高すぎる株価をどう評価する?
さて、現時点のビジネスと今後の動向について説明しましたが、一度株価の推移を見てみましょう。

弁護士ドットコム<6027> 月足(SBI証券提供)
20~21年の株価の急上昇が目立ちますが、23年に入って株価がまた上昇しています。
弁護士ドットコムは次年度の利益予想を出していないため、予想PERは推計するしかありません。
24年3月期1Qの当期純利益は前年同期比67%増です(やはり特に好調なのはクラウドサイン事業です。高い成長を維持しています)。
このままのペースで利益を稼ぎ続けた場合、今期の当期純利益は約12億円となると予想できます(コンセンサスは8.92億円と予想)。
23年9月28日現在の時価総額は1,055億円ですから、PERで表すと約80倍となる計算です。
なお、昨期の実績である7.17億円を基準にすると、約150倍です。
市場の平均と大きく乖離した値です。
ここからは、私が考える高PERの理由、成長期待について説明します。
成長の第3段階:AIによる新たなる成長期待
今後の成長を支える要素として大きなテーマとなるのはAIです。
弁護士ドットコムはAIの活用に積極的な会社でありリーガルブレイン構想というものを掲げています。
具体的には、一般ユーザーに対し、弁護士ドットコム内の相談データをAIに学習させ、チャットで相談内容に返信できるサービスを展開しています。
さらに9月28日には、弁護士に対して新たなサービスを発表しています。
それはChatGPTをフル活用して、各種判例などをキーワード検索ではなく文章で検索できるサービスです。これを受けて9月29日には始値で5%近く上昇しています。
このようにAIを用いて、サービスの利便性を高めているのです。

出典:決算説明資料
また、クラウドサービスにおいてもAIを活用し、契約書のレビュー・修正箇所のチェック・契約におけるリスクの洗い出し・欠落条項の洗い出しなどを行う機能などをすでに実装しています。
これの何がすごいかというと、リーガルチェックという分野に進出できる可能性があることです。
リーガルチェックとは、企業が就業規則や雇用契約の書類を作成する際に、弁護士や行政書士、司法書士のチェックが入ります。規模の大きい企業であれば法務担当者がそれらを確認することになりますが、創業したての企業や規模が小さい企業であれば、外部の専門家に依頼することになります。
このクラウドサインのAIリーガルチェックを活用することで、企業にとっては専門家に支払う手数料を抑制し、やり取りの時間を削減することになります。
加えて、弁護士ドットコム上の弁護士の意見という他にはないデータベースがあります。
そのデータをAIに学習させることによって、より精度の高いリーガルチェックが行われるものと考えます。
現時点でそういった機能が実装されているものの、すべて任せるほどまだAIに信頼は寄せてはいないでしょう。今後はAIの進化とともに、サービスの質が向上することが期待されます。
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