「米国債ディーリングは米国人にしか出来ない」
私は野村東京で外債ディーラーをしていた時に、当時の担当常務にニューヨーク転勤を願い出た。ニューヨークで米国債でのディーラーを希望したのだが、米国債ディーリングは米国人にしか出来ないとされ、転勤はさせてくれたものの、現地の日本の機関投資家とのリレーションづくりと、後に為替のチーフディーラーを任された。
「米国債ディーリングは米国人にしか出来ない」というようなことが、アルケゴス問題でも起きた可能性がある。
実際に、米系の業者は26日時点で売り払ったのに、日本やスイスの業者は翌週に損失を発表したと情報格差を暗示した報道もあった。野村などは、アルケゴスへの融資を回収できなかっただけでなく、ブロックセールの相手を務めた(購入した)可能性すらあるのだ。
ムーディーズは31日、野村ホールディングスの格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げた。格付けはBaa1(長期発行体格付け)のまま据え置いた。私が勤めていた頃は、すべての格付け機関からトリプルAをもらっていた。
投資家が得るべき3つの教訓
アルケゴス問題での私の疑問は、なぜ大富豪が個人資産に7~8倍ものレバレッジをかける必要があったのかということだ。
上昇相場に取り残される焦りだとするコメントもあるが、大富豪は焦る必要がない。焦っているのは常に競争にさらされているプライムブローカーの方だ。おかしいと思いながらも、大きな顧客を逃したくない圧力があるのだ。
1兆円以上を保有する大富豪が、こうしたイチかバチかの取引を行うのは、私から見ればナンピンしか考えられない。このあたりは、いずれ判明することだろう。
この報道が大筋で正しいものだとすると、投資家としていくつかの教訓が引き出せる。
1. 高レバレッジは引き時を見極めるのが難しい
2. アルケゴスが行ったようなスワップと同じような効果のあるETNやCDFは高レバレッジ商品だ。CDFは相対業者の信用リスクも取ることになる
3. 焦りは目を曇らせる
また、ナンピンは平均コストが下がるために損失回避できる確率が高まり、癖になることが多いが、結局は資金力が尽きた時に破綻で終わる。投資家が絶対に避けるべき手法だ。
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『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2021年4月5日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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