成長の第2段階:クラウドサイン
そして、現在の成長を支えているのが、クラウドサインという事業です。
クラウドサインは、紙と印鑑で行っている契約行為をクラウド上で締結できるサービスです。契約の相手方がクラウド上で契約内容を承諾するだけで、スピーディ、かつ低コストで契約締結できるのです。
主要顧客は企業であり、月額固定料金と月間契約件数を基とした従量課金制を採用しています。

出典:クラウドサイン
このクラウドサイン事業はこの2年で急成長しています。背景には、コロナ禍の脱ハンコの流れがあります。「ハンコをもらうために出社するのはおかしい」という追い風が吹き、急成長したのです。

出典:各年度決算説明資料より作成
このように外部間環境による成長が業績を後押ししています。
また実際にユーザーの声を調べると
- 経済産業省や国土交通省が公式に法制度に適合している安心感
- 弁護士監修という安心感
- 取引先(電子契約の受信者)にとって使いやすい
このように安心感と操作性が評価されていることから、事業を拡大できたと考えます。
さらに、業績拡大を後押しした要因として、いわゆるネットワーク効果があります。
ネットワーク効果とは簡単にいえば「周りが使っているから、私も使う」です。
例えば、クラウドサイン利用者のAが他社のBと契約した際に、Bもクラウドサインの利便性に気付き、利用を始める。BがCと契約行為を行った際に…
というように、ユーザーが芋蔓式に増えていく仕組みになっていると考えられます。
<今後はどうなる?>
今後もクラウド事業が成長を支えることが予想されます。
電子契約サービス市場の推移予測によると、現在から2025年にかけて、年間25%前後のペースで市場が拡大する見込みです。

出典:矢野研究所
この業界の中で2022年時点でクラウドサインはシェアNo.1です。そして24年3月期1Q時点では市場成長予想を上回るペースで売上が拡大しています。(前年同期比40%増)
従って、今後は電子契約市場の成長とともに自社の業績も拡大していくことが見込まれます。
一方で、クラウドサインのが属する電子契約市場は弁護士ドットコムほど優位性がある訳ではなく、GMOサイン、マネーフォワードなど、ネット系の企業が類似サービスを提供しています。
リスクとして、競合との価格競争が起こる可能性も考えられます。現在クラウドサインはシェアを獲得していますが、例えば、新規企業が使用料金を大幅に下げて参入し、シェアを剥奪される可能性もあります。
従って、競合他社とどう差別化するのか?が今後のポイントになりそうです。