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サスメド、不眠障害治療用アプリの開発と臨床試験システムの社会実装の各々の領域で着実な事業進捗

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2022年8月15日に行われた、サスメド株式会社2022年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

ビジョン

上野太郎氏(以下、上野):サスメドの上野と申します。本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。それでは決算説明会を開始します。どうぞよろしくお願いいたします。

当社は2015年に立ち上げた医療ITのベンチャー企業です。「ICTの活用で『持続可能な医療』を目指す SUStainable MEDicine」というビジョンを掲げています。この「SUStainable MEDicine」を略して、サスメド株式会社という会社名になっています。

具体的な取り組みとしては、「Digital Therapeutics(治療用アプリ)」の略であるDTxプロダクトを患者や医療従事者向けに提供する、医療機器の研究開発が1点です。もう1点は、DTxプラットフォームを活用することで、製薬企業に対して臨床試験の効率化や、医療ビッグデータの分析などの取り組みを実施しています。

事業領域概要

当社の事業領域の概要になります。治療用アプリや臨床試験用アプリを構築しています。また、製薬企業や医療機器メーカーの方々に対して臨床試験支援を提供しています。

スライド下部に記載のとおり、このような事業を支えているのが、当社の強みであるデジタル医療プラットフォームになります。具体的には、治療用アプリを効率よく開発するためのプラットフォームや、医療ビッグデータをクラウドサービスで分析するためのAIを活用したSaaSのシステム、また臨床試験にブロックチェーン技術を活用した基盤システムを活用することで、労働集約的な治験を効率化する取り組みを行っています。

治療用アプリの提供の流れ

はじめに、治療用アプリについてご説明します。治療用アプリは医療機器に該当し、コンシューマ向けの誰でも使えるヘルスケアのアプリとは異なります。

医師が患者に対して疾患の診断をした上で、アプリのアカウントを処方する流れになっています。患者は処方されたアプリのアカウントを用いて、ご自身のスマートフォンでログインすると、アルゴリズムがアプリ経由で提供されて、自宅にいながら各種の治療を実施するかたちになります。

アプリを使って日々の治療を受ける中で、患者のデータが生み出されます。そのデータはサーバーに集積され、診療の効率化や最適化に活用する取り組みにもつながっていきます。

ヘルスケアアプリと治療用アプリの違い

ヘルスケアアプリと治療用アプリとの大きな違いです。ヘルスケアアプリは、あくまで健康増進等が目的になるため、医療行為である治療を行うことはできません。例えば、血圧や歩数の記録など健康増進に用いるものが、今の世の中に溢れているヘルスケアのアプリになります。

当社の治療用のアプリは、治療を行う医療機器に該当します。そのため医学的エビデンスに基づいて厚生労働省の承認が必要になります。後ほどご紹介するように、治験を実施して、医療機器の有効性や安全性のエビデンスを取得することが重要になります。

さらに、医師が診断して処方を受けた患者のみに使用権限があるため、医師に対してのマーケティングが重要になります。また、保険点数がすでに新設されており、そちらを活用することによって、例えば患者の自己負担が3割負担になるなど、一部負担のみで使用できるという利点があります。

開発パイプライン

スライドに記載しているのは、当社の開発中のパイプラインです。不眠症の治療用アプリは、検証的試験を終えて、その結果をもとに承認申請を実施しています。

それに続くかたちで、がん患者向けのアプリや、慢性腎臓病という透析治療の予備軍の患者に対するアプリなど、治療と診断それぞれで開発中のものがパイプラインとして組成しています。

このようなアプリを開発するにあたっては、アカデミアとの共同研究やKOLとの関係性構築により実績を出せています。また、後ほどご紹介するように、AMEDや厚生労働省などの公的な助成金を受けて開発を行っています。

外部環境の変化

前期中の大きな外部環境の変化について、いくつかご紹介します。令和4年度に診療報酬改定が行われており、当社の事業と関わる改定が複数盛り込まれています。

大きな点は、プログラム医療機器です。治療用アプリに対しての診療報酬の枠が新設されました。国としても、診療報酬の枠組みとしてプログラム医療機器を保険でカバーすることによって、医療現場における普及を後押しする姿勢が表れています。

個別の取り組みとして、当社が行っている進行がん患者向けの「Advance Care Planning」というパイプラインは、がん患者指導管理料がもともとありましたが、取り組みも保険償還の対象になることが今年度の診療報酬改定で設定されています。

妊産婦のうつの診断の取り組みも行っていますが、ハイリスク妊産婦連携指導料の見直しの中で、すでに精神療法を受けている妊産婦だけではなく、メンタルスクリーニングによって必要性があると判断された患者に対しても診療報酬が適用されることが、今年度から策定されています。

また、慢性腎臓病の患者に対して腎臓リハビリのアプリも開発していますが、透析中の運動指導に関わる評価の新設がなされており、保険償還の対象となる患者の拡大も追い風となっています。

汎用臨床試験システム:SUSMEDシステム

当社が行っているプラットフォーム事業の汎用臨床試験システム「SUSMEDシステム」のご紹介です。

当社は、スマートフォンアプリ等を用いてリモートで臨床試験を実施できるシステムを構築しています。こちらの仕組みに、さらにブロックチェーンの技術を実装することによって、規制対応で求められる臨床試験のモニタリングの工数や費用を大幅に削減できるプラットフォームを構築しています。

ブロックチェーン技術の実装による効率化

スライドには、ブロックチェーン技術の実装による効率化について図で示しています。上部は現行の業務フローで、臨床試験・治験等を行う際に医師が電子カルテに入力した医療情報を、CRC(治験コーディネーター)といわれる方々が転記し、症例報告書(CRF)を作成しています。

CRFのデータの信頼性を担保することがレギュレーション上、求められています。CRO企業から派遣されたCRAが実際に医療機関を訪問して、原資料との照合作業をすることによってデータの信頼性を担保するための業務が行われています。

こちらに対して、当社の技術を用いた場合は、医療機関側の原資料がブロックチェーン経由でCRFにつなぎ込まれることによって、データの転記や照合作業をなくすことができる仕組みになっています。規制当局からの承認もすでに取得しており、特許技術として当社が知財を構築している技術です。

機械学習自動分析システム:Awesome Intelligence

プラットフォーム事業の1つである、機械学習自動分析システムについてのご紹介です。私どもは機械学習をクラウドサーバー側で自動的に実施できるSaaSを提供しています。

こちらの仕組みはブラウザベースで、ログインしてエクセルのファイルをアップロードし、予測変数を選ぶだけで自動的に機械学習の分析が行われ、パワーポイントのスライドが自動生成されるシステムです。したがって、いわゆるデータサイエンティストでなくても機械学習による医療ビッグデータの分析を効率よく行うことができるため、製薬企業やアカデミア向けに提供しています。

2022年6月期 重点施策の現在地(3Q時点)

当社の重点施策の第3四半期時点での現在地です。まず、不眠障害治療用アプリについてはすでに承認審査が進行しており、販売提携を行っている塩野義製薬と販売戦略の立案をしています。

臨床試験のシステムについては、東京医科歯科大学と共同で実施してきたAMED事業について研究成果が出ていますので、公表の準備を進めています。また、研究開発資金については、財務的な影響を考慮しながら研究開発を積極的に推進しています。

重点施策① 不眠障害治療用アプリの製造販売承認申請

第4四半期での進捗をそれぞれご説明します。まず1点目の不眠障害治療用アプリについては、昨年11月の時点で治験が完了し、その結果をもとに今年の2月に承認申請していました。

今年6月には日本睡眠学会で、その治験結果について学会発表を行っています。また、販売については塩野義製薬との販売提携契約を昨年12月に締結し、現在も上市に向けて販売計画を共同で策定しています。

重点施策① 日本睡眠学会での発表内容

スライドには、日本睡眠学会で発表した治験の主要評価項目のデータを示しています。縦軸がAISという不眠症の重症度を表す指標で、主要評価項目になっています。0週時点と8週時点、そして治療後のデータを示しています。

こちらについては、シャムアプリを用いた対象群との比較試験を行っており、対照群に比べ、治療用アプリを用いた群においては、有意にAISの指標が改善したことが示されています。統計的な解析を行うとPバリューとして非常に小さな値になっており、クリアな結果が出ています。

もう1つ重要なポイントとしては、治療後の安全性追跡調査の結果においても、その治療効果が維持されていることが確認できています。特に睡眠薬の場合、投与を止めてしまうと不眠症状の増悪として反跳性不眠という副作用があり、リバウンドが起きることが知られていますが、治療用アプリの場合はそのようなことがなく、不眠症の治療効果が継続されていることが確認されています。

また、先行研究で示されている、対面式の認知行動療法でのAISの変化量と同程度の治療効果が得られていることを確認しています。

重点施策① 不眠症治療用アプリの海外での動向

外部環境の変化に関連して、今年5月に英国の政府ガイドラインを策定しているNICEから通知が出ています。不眠症の治療において、睡眠薬の代わりに治療用のアプリを推奨すると明記されたガイドラインが発出されています。

これまでは対面式の認知行動療法を推奨することが各国のガイドラインの第一選択として盛り込まれていましたが、英国の政府ガイドラインはこの治療用アプリの使用を睡眠薬以上に推奨することに一歩踏み込んでいるという現状になっています。

重点施策② 臨床試験システム稼働実績の蓄積

重点施策の2点目は、ブロックチェーン技術を用いた臨床試験システムの実績についてです。すでに発表しているとおり、アキュリスファーマというバイオベンチャーと契約を締結しています。

アキュリスファーマのほうでナルコレプシーおよび睡眠時無呼吸症候群に対する治療薬の国内開発を予定しています。この治療薬は、もともと欧米ですでに承認されていながら、日本国内での開発が遅れている治療薬です。国内における治験に、このブロックチェーン技術を活用するという契約を締結しています。

こちらの取り組みについては世界でも例がないということで、日経新聞にも掲載され、製薬企業の治験に対するブロックチェーン技術の活用がリリースされています。

重点施策② ブロックチェーン技術活用に関する取り組み

ブロックチェーン技術は、最近の政府の成長戦略、つまり骨太の方針に盛り込まれたこともあり、非常に注目を集めています。特に、最近はWeb3の文脈で注目を集めている技術ですが、当社はブロックチェーン技術を医療データに用いることについて、2017年からすでに複数の論文を発表しており、また複数の特許を取得しています。

したがって、最近そのような盛り上がりがある一方で、私どもは着実に開発してきた技術が、医療治験において実際に活用されるフェーズに入ってきている状況になっています。

重点施策②-2 ブロックチェーン技術の適用拡大

ここまでは治験でのブロックチェーン技術の活用事例でしたが、私どもはそれに加えて、ブロックチェーン技術を治験以外に用いる取り組みも行っています。具体的には、レジストリのデータにブロックチェーン技術を用いることで、データの信頼性を担保する取り組みを行っています。

ナショナルセンターである国立精神・神経医療研究センターと私どもの研究がAMEDの事業に今年度から採択され、レジストリのデータ、こちらはリアルワールドデータなどとも呼ばれますが、そのようなデータの信頼性をブロックチェーン技術で担保することにより、価値を引き上げていく取り組みを行っています。

ブロックチェーン技術を、治験以外の分野であるレジストリデータの信頼性の担保への適用拡大、ひいては承認申請等に活用していくチャレンジも行っています。

重点施策③ 上場による研究開発資金の調達

3点目は、研究開発資金の財務状況についてです。IPOの際に調達した資金によって強固な財務基盤を獲得しているため、これを活用して積極的な研究開発を進めており、現在も非常に安定した財務基盤で事業を進めています。

2022年6月期 重点施策の到達点(4Q時点)

前期末の到達地点をまとめます。承認審査については、引き続きPMDAの審査が進められており、塩野義製薬との販売戦略の立案について策定を進めています。また、治験結果の公表についてはすでに学会での発表を終えており、論文についても英文誌での発表を予定しています。

臨床試験システムについては、もともと東京医科歯科大学との研究成果の公表準備を進めていましたが、それに加えて、アキュリスファーマをはじめとする企業治験の契約を獲得しています。また、治験のみならずリアルワールドデータへの適用や、ブロックチェーン技術の適用拡大についても取り組みを進めています。

財務基盤については第3四半期の状況と大きく変わらず、研究開発を積極的に推進しています。

その他

その他として、名古屋市立大学との治療用アプリの共同開発についても、リリースのとおり進めています。また、がん研究会有明病院は日本でも有数のがん関連の病院ですが、有害事象に関する分析で前期より共同研究を開始しています。

業績ハイライト

業績ハイライトです。右側が年間累計です。事業収益が3億1,600万円、営業損失が2億2,900万円で着地しています。

研究開発費については2億2,600万円となっています。こちらは当初計画からのビハインドはありますが、内訳としてはエンジニア等の採用計画の未達部分や、臨床試験のスケジュールの変更、費用の圧縮によって想定額を下回ったかたちです。

セグメント業績

セグメント業績の内訳です。DTxプロダクト事業については、塩野義製薬との販売契約の締結一時金の収益計上によって、通期で黒字化ができたかたちです。また、プラットフォーム事業については、利益率が改善している状況です。

2023年6月期業績予想

今期の業績予想についてです。事業収益としては不眠障害治療用アプリのマイルストン収益の増加を見込んでいます。

一方で、採用計画の進捗のために費用を見込んでいるため、営業損失自体は増加を予定しています。また、開発パイプラインの獲得や研究開発を進めるべく、研究開発費用についても今期は増加する見込みです。

2023年6月期 重点施策

今期の重点施策です。不眠障害治療用アプリについては、今年2月に承認申請を行っているため、そちらを受けて製造販売承認の取得を予定しています。

また、不眠障害治療用アプリに続く後続のパイプラインについては、着実に開発を進めていくことを予定しています。特に現在進行中の2つのパイプラインの開発においては、被験者の登録を完了させたいと考えています。

プラットフォーム事業については、企業治験での臨床試験システムの稼働開始を予定しています。実際に企業治験の中で順調に動かしていきたいと考えています。

治験以外の部分についても、リアルワールドデータへのブロックチェーン技術の活用によってデータの信頼性を担保し、データの価値を高めていく応用領域の拡大を予定しています。

私からのプレゼンテーションは以上となります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:開発パイプラインのスケジュールについて

質問者:開発パイプラインのところで、SMDの402と201、ACPと慢性腎臓病についてです。今期の目標が被験者登録完了と出ていますが、結果のアナウンスはいつ頃になるのかスケジュール感を教えてください。

上野:リクルートの完了を計画として織り込んでいますが、一方で観察期間の完了やデータロックなど、その後の解析部分でそれなりの期間を要すると思っています。そちらについては、今期ではなく来期を想定しているかたちになります。

質疑応答:採用の遅れによる影響について

質問者:資金用途の変更について、人の採用が若干遅れているとお話があったと思います。こちらのビジネスにおいて、ブロックチェーンなどに強い方はかなり引き合いが強いと思いますが、採用の遅れがビジネスの遅れなどにつながる事象はないと考えてよろしいでしょうか?

上野:当初見込んでいたエンジニアの採用に対してですが、ちょうど前期にエンジニアの採用マーケットが非常に過酷な状況になっていたこともあり、未達となっています。

一方で、ブロックチェーンの基盤についてはすでに構築が完了しており、プラットフォーム自体はすでにできあがっている状況です。そのため、私どもは採用計画の未達がブロックチェーンの実装やパイプラインの開発そのものに直近で影響するとは考えていません。

ただ、今後は機能を追加したり、あるいはプラットフォームで構築したプロトタイプを実際の上市版にブラッシュアップしたりする段階においては、エンジニアの工数が必要になるため、今の採用計画が未達のままで長期的に進むと、影響が出ると考えています。

質疑応答:今期計画の詳細な内訳について

質問者:今期の計画の詳細についてです。トップラインを5億2,200万円とされていると思いますが、内訳をもう少し教えてください。

プラットフォーム事業で1億円と少しのため、差し引いた額が塩野義製薬に移動した不眠症アプリの承認に伴う一時金と考えてよいのでしょうか? または、ほかに何かブロックチェーン周りで、導出などのマイルストンや一時金を織り込んでいるのかいないのか、この内訳を可能な限りお教えいただけないでしょうか?

上野:塩野義製薬との契約の詳細については、先方との関係もあり開示していません。ただ、先ほどおっしゃったようなかたちから、そう大きく外れないと思います。他のパイプラインの導出によるマイルストンを盛り込んでいるわけではありません。

質疑応答:黒字化の達成時期について

質問者:御社は黒字化にそこまでこだわっていないことを重々承知していますが、黒字化の達成時期についてです。

パイプラインが堅調に進捗し、来期には不眠症アプリの売上も立ち、他のパイプラインでの進捗などもあり、ブロックチェーンも花開いてくるかと思います。来期くらいの黒字化の確度をどのように見ておけばよろしいでしょうか?

上野:おっしゃるとおり、私どもは治療用アプリの売上によって、しっかりと売上を立てて黒字化を目指すことを目的としていますので、マイルストンよりもその後のレベニューシェアを重視しています。

今期に承認申請を受けて実際に上市されれば、実際に売上が見えますし、他にブロックチェーンの実際の企業治験への活用などで売上が立ってくるところもあります。来期からは売上部分が実際に本格化するため、黒字化も十分に考え得るフェーズだと認識しています。

一方で、後続のパイプラインの研究開発や治験入りのタイミングの兼ね合いもあるため、そのバランスによると思っています。

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