大手が3.58%(1万560円)であり、30年ぶりの高水準でした(組合員300人未満の中小は3.23%・8,021円)。
そこに、芳野友子氏の出身労組であるJUKIについての、別のインタビューで「ベアなし」に終わったことを聞かれ、「非常に経営が厳しい」「運動的には足を引っ張ってしまった反省はある」などと答えはしたものの、一時金(賞与)についても「世間からかなりかけ離れた非常に低い水準になってしまった」などと、しれっと他人事のように答えるのみでした。
しれっとしてて、よいものなのかどうか、会長サマ、足元は大丈夫なのでしょうか?
来年2024年の春闘(春季労使交渉)で、連合が「5%以上」という目標を決めたことについては、「23年の賃上げは30年ぶりの高水準だった。1年で終わらせず、持続的に上げていかなければならない。世界水準と比べて一般労働者の賃金は低い。最低賃金は半分程度にとどまる」「来年も政府の力を借りたい。業績の良い企業は賃上げできる。業績回復が途上の中小が底上げを図るには労務費を含めた価格転嫁が重要だ」などと、どこか評論家風の他人事のように語っています。
賃金が上がらない国にしてきた「連合」自体のナショナルセンターの責任や、「連合」のリーダーの発言としては「政府頼み」なのですから、主体性にはほど遠いのです。
政府・自民党に近づくことへの連合内での批判があることに対して芳野氏は、「国際的には労働組合も政府や経営者との対話を通じて課題を解決していくのが主流だ。政府と対話が出来るようになったのは連合が国際レベルになった証といえる」「政権と対話ができる信頼関係を築かなければ連合の政策を理解してもらえない。私は積極的に対話していく」などと応じています。
しかしまあ、芳野氏は、自民党との「対話」と「癒着」の違いというものが、どこまでわかっているのでしょうか。
いやはや、何といっても、この方の日経新聞とのインタビューの応答は、とても労働組合運動の代表である当事者の言葉とは思えないほどの、あちこちピント外れの答えばかりだったのです。
これが、日本最大のナショナルセンター「連合」の会長発言だとすると、組合員ならずとも、日本国民としては頭を抱えたくなるでしょう。
この国の衰退は、ホントにいよいよ…のレベルに来ているのだな……と悲哀感が深まります。
ところで、芳野友子氏は、周辺からは「無類の肩書好き」とも揶揄されているそうです。
それもそのはず、実際に、「労働者福祉中央協議会会長」、「日本生産性本部副会長」、「日本水フォーラム副会長」、「財務省財政制度等審議会委員」、「法務省法制審議会委員」、「内閣府男女共同参画会議議員」、「ふるさと回帰支援センター顧問」、「日本防災士機構評議員」、「日本財団パラスポーツサポートセンター顧問」、「JAM(ものづくり産業労働組合)副会長」……などなど、10もの役職や委員会委員を、「連合の会長」以外にも兼任しているからです。
連合会長の仕事以外にどれだけ、こうした仕事がこなせるのか──はなはだ疑問視されているのが現実のわけです。
なんだか、どえらい勘違いの人なのかもしれません。
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