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暑すぎる「地球沸騰化」でダイキン株は買いか?世界一のエアコンメーカーと言える3つの理由と今後の成長性=佐々木悠

成長し続けると言える3つの理由

<理由その1:真似できない生産体制と販売網を構築している>

ダイキンの強みは、世界中に広がる販売網と生産拠点です。実はエアコンは地域によって求められる性能が異なります。

私たちの住む日本は湿度が高く、快適性を重視し、湿度のコントロールが行えるエアコンが好まれます。一方で中国は内装に独自性を求める文化があり、高級住宅向けのエアコンの需要が高く、欧州では環境意識の高さから地球温暖化を悪化させないエアコンが好まれます。

また、エアコンは販売して終わりではありません。

あなたも家のエアコンの冷えが悪く、業者を呼んだことはありませんか?車やスマホは故障の際は顧客が店に修理を依頼しますが、エアコンは業者がユーザーの元へ出向く必要があります。つまり、エアコンはアフターサービスが必要な機械なのです。

この地域ごとのニーズの違いと、適切なアフターサービスを実現するために、ダイキンは世界170カ国で事業を展開し、100箇所以上の生産拠点を有しています。

各地域のニーズに対応する一極集中生産ではなく、販売する地域の近くで調達・開発・生産を行う体制をグローバル5局で構築しています。結果、製品を短いリードタイムで供給し、天候や景気変動の需要の変化にもタイムリーに対応した販売戦略を取ることができるのです。

一方で基本となる部品は共通し、グループ全体で部品・製品の在庫の一元管理を進めることで、需要が高まった地域に製品供給や生産拠点間での部品の融通を行うなど、生産拠点分散のデメリットを抑える努力も行っています。

 

消費者との接点においては「ダイキンプロショップ」というダイキンが認定した販売施工店があります。(世界展開しています)

ダイキン全面バックアップの元、丁寧な顧客対応、業務用エアコンの施工に必要な知識を有しているなどの要件を満たした店のみが該当し、他店で断られた、という専門工事でも対応できる場合があるなど専門性が高い販売網なのです。

つまり、後追いの企業がこのような販売網や生産拠点を構築できる可能性は非常に低いものと考えます。これぞ、バフェットが言う「堅固な競争優位性を持って築かれた参入障壁である経済の堀がある企業」であると思います。

<理由その2:M&Aで新規市場を開拓する>

しかし、この世界的なネットワークは簡単に完成した訳ではありません。

実は現在の主力市場であるアメリカへの進出は1980年代、90年代の2度失敗しています。

そもそもアメリカの空調文化は、建物の1カ所に冷暖房装置を設置し、温風や冷気をダクトから各部屋に送る、ダクト式空調が主流です。

日本の各部屋で温度調節をする、局所式冷暖房システムとは違いますね。

こういった文化の違いに対応しきれず、1900年代の北米進出は数年で撤退していたのです。

しかし2006年にマレーシアの有力メーカー(OYL社)を買収したことで傘下の米マッケイ社を獲得しました。その後グッドマン社などの買収によりダクト式空調が商材に加わり、本格的に参入、つまりアメリカ進出のきっかけはM&Aなのです。その後はまずグッドマンの商品やディーラー網を基盤として、ダイキンのエッセンスを少しずつ移植しました。

ダイキンはM&Aに積極的な会社です。

地域 ビジネス内容
1998 ドイツ 空調販売代理店 クパ買収
2007 マレーシア 世界的大手空調メーカー OYL社買収
2008 ドイツ 暖房メーカー ローテックス社買収
2011 トルコ 空調メーカー エアフェル社買収
2012 アメリカ 住宅空調メーカー グッドマン社買収
2016 イタリア 冷凍・冷蔵機メーカーザノッティ社買収
2019 オーストリア 冷凍・冷蔵メーカーAHT社買収
2022 アメリカ 空調販売会社 CCOM買収

上記の表から、空調メーカーだけでなく、販売会社や周辺ビジネスの冷凍関係の会社も買収していることが分かります。

社長の十河 政則氏は過去の発言からM&Aを「販売網やサービス網など不足している機能を充実させるためのもの」という考えを持っていると推察できます。

中期経営計画では2030年までに世界3位の経済大国になり、空調機の市場が20年比で4倍に拡大する、と見られているインドを開拓する方針です。今月新工場を新設していますから、アメリカの開拓例と同じように、M&Aを通じた新規市場開拓を行う可能性が高いと考えます。

<理由その3:地球温暖化で需要が伸びる>

冒頭でエアコンは必ず必要と述べましたが、これは日本に限った話ではありません。

中期経営計画の重点戦略であるインドは今年気温が45度を超え、熱中症で170人近く死亡した、というニュースがありました。またロンドンの気温も毎年40度を超え、国連事務総長は「地球温暖化の時代は終わり地球沸騰化の時代が到来した」と警告しています。

7月の世界の気温は過去最高を上回る見通しであり、もはや地球温暖化は不可逆の潮流です。

しかしヨーロッパなど部屋を強制的に冷やすことを好まない地域や、インドや南米のようにそもそも暑い、新興国であるという理由からエアコンの普及が遅れている地域もあります。

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出典:The Future of Coolinより作成

こういった地域に対しても、既に世界に販売ネットワークを持ち、M&Aのノウハウがあるダイキンだからこそ空調を届けることができる、そんな成長ストーリーを思い浮かべることができるのではないでしょうか?

猛暑の中では病院があっても、空調が効かなければ人々の生命を守ることはできません

ダイキンのエアコンは今後も必要不可欠な物であると考えます。

Next: Googleを上回る株価成長、この勢いを継続できるのか?

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