「米利下げ=ゼロ金利=株式上昇」の思い込みが危険な理由
冒頭の続きだが、市場参加者は「米利下げ=ゼロ金利=株式上昇」といったイメージを漠然だったとしても抱いているように感じる。そう思い込んでいる業者がいることも厄介だ。
これは、若い投資家ならびに、「貯蓄から投資へ」を掲げている我が国において資産運用ビギナーも同様に誘導されやすい。個人的な感覚からすれば、これは非常に危険な風潮だと感じる。
(たった1、2度の)「米利下げ」という言葉に金融関係者・メディアが群がり、アコギな金融商品が売りつけられ、損失を被る一般の方が多くなり社会問題となることを危惧している。
繰り返しになるが、08年のリーマンショックや2020年のコロナパンデミックなどの「クラッシュ」が発生しない限り、確実に利下げがゼロまで繋がる状況は無い。来年2024年もそうである。
景気の強さから、「いったん利下げ、のちに利上げ」というシナリオすら想定される。そうなれば株式は頓挫するだろう、何事も慎重でなくてはいけない。
「利下げ=ゼロ金利=株式上昇」といった洗脳のナゼ
近年では、08年にリーマンショックが起こり、2020年にパンデミックが発生した。基本的に、このような「クラッシュ」のときのみ政策金利をゼロにする。
歴史的にも政策金利がゼロになったのは、この2回のみだ。現時点で今後、ゼロ金利を想定するのは難しい(つまり現時点において、量的緩和〈俗にいうQE〉は想定しにくい)。リセッションにならない限りは。
(FFレートが)1950年代にゼロに近づいたことがあったが、当時の政策金利は公定歩合だった。その後、1960年代後半から80年初頭までグレートインフレという時期があったが、当時は現在と違い高インフレとリセッション(景気後退)が頻発していた。そしてその後、金融当局者の政策分析・決定によってリセッションが頻発することはなくなった。
何が言いたいのか?現在では「来年利下げ」というワードに頼ったメディア含む関係者により(今年も利下げがある、とは言っていたが)、乗せられた一般の方が損失を被るということを危惧している、ということである。
2024年、QEなくQTあり
お伝え不足だったが、「利下げからのQEはまったくもって考えられない」と言いつつ、QTについて忘れていた。しつこいようだが、QT(量的引き締め)は進行している。想定以上に長期化の様相をみせている。
QTが終了するときは金利上昇圧力が強くなったとき、あるいはリセッション到来を感じ取ったときで、2018年時のようなマーケットに対する配慮はないだろう。むしろインフレを鎮静化させるためにマーケットバブルを抑え込んでいる側面がある。
24年は高金利の常態化とQT終了がいつなのか、といったところが着目されることになるだろう。
来年も「ゼロ金利」はあり得ない。簡単に儲かる、といった悪習社会に疑念を抱くのは当然だろう。高金利の鎮静化は見通せない。
本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
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