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なぜ個人情報保護法があるのに探偵や興信所が許されるのか。警察庁が救済措置発動も=神樹兵輔

個人情報保護法は2017年より、5千人分以下の個人情報を取り扱う小規模事業者も含めて、すべての企業を対象に全面施行されている法律です。この法律があるのにも関わらず、なぜ個人の秘密を暴く「探偵調査業や興信所」の業務が許されるのでしょうか?『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』)

※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2022年9月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:神樹兵輔(かみき へいすけ)
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

個人情報保護法があるのに探偵調査は許されるのか?

みなさま、こんにちは!

「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。

今回のテーマは、「個人情報保護法」があるのに、なぜ他人の秘密を暴く商売の「探偵調査業」が許されているのか」についてです。

読者の皆様も、インターネットや、街中のポスターなどで「浮気調査」などの文言がデカデカと掲げられた「探偵調査」や「興信所」の広告を目にされた経験はあるかと思います。

個人の秘密という「証拠収集ニーズ」はゴマンとある

大抵の人にとっては、「自分には関係のない広告」として、気にも留めないものでしょうが、こうした広告がズキュンと胸に響いてしまう人がいるのも現実なのです。

まずは、調査依頼が一番多くて、儲かるとされる「浮気」に悩む人々が、この世の中には常に一定数存在するからでもあります。

たとえば、妻が夫の浮気の証拠を握って、夫の浮気を止めさせたいとか、夫の浮気を証拠に離婚して、慰謝料や養育費を払わせたいとか、浮気相手を何らかの窮地に追い込みたい…といったニーズが、女の側からも、時には反対の男の側からも絶えない実情があるのです。

こうした浮気調査ですが、実際に調査を依頼すると、ベラボーにお金がかかります。尾行・張り込みだけで、基本的には、探偵が二人一組で担当し、最低でも1時間当たり1万5千円から2万円かかり、他に車両を使ったりすれば、さらにその分が上乗せされます。

妻が浮気をしているらしいと疑った夫の勤務先をスタート地点として、夫が退社後に浮気相手とデートをしたり、その後にホテルに入り、出てくるまでの数時間に及ぶ「尾行・張り込み」を行ったっただけでも、数十万円が飛ぶからです。

これはもう、ものすごく儲かる商売でしょう。

仮に、妻が夫の浮気の証拠をつかんだとしても、たった一度ぐらいの浮気の証拠では、家庭裁判所でも離婚を認めてくれないため、常習的な「証拠」が必要となるので、このような調査を何度も行うことになるのです。探偵にとっては、誠に好都合な家庭裁判所のお裁きともなっています。

すなわちこれだけで、アッという間に100万や200万円の調査費用がかかるわけです。

日本での不法行為による離婚理由での平均的慰謝料は、100万円から200万円程度ですから、探偵に調査依頼すれば、別れた夫から慰謝料を取ったとしても、到底理屈に合わないはずなのです。

それでも、カネに糸目をつけずに「浮気」の調査依頼する人がいるのです。

そのため、いろいろな調査依頼の中でも「浮気調査」が一番儲かるゆえんとなっています。

感情にまかせて、理性を失った状況での調査依頼はそれだけオイシイ仕事になる…といえるでしょう。

なんといっても「浮気調査」は探偵調査のドル箱業務なのです。

さまざまな調査依頼の内容には、娘の婚約者の身元照会や、経歴調査、子供のいじめ調査など、「証拠」を押さえたい…という要求も数多くあり、「探偵調査業」は欠かせない存在にもなっているわけです。

また、解雇規制の厳しい日本では、従業員を解雇に追い込むために、従業員のサボり行為や勤務態度不良の証拠を収集したいという企業側のニーズもあったりします。

いずれにしろ、相手にギャフンといわせて、言い訳を許さないためにも、「証拠」が最も重要だからなので、この手の商売がなくならないわけなのです。

いったい「個人情報保護法」とは何なのか?

さて、2003年5月に公布され、2005年4月から全面施行された「個人情報保護法」ですが、これは、施行後10年経った2015年9月に情報通信技術の発達に伴って改正され、2017年5月30日より、いよいよ5千人分以下の個人情報を取り扱う小規模事業者も含めて、すべての企業を対象に全面施行されている法律です。

マイナンバー制度との絡みもあって、個人情報の取り扱いは、すでに従来と比べて一段と厳しくなった形なのです。

ところで、こうした「個人情報」や「個人情報保護法」という言葉自体は、日常生活では「うるわしき誤解」と「錯覚」が入り混じる、奇妙な言葉にさえなっています。

プライバシー権と誤解されがちだからです。

たとえば、「その件は、私の個人情報だから、お答えいたしかねます」とか、「個人情報保護法で訴えるぞ!」とか、「どうして私のことを調べるんだ。個人情報保護法違反だぞ」などと極めて敏感に反応する人も増えているようです。

しかし、どうも「個人情報保護法」と「プライバシー権侵害(個人の秘密、家庭内の私事などが侵されない権利、名誉棄損、侮辱、民法上の不法行為)」などとが混同されている場合も少なくないのです。

これでは、探偵調査業がどうして存在するのかも不思議なはずでしょう。

実は、驚くべきことに「個人情報保護法」と「探偵調査」という個人の秘密を探る業務とは、直接的には何らの関係もないのです。

個人情報保護法は、「個人情報の取扱いに関する規定」であって、本来、「個人対個人のプライバシーの関係性」には直接及ばないからなのです。この点を多くの人は誤解しています。

Next: なぜ「探偵調査業務」は届け出制になっているのか?

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