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中国にトドメを刺すトランプ関税60%…経済成長率は半減か。米中関係は再び冷戦へ=勝又壽良

軌道からの転落は必至

トランプ氏が、中国へ60%超の関税率を引き上げた場合、中国経済はどのような影響を受けるのか。重大な関心が寄せられる。ここで、UBSグループの調査を紹介したい。UBSグループは、スイスに設立された多国籍投資銀行および金融サービス企業として著名である。世界の50を超える国や市場に拠点を構えている。

UBSグループの調査によると、中国の対米輸出品すべてに60%の新たな関税が課されれば、中国の年間成長率は半分以下になると、今年7月15日に発表した。

UBSは、60%超の関税が実行された翌年、中国のGDP成長率は2.5ポイント押し下げられると試算している。UBSは、これまで25年の中国成長率を4.6%、26年は4.2%と予測してきた。それが、半減以上の低下になると推計するのだ。

UBSの予測は、貿易の一部が第三国経由で迂回され、中国が報復措置を取らず、他の国々が米国とともに中国へ関税を課さないとの前提に基づいている。成長率低下の半分は輸出の減少によるもので、残りは消費と投資への打撃によるものとしている。

問題は、中国が対米輸出への関門を狭められたことで、さらに有り余る余剰生産物が、性懲りなく他国市場へ怒濤のごとく殺到する場合だ。他の国々でも、米国同様に中国からの輸入品へ関税引き上げリスクがあることだ。

中国の純輸出(輸出-輸入)は、景気拡大の1割以上を占めている。それだけに、貿易相手国からの苦情や不満を醸成している。現に、中国製品へ関税を課す国が増えている。これまでは、米国、インド、ブラジル、EU(欧州連合)などが中国輸入品に対して関税を引き上げている。さらに、これからは増えるであろう。

UBSリポートでは、中国が関税を引き上げる国に対して報復措置を取れば、逆に中国の輸入コストを押し上げるリスクを指摘している。こうして、ひとたび貿易戦争が勃発した場合、時間を経て最終的に関税が引き下げられるとしても、そのリスクと不確実性によって、中国は相手国の輸入業者が離れる可能性を指摘されている。つまり、中国がユーザーを失うという意味である。

貿易戦争は、「貿易摩擦」が引き金となり、国家間で輸入制限などの応酬が始まる状態を指している。各国は、輸入量の上限設定や関税の引き上げにより、貿易赤字の短期的な減少を見込めるが、保護主義の広がりにより世界不況へつながるリスクも高まる。中国が、そういう引き金を引くと結局は、中国自身が大きな損害を招くであろう。世界のサプライチェーンであることの宿命を負っている。

最終的に、中国は米国の関税引き上げの影響を緩和するため、何らかの緩和策を取るだろう。ただ、後述の通り国債10兆元発行計画は、内需刺激目的でなく「隠れ債務」の借り換えである。UBSは、25~26両年のGDP成長率は3%まで低下するだろうと予測している。

Next: 巨額債務を抱える中国…迫る“火消し”が最重要へ

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