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米国に切り捨てられる韓国半導体業界。慌ててサムスントップ仮釈放もすでに手遅れ、二股外交のツケが回る=勝又壽良

サムスン李氏は仮釈放

米国は、中国による台湾半導体への狙いを見つめながら、台湾防衛と同時に、米国内での半導体増産に力点を置く構えである。これが、もたらす韓国経済への影響は計り知れないものがある。韓国からの半導体輸出は全輸出の20%程度である。このうち、米国と中国向けは、4対6程度で中国向けがやや多い状態だ。

この米国向けの半導体輸出が将来、米国内の生産に置き換わる可能性と、米インテルが新半導体開発でサムスンを引離すという情報が駆け巡っている。この問題は、後で取り上げるが韓国経済にとって重大な局面転換を意味する。

これまで、「サムスンがこけたら韓国経済は終わり」が、定説になってきた。かつては、サムスンと現代自動車が、輸出の「二頭馬車」であった。その現代自が、以前の力を失っており、サムスンへの依存が一層、高まってきたからだ。その中で起った、世界の半導体地殻変動は、容赦なく韓国経済を巻き込むはずである。韓国にとって、反日で気勢を上げているゆとりはなくなる。

世界の半導体が大きく局面展開しそうな中で、サムスン総帥の李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が、朴槿惠(パク・クネ)政権の「国政壟断」事件に連座して懲役2年6カ月で収監中ある。この状態では、サムスンの迅速な経営意思決定は不可能である。そこで、仮釈放議論が出てきたのである。当初の世論調査では、仮釈放反対論が多数であった。昨今では、賛成論が過半に達している。韓国経済の深刻さに気付いてきたのであろう。

何ごとも「世論しだい」の文政権は、ようやく8月15日の光復節に合せて仮釈放を与える決断をしたようである。

中央日報の取材によると、ソウル拘置所は李氏を含む光復節仮釈放の対象者リストを法務部に報告した。これによって、仮釈放審査委員会(審査委)が最終審査する。審査委は8月初め会議を開いて仮釈放対象者を決めるという。仮釈放の対象者になるためには、刑期の60%以上を満たすべきとされている。

李氏は、7月末で60%基準を満たす。これで、仮釈放基準は充足されるが、法的には拘禁状態であり、臨時に解放されるゆえ、副会長職への復帰や海外出国などには制限があるという。それでも制約が大きく解かれるはずだ。経営判断で意見を述べるぐらいは可能であろう。

韓国経済は戦前の日本

李氏の仮釈放は、サムスンの置かれた状況からすれば自然のこととは言え、韓国経済の層が極めて薄いことに気付かざるを得ない。サムスン一社の輸出が、韓国経済を引っ張るのは正常でないからだ。韓国の産業構造が、極めて歪であることを示している。

ここで、その問題点を整理しておきたい。

1)韓国財閥制度の前近代性である。財閥とは、家族や同族が経営を支配する形態である。戦前の日本の財閥制度を取り入れたものだ。日本で、戦後の経済民主化で廃止した制度が、韓国には今なお生きているのだ。財閥は、株式会社制度における出資と経営分離の原則に反している点で、大きな限界点を抱えている。経営の私物化である。

2)財閥による韓国経済の支配が、中小・零細企業の発展を抑制している。財閥企業の労組は、日本の大企業を上回る賃金を獲得しているが、そのしわ寄せは中小・零細企業の賃上げを抑制して、大きな賃金格差を生んでいる。これが、韓国経済の潜在的成長力を引き下げている。個人消費の対GDP比(名目)は、48.55%(2019年)に止まる。

3)日本は、前述の通り戦後の改革で財閥制度を廃止した。韓国は、それを取り入れて温存している。同時に、終身雇用制と年功賃金制は、財閥企業労組によって金科玉条のものとして守られており、一切の労働改革を拒否している。財閥企業と財閥企業労組は、韓国経済の旧弊を温存し続けているのだ。

4)韓国の抱える経済的な矛楯は、合計特殊出生率急減に現れている。すでに、「0.84」(2020年)と世界最低を更新する最悪事態に陥っている。何らの解決策も出されないまま、韓国は日本以上の「少子高齢化」の波にのまれて消える運命を辿っているのだ。この民族的な危機に誰も気付かず、政争を繰り広げているのは呆れるほかない。

Next: 米国はもう韓国に頼らない。インテルが半導体産業の覇者を目指す

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