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なぜ増収増益なのに「ヤクルト本社」株は下がるのか。アナリストの功罪と長期目線での展望=栫井駿介

「長期投資家」の目で見る

重要なことはこれからどうなるかということです。

株価は大きく動くもので、アナリストの評価も変わるものですが、『本当の企業の価値』というものはそう簡単に動くものではありません。

大事なことは、ヤクルトがその先何十年にもわたって利益を生み出していくことであり、私たち長期投資家としては目先の問題よりもヤクルトが全体として今後どうなっていくのかを見届けなければなりません。

それを踏まえて現在の状況を見てみましょう。

まず間違いなくあるのは、増収増益に大きく貢献しているのがヤクルト1000であり、とにかく生産が追い付かないということです。

一時はヤクルト1000が大ブームとなりなかなか手に入らないという状況でしたが、今ようやく人々に届けられるようになりました。

これはすなわち「作れば売れる」という状況です。

ヤクルトとしても、発売して以来増産を繰り返し、需要に少しでも追い付こうとしてきました。店頭販売の「Y1000」も同様です。

一方で、これは一時的なブームであって、じきにブームは去るという見方もあります。

だとすると重要なことはブームがいつまで続くかということです。

個人的な調べでは、コンビニやスーパーの棚を見るとY1000が売り切れていたり並んでいる数が少なかったりしていて、Y1000に対するニーズはまだ衰えていないと感じられます。

実際にIRの方に確認しても、今は作った分だけ売れる状況で、生産できる最大量を販売しているということです。

したがって、ヤクルト1000に関しては当面は懸念する必要は無いと思われます。

そこからさらに長期で考えるとどうでしょうか。

ヤクルトの素晴らしいところは『ヤクルトレディ』にあります。

国内の宅配と店頭の販売比率はおよそ半分半分ということです。

普段からやり取りしている人だったら、一度ヤクルト商品を買い始めるとその後なかなか断るとは考えにくく、継続的にヤクルト商品を買い続けると思われます。

つまり、このヤクルトのビジネスモデルは非常に粘着性が高いということです。

逆に、中国では店頭販売がほとんどということで、まだそれほど粘着性の高いビジネスを構築できておらず、だからこそ今回下落してしまったと考えられます。

これまでは中国の富裕層の消費の賑わいの追い風を受けていましたが、これからは地に足をつけてヤクルトらしさを発揮していく必要があると思います。

アジアの他の国においても、これまでコロナ禍でヤクルトレディの教育ができずに売上を伸ばせていなかったのですが、コロナ禍も収束してきたので、これからヤクルトレディをさらに育てて売上を増やしていくことが重要になってくるでしょう。

また、アメリカで非常に好調ということもあります。

2007年にまずアメリカの南西部に進出したのですが、なぜこの地域だったかというと、メキシコからの移民が多く住んでいたからです。

ヤクルトが先に進出して成功したところがメキシコであり、メキシコから移り住んだ人からすると懐かしくて買っていたということもあるのではないかと思われます。

同時にヤクルトはメジャーリーグのエンゼルスのスポンサーにもなっていて、今の大谷選手の大活躍によって広告効果も得られていると見られます。

このように好調なので、アメリカの東海岸の方にも進出しようとしていて、西海岸での深堀りと東海岸への拡大を同時進行で、アメリカでは今四半期10%伸びているということです。新しい工場も建設しようとしています。

Next: 中期経営計画の「年8.8%成長」は少し地味に見えるが…

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