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東芝の不正を見落とした「新日本有限責任監査法人」は逃げ切れるか?=公認会計士・平林亮子

東芝の粉飾決算問題で不正を見抜けなかった監査法人の監査責任を問う声が上がっています。これに関して公認会計士の平林亮子さんは「不正を見抜けなかった事実ではなく、正当な注意が払われていたか否かが重要」だと言います。この「正当な注意」とは具体的には何を指すのでしょうか?

東芝の粉飾決算問題、監査法人の責任はどこまで?

「報酬と引き換えに監査に手心」と勘ぐるのは短絡的

不適切会計で問題になった東芝の臨時株主総会が9月末に行われたようです。結局2000億円を超える利益の水増しがあった、株主総会が3時間50分もかかったなどの報道を目にしました。

東芝については、これから監査法人の責任が問われる可能性もゼロではないでしょう。ただ、監査法人の責任の有無は、不適切な会計処理を看過してしまったことのみで判断されるわけではありません。「正当な注意」を払ったかどうかで責任の有無を判断することになります。

正当な注意とは、「現代の監査環境で東芝の監査をしたらプロとしてここまではするよね」というライン。すべきことをしていれば、監査人が責任を負うことはなく、すべきことを怠っていれば責任を負う、ということになります。

なお、以前のマネーボイス記事の中でも触れましたが、監査法人は、監査対象の企業から報酬をもらって監査をしています。つまり、東芝の監査をしている新日本有限責任監査法人は、東芝からお金をもらって、東芝の決算に粉飾などがないかどうか、チェックをしているというわけです。

お金をもらって監査するとなると、チェックが甘くなるのではないか、という意見もありますが、チェックを甘くすることが企業のためになるとも限りません。厳しい監査を受けていることで、企業が市場からの信頼を得ることができ、企業価値が上がるとも考えられますから。報酬の出所だけで、監査の効果が落ちると考えるのは短絡的だと思います。

ちなみに、各企業から監査費用を集金し、株式市場全体から監査法人に対してお金を払うべきという意見もあります。公認会計士を公務員化してはどうか、といった案もあったと思います。

監査報酬を誰が払うのか(現在は企業が負担)、監査報酬をどうやって払うのか(現在は企業から直接)がポイントだと思いますが、長きにわたり議論されているのに結局いまの方法のまま変わっていないということは、これ以上に良い方法がないということかもしれません。

上場企業の監査報酬はいくら?東芝、郵政グループ3社、トヨタの場合

そんなことを考えているうちに、あることが気になり始めました。監査報酬の金額です。企業は監査法人に対して、いったいどれくらいの報酬を払っているのでしょうか。監査法人への報酬は、有価証券報告書に掲載されています

東芝から監査法人に支払われている監査報酬は、連結子会社の分も含めて10億2500万円です。

監査報酬は、基本料金プラス人件費(1人1時間の時給を設定し、監査に要する時間を見積もる)で計算するのが基本的な考え方。公認会計士の時給が、現在いくらで設定されているかはわかりませんが……。

余談ですが、11月に上場を控えた郵政グループはこんな感じです。

日本郵政 7億7400万円
かんぽ生命 1億7400万円
ゆうちょ銀行 1億7100万円

ちなみに、トヨタは15億1000万円となっています。

【関連】東芝に「審判の日」近づく。忍び寄る海外訴訟リスク、経営に致命傷も=真殿達

『平林亮子の晴れ時々株主総会』vol.32(2015年10月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ベンチャー企業のコンサルティングを行うかたわら、講演活動やマスコミなどでも活躍。毎月どこかの上場企業の株主総会に個人株主として参加中。

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