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AIで成長期待「弁護士ドットコム」株は買いか?3つの“武器”と高すぎる株価を長期投資家はどう評価すべきか=佐々木悠

あなたは弁護士ドットコムという企業を知っていますか?投資家のあなたなら、株価上昇・下落率ランキングなどで目にしたことがあるかもしれません。2年ほど前に株価が急上昇、その後は急降下しているため、含み損がつらい…という方もいるでしょう。今回はなぜ弁護士ドットコムが成長してきたのか?どのようにして利益を上げているのか?今後も成長していくのか?を考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

弁護士ドットコムは何をしている企業?

弁護士ドットコムの社長は、元榮太一郎という方です。2001年に弁護士登録、2016年から2022年にかけて、自民党推薦の参議院議員を勤めました。

創業のきっかけは、元榮氏が大学生の時の経験にあります。縦列駐車で他人の車にぶつけてしまったのです。

その際、相手方に「お前が悪い!10割負担だ!」と言われてしまいます。しかし弁護士に相談したことで70%までに減った、という経験をしています。

この体験をきっかけに弁護士をもっと身近な存在に一見さんお断りの弁護士の世界はおかしい!という思いから創設したのが、弁護士ドットコムです。

まずは業績を見てみましょう。

売上・営業利益ともに順調に拡大しています。実はビジネスの内容を見てみると成長が三段階に分かれているものと考えられます。

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出典:有価証券報告書より作成

段階ごとの成長過程を見ることで、弁護士ドットコムのビジネスの優位性を理解することができます。段階を追って考えていきましょう。

成長の第1段階:弁護士ドットコム

まず、弁護士ドットコムの祖業となるのが、社名にもなっている弁護士ドットコムというサービスです。

弁護士が会員登録することで、法的トラブルを抱える一般ユーザーからの法律相談への回答を行います。一方で、一般ユーザーは法律相談を行うことで、回答内容や弁護士のプロフィール提案などを参考に、インターネット上で自分に最適な弁護士を選択・直接問い合わせることができます。

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出典:弁護士ドットコム

言い換えるならば、弁護士が回答するネット掲示板です。対面で相談する訳ではないため、気軽に悩み相談ができることが最大の利点です。

一方で、弁護士にとっては、新規顧客獲得のマーケティングツールという側面があります。また、注力分野の料金や解決事例、判例のリサーチ業務を行うことも可能です。

この事業のすごいところは、23年3月期のセグメント利益が40%もあることです。

なぜ高収益を実現し、成長できたのでしょうか?

<競合が少ない優位性>

それは競合が少ないことです。

少なくとも上場企業の中では競合らしい競合は見当たりません。

未上場のサービスを含めても、弁護士と直接やり取りができるサービスで、弁護士ドットコムよりも使いやすいものはないと考えます。

弁護士ドットコムは無料〜月500円で使用できますが、類似サービスは月5,000円前後。

従って、消費者は、まずは弁護士ドットコムで手軽に悩み事を相談したい、となるはずです。あるいは自治体の法律相談窓口などもありますが、チャットで相談するわけではなく、対面で本格的な相談となる印象です。(相場は30分で5,000円前後)

また、先にも述べましたが、弁護士も顧客を獲得したいがために、弁護士ドットコムを利用する、という流れができています。背景には弁護士数の増加があります。

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出典:弁護士ドットコム 決算説明資料

弁護士もネット広告などを出しながら、顧客へ自社をアピールしたいはずですが、彼らにはそのノウハウがありません。そこで弁護士ドットコム内で法律相談に回答することで、本格的な契約へ繋げるプラットフォームになっているのです。

すなわち、相談者が集まるから弁護士も集まる。この流れができているからこそ、広告宣伝を大きくせずとも、売上が伸びる=利益率が高まるという仕組みになっているのです。

これが高収益を実現し、成長してきた理由です。

<今後はどうなる?>

しかし、2019年ごろまでの急成長は今は落ち着いています。

売上成長率、過去2年は7%前後、有料会員数も急増している様子はありません。

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出典:決算説明資料より作成

従って、今後2〜3年は年間5%前後での成長を継続するイメージです。

緩やかながら成長している理由は

  • サブスクリプションモデルであり、ストック収益性が高いこと
  • サイト内の検索データ拡大など利便性の強化
  • 総弁護士数の増加
  • Googleアルゴリズムの研究成果

などが考えられるでしょう。

このように、弁護士ドットコムというサービスは今後も緩やかに成長していくことが予想されます。

Next: 成長の第2段階「クラウドサイン」で躍進。今後はどうなる?

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