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韓国ユン政権を襲う経済成長率0%台の停滞地獄。文在寅が去っても山ほどある「負の遺産」=勝又壽良

韓国の文在寅政権は、内政・外交ともに何の成果も上げず、大きな問題だけを残して終わった。尹錫悦新大統領は早くも日韓関係の改善に向けて動き出しているが、前政権の残した「負の資産」はあまりにも多い。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年5月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

文在寅政権の「負の遺産」が山積み

パンデミックで運航を停止していたソウル(金浦)・羽田便は、6月15日から再開される見通しとなった。現在、仁川と成田を結ぶ便はあるが、両国の首都でないことから不便な面もある。それが、いよいよ解決される。

日韓の首都を結ぶ路線は、韓国で「韓日交流の象徴」とされている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)新大統領は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で極度に悪化した日韓関係の改善に向けた呼び水にしたいと考えている。

尹政権には、文政権による内外にわたるやり散らした「負の遺産」を取り除く使命が与えられている。

正直に言って、文政権は内政外交にわたって成果を1つも挙げられないどころか、多くの問題を未解決のままにして去った政権である。あまりにも党派政治に傾き、韓国全体の利益になることを見失った結果である。

党派政治とは、文政権を支持する人たちを満足させる政治に終始したという意味だ。

文政権の最大目標は、南北朝鮮交流促進に据えられていた。自身の両親が朝鮮戦争時に、北朝鮮から韓国へ避難してきた経緯から、北朝鮮への関心が極めて強かった。多分、両親による北朝鮮望郷の念が、文氏に乗り移ったと言える。極端に言えば、文氏は南北統一を目標にして大統領に就任したのだろう。これが、統一に不熱心な国内保守派の排斥へ動く要因となった。

そこで、「親日=保守派」と一括りにして、大々的な「反日運動」を展開した。

学校教育の現場からは、日韓併合時代に親日とされる人々が手がけた作詞・作曲の校歌を一掃させた。校庭に植っている日本産の「カイヅカイブキ」を伐採させる、「正気の沙汰」でないことを行なわせた。

日韓関係は、破綻して当然である。

文政権が残した難題

日韓関係の破綻は、文政権失敗の典型例であるが、内政全般も党派色にみなぎっていた。

普遍的な原理原則に則った政策でなく、自らの支持層を喜ばす政治を行なったのだ。文氏の柔和なイメージからかけ離れた「強引」な政策であった。

文政権の退任直前に行った世論調査に、国民の不満=要望がはっきりと現れている。

大韓商工会議所は、3月28日~4月1日に全国の成人男女300人に対し、「韓国経済が真っ先に解決すべき構造的問題」について世論調査(複数回答)した。それによると次のような結果が出ている(5月6日発表)。

1)青年失業などの雇用問題 82.7%
2)少子高齢化       81.7%
3)環境および炭素中立   77.0%
4)成長潜在力の低下    76.7%

前記の4項目は、文政権が置き去りにした問題である。私のコメントを加えたい。

1)4年間で最低賃金を4割強も引上げ、雇用構造を破壊した。生産性を上回る賃金引き上げが、失業者を増やすという最低賃金引き上げ精神と逆の結果を生んだ。これは、文政権を支持する大企業労組の要求に応えたもの。党派政治の典型である。生産性を上回る賃上げが、企業経営を追い込む要因になる。韓国の最賃制は経営者に罰則を伴うので、生産性上昇を上回る最賃引き上げは、解雇に結びついた。

2)少子高齢化は、「青年失業」の裏返しである。就職できなければ結婚も不可能だ。こうして合計特殊出生率は、世界最低記録を更新している。2020年は、「0.84人」である。ちなみに、日本が1.34人、イタリア1.24人だ。EVテスラの最高経営責任者(CEO)であるマスク氏は、「韓国の人口は3世代内に現在の6%未満に落ちる」とした。韓国人口の6%とは、330万人水準ゆえ、これはマスク氏の計算違いだ。そこまで減る筈はないが、重大問題であることに間違いない。

3)環境問題でも、とんだ間違いをしている。「脱原発」で原子力発電所の操業中止に追い込み、太陽光発電を奨励した。これは,文政権支持派の市民団体が多く事業化しており、多額の補助金を支出する目的もあった。韓国では、平坦地が少なく山間部が多い地形である。そこで、急峻な山地を切開いて太陽光発電を行い、地崩れなど環境破壊問題を引き起している。環境保存とは真逆のことを行なっており、党派性の強い政策のもたらした破綻である。

4)成長潜在力の低下も深刻である。これまでの経緯では、5年間で1%ポイントずつ低下してきた。現在の2%程度の潜在成長率は、今後10年間でゼロ%に落込んでも不思議はない状況である。これは、企業への強い規制がかかっていることの反映である。韓国進歩派(実態は民族主義)は、反企業の色彩が極めて強い。これに比例して、大企業労組の交渉力は世界一と言われるほど「暴力的」である。「貴族労組」とも揶揄されるほど闘争破壊力は巨大化している。これが、潜在成長率を損ねていることは間違いない。

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