fbpx

なぜ野村は2000億円超えの大損失を出した?米系業者「以外」が逃げ遅れた理由と投資家が得るべき3つの教訓=矢口新

破綻するまで全貌が見えなかった?

また、プライムブローカーは自己のポジションをヘッジするために、一部をより小さな業者に転売することがある。より小さな損失を計上する業者があるのはそうしたヘッジ取引の可能性もある。

1銘柄だけでこうした異常な金額の取引ができたのは、アルケゴスは個人のファンドなので、顧客相手のファンドのような当局への報告義務がなかったことだ。また、スワップはプライムブローカーとの相対取引なので、市場に現れるのはプライムブローカーのヘッジ取引部分だけとなる。そこで、当局は個人のファンドにも規制を強めるべきだとされていると言うが、これは本題から逸れるので触れない。

一方、プライムブローカーは自分の取引は当然把握しているが、アルケゴスが他社と同様の取引があるのを知っていたとは限らない。

こうした大量の買いに支えられ、バイアコムCBSの株価は3月15日の長い上髭が気になるものの、順調に値上がりしていた。変化が起きたのは3月22日の引け後だ。バイアコムは30億ドルの新株発行と転換社債の発行を表明した。そして、23日の株価下落でダブルトップの様相が出てきたことで、24日に急落した。

もっとも、アルケゴスが大量に保有していたのはバイアコムなど米株だけではない。大きなポジションを抱えていた中国株の百度やファーフェッチなどはすでに売られ始めていた。百度の株価は2月に急騰したが、3月中旬までには高値から20%以上下落していた。

その意味では、アルケゴスの信用力は下がっていた。

プライムブローカーたちは事態を把握していた可能性

3月25日にはいくつかのプライムブローカーが再度対策を話し合ったと報道されている。

この「再度対策」というのを額面通りに受け取れば、プライムブローカーたちには横の繋がりがあり、アルケゴスが何をしていたかを知っていて、24日以前にも対策を話し合っていたことになる。

報道では26日の寄付き前に、ゴールドマンが33億ドルのブロックセールの相手を探していたとされる。モルガンスタンレーやウェルズファーゴなど米系が続いた。そして、翌週29日になって野村やクレジットスイスが大損失に直面していると明らかにした。
※参照:Leveraged Blowout: How Hwang’s Archegos Blindsided Global Banks(2021年4月2日配信)

これでわかるのは、ゴールドマンのヘッジ部分だけで33億ドル(110倍すれば円貨)ものバイアコムのポジションを抱えていたことだ。

また、33億ドルのブロックセールが成立したとすれば、33億ドルを一括で買ったところがあることを示している。26日の寄付き前だとすれば、現状よりも30%ほどの高値だ。

Next: なぜ野村は逃げ遅れたのか?投資家が学ぶべきこと

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー