アムウェイ違法勧誘で公務員ら逮捕。コロナ禍でマルチ勧誘の主戦場はネットへと移行か。来年には「成人年齢引き下げ」による被害者爆増の恐れも

2021年11月12日ニュース

マッチングアプリで知り合った女性に対し、アムウェイへの会員登録という目的を伝えずに連れだして、勧誘を行ったとして、京都府の教育委員会に勤務する20代の男ら2人が、特定商取引法違反の疑いで逮捕された。

報道によると、逮捕された公務員男はマッチングアプリで知り合った京都市内在住の女性に対して「エステをしないか」と誘い、施術後に化粧品の購入を勧め「会員になれば安く買える」などと、アムウェイへの会員登録の勧誘をしたという。

この公務員男だが、複数のマッチングアプリを駆使していたようで、同様の勧誘行為を巡って数十件の苦情が寄せられていたとのこと。公務員男らは調べに対し「勧誘をしたことはあるが、女性については思い出せない」などと、容疑を否認しているという。

最近は「モノなしマルチ商法」も急増中

「連鎖販売取引」とも呼ばれ、そのもの自体は合法とされているが、まるで騙し討ちのようなしつこい勧誘であったり、加入後も事前にあった説明のようには儲からないなどと、大昔から何かとトラブルが尽きないマルチ商法。

特定商取引法では、このマルチ商法に関して「目的や事業者名を告げない勧誘の禁止」「商品やサービスの概要を記した書面を渡すよう義務づけ」といった厳しい規制を設けており、今回のケースは前者の規制に抵触したようだ。ちなみに、日本アムウェイへの不正な勧誘を巡り、特定商取引法違反で立件するのは全国初とのことで、ある意味では画期的な出来事とも言える。

しかしながら今回の報道を見ると、最近はマルチ商法の勧誘もマッチングアプリを活用するなど、その手口はかなりイマドキに。なんでも、マルチ商法の常套手段ともいえる大人数を集めてのセミナーが、昨今のコロナの影響で開催しづらくなっているという事情もあり、最近の新規会員獲得は専らネット上で行うのが主流になっているという。

具体的にはFacebookやTwitterなどにくわえて、会員制のネットサロンや今回のようなマッチングアプリ、さらにはちょっと前に流行った音声SNSの「Clubhouse」も、その舞台になっているとのこと。コロナ禍によって多くの人々の間に広がっている生活苦の状況、さらには各自が抱える孤独感なども、マルチ商法サイドにとっては絶好の付け入る隙となっているようだ。

いっぽう最近では、今回でいえば化粧品といった商品ではなく、暗号資産や海外事業等への投資、あるいはアフィリエイトなどの儲け話を扱った、いわゆる「モノなしマルチ商法」も急増しているとのこと。

国民生活センターによると、特に20代や20歳未満の若者の間でその手のトラブルが増えているといい、「人に紹介すれば報酬を得られる」と勧誘されて契約したものの、事業の実態や儲け話の仕組みが不明瞭で、また後になって事業者に解約や返金を求めても、その交渉が難航するというケースが多いようだ。

実際、今月9日には暗号資産を巡るマルチ商法で、なんと650億円もの大金を集めた男が、金融商品取引法違反の疑いで警視庁に逮捕されている。逮捕された男はSNS上で自らの豪遊生活を披露するいっぽうで、セミナーで募った客に対し「新たな出資者を誘えば紹介料が入る」「100万円の出資で1か月に8万円増える」などと説明し、出資者を募っていたという。

画期的逮捕の裏には「成人年齢の引き下げ」が？

このように扱うものも手口のほうも、日々アップデートされている印象があるマルチ商法だが、取り締まる側もただそれを指を咥えて見ているだけではない。

今回の件は先述の通り、目的を告げない勧誘、いわゆる“ブラインド勧誘”が咎められる格好となったわけだが、この手の行為はいうなれば大昔から当たり前のように行われていた手口。それが今になって逮捕に至ったのは、来年4月に迫った民法改正による“成人年齢の引き下げ”も影響しているのでは……そんな見方もネット上では広がっている。

成人年齢の引き下げによって、来年4月からは18歳でも保護者の同意なしに様々な契約を結ぶことができるようになるわけだが、その多くが金融リテラシーに乏しく、さらにマルチ商法に関しても知識もさほどないという、マルチ商法サイドにとっては格好のお得意様といった存在だ。

今後はそんな社会人になりたての若者、さらに大学生や下手をすれば高校生までもが、マルチ商法を巡るトラブルに巻き込まれる恐れが浮上するなか、そういった被害の急拡大を防ぐために、ある意味で見せしめ、あるいは厳罰化の“決意表明”的な意味もあって逮捕に至った……そんな可能性も大いに考えられそうだ。

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