中外製薬のリスクとは?
中外製薬の成長には多くの期待が寄せられていますが、同時にリスクも存在します。
特に、新薬開発には莫大な資金と時間が必要であり、成功する可能性が必ずしも高くない点は、全ての製薬会社に共通するリスクです。臨床試験の段階で失敗すれば、膨大な投資が回収できず、株価や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これは中外製薬も例外ではありません。
しかし、その中でも中外製薬は強力な研究開発力を武器に、他の国内製薬会社を凌駕しつつあります。ロシュとの提携を活用し、抗体医薬品や中分子医薬品の分野での技術力は非常に高く評価されており、AIを活用した開発プロセスの効率化など、リスクを最小限に抑えるための取り組みが進められています。
このような研究基盤が、同社の新薬開発における成功率を他社よりも高めている要因と言えるでしょう。
中外製薬は経営指標のいくつかにおいてライバル企業を大きく上回っています。特に、ROE(株主資本利益率)では21.34%と、他社の大日本住友製薬(4.15%)、アステラス製薬(4.93%)、武田薬品(3.94%)を大きく上回っており、株主資本に対する収益性が非常に高いことが示されています。これは、資本効率を高めつつ、収益をしっかりと上げていることを意味します。
ROA(総資産利益率)やROIC(投下資本利益率)でも同様の傾向が見られ、中外製薬は資産や投下資本を効果的に活用し、高い利益率を実現していることがわかります。これにより、投資家にとっては収益性の高い企業として評価される要因となっています。
株価は割高か?
中外製薬のPERは、前期実績値に対して30倍超、またPBRは6倍を超え一見割高に見えます。
しかしながら、キャッシュフローを基準としたEV/EBITDA倍率(企業価値/EBITDA倍率)は22.2倍と、他社と比較して大きく異なるわけではなく、アステラス製薬(21.3倍)や武田薬品(17.0倍)と同程度の水準にあります。これにより、中外製薬は高い収益性を持ちながらも、割高感があまりなく、投資家にとって魅力的なバリュエーションを維持していると言えます。
本当に良い企業は、その成長力により長期的には高いバリエーション水準もものともせず、株価を伸ばし続けます。中外製薬が今後も素晴らしい新薬を開発し、強みを維持し続けられるとしたら、今からでも十分株価を伸ばす余地があると言えるでしょう。「飲む肥満薬」を含め、今後も同社の経営から目が離せません!
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年9月12日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。
