若者を中心に日韓関係は改善へ
韓国の20～30代は、日本に対する感覚は年配層に比べてかなり柔軟になっている。「過去よりも未来」へと視点を移しているのだ。これは、日本の若者についても同じである。韓国の誇るK-POPは、世界中で日本が最大の市場である。
韓国の中央日報が、過去1年間（2021年3月～2022年2月）まで、世界の主なK-POPグループのファンダムを分析した結果、BTS（防弾少年団）の公式ミュージックビデオ、公式音楽を利用した使用者制作コンテンツ（UCC）、歌詞動画などを集計したところ、日本が「BTS消費国」1位になった。BTSの本場である韓国は、6位に止まったのだ。これは、日本の若者が韓国文化へ強い関心を持っている証拠だ。
日本の年配者には、K-POPと言っても見当はつきにくいが、日本の若者には絶対的な人気である。最近は、この人気に陰りが出て来たとの指摘もあるが、若者の特権で過去を引きずらないのだ。
韓国でも同じことが起こっている。韓国の「三・一節」（日本からの独立宣言記念日）と言えば、韓国にとっては特別の休日である。韓国の若者は、それにもかかわらず大挙して日本旅行を楽しんでいるのだ。韓国の若者が、過去よりも未来志向になっている明らかな証拠であろう。
左派の「日本憎し」は、消えかけている。
歴史を動かす未来志向
韓国ユン政権は、若者と同じ未来志向で対日外交政策を進めようとしている。
韓国は、米中対立を契機に安保と経済の両面で、中国との関係を見直し、日本へ協力を求めたことだ。この裏には、中国の過去3年間にわたるゼロコロナ政策で、中国政治の硬直化について身を以て知った面も大きいであろう。こういう中国へ、過度の経済的依存をすることの危険性に目覚めたとも言えるのだ。それは、同時に安全保障面でも当てはまる。
具体的には、次の政策で日本へと協力を求めている。
1. 半導体やバッテリー、電気自動車など、先端産業のサプライチェーンの安定とデジタル転換など、新成長産業への協力
2. 安保をめぐる協力拡大。
韓国は、経済分野での日韓関係改善が「選択でなく必須」だとしている。その理由は、日本が太平洋戦争後の荒廃から発展する過程において、「川上」から「川下」までの一貫生産体制を築き上げている現実だ。日本は、素材生産から製品加工までの一連生産の流れを築き上げているので、韓国にとって好都合な相手国なのだ。
韓国は、「川下」の加工段階が発展した。「川上」は極めて脆弱である。これまで、この面で中国へ依存してきたが、米中デカップリング（分断）が進めば、いずれ中国ルートが切断される。となれば、韓国は日本へ依存するほかない。日本も原材料の確保面で心許ないのが現実である。日本に「川上」技術はあっても、原材料面の確保で日韓が協力できる分野は広がるだろう。
韓国サムスンは先に、今後20年間で総額300兆ウォン（約31兆円）を投じ、ソウル市近郊に半導体の新拠点を設けると発表した。同社幹部は、「日本は半導体製造の技術革新に不可欠なパートナー」と位置づけている。
中国で操業する半導体工場が将来、米国による対中先端半導体製造装置の輸出禁止措置と絡んで、操業不能の事態が予測される。サムスンが、20年間に31兆円もの巨額投資行なう裏では、半導体の中国撤退も見込んでいるであろう。肝心な点は、サムスンが日本を「半導体製造の技術革新に不可欠なパートナー」と位置づけている点だ。
日本は1980年代、世界半導体のトップにあった。それが、米国との半導体摩擦で米国へ半導体輸出規制（1986年）を行い、その後の急速円高で国際競争力を失った経緯がある。日本は今なお、半導体製造装置・半導体素材・半導体製造と全製造過程で生産能力を維持している。まさに、「川上」から「川下」までワンセットで揃っているのだ。韓国が、日本を「不可欠なパートナー」と持ち上げる理由はここにある。
サムスンが、日本へ接近する理由はこれだけでない。日本が、「2ナノ」（ナノは10億分の1）以下の超先端半導体製造体制をつくったことだ。27年には大量生産に入る予定である。これとは別に、サムスンのライバル企業である台湾TSMCと日本が、技術面で密接な関係を築いている。サムスンにとっては、日本とTSMCが手を結び、ここから排除されることを最も恐れるようになってきた。日本とは、何としても協力関係を強化しなければならない。サムスンは、こういう危機感を抱いているだろう。
