リニア開通に期待して投資して良い?
ここまでをまとめると
- 株価下落の要因は24年3月に公表されたリニア開通時期の延期によるものと考えられる。その要因は静岡県などの工事反対に対する対応など
- リニアプロジェクトの最大の目的は、地震や東海道新幹線の経年劣化などのリスク対策
- リニア開通によってJR東海に利益をもたらすとは考えづらい
と言えます。リニア中央新幹線には交通インフラとしての社会的な価値があったとしても、経済合理性があるとは考えづらいのです。
リニア開業までの株主還元について考えます。
本プロジェクトの工事費は当初品川〜名古屋間で約5.5兆円の見込みでしたが、現在は7兆円まで拡大しています。大阪までの費用を踏まえると総額10兆円は超えると見込まれます。
国からの3兆円の財政投融資を受けているものの、工事期間の延長や資材高騰を考えると、まだまだキャッシュが必要です。
したがって、JR東海が東海道新幹線等で稼いだキャッシュは投資家に還元されることは望めないでしょう。
PER水準的には配当に期待したいところですが、25年2月現在の配当利回りは1%程度ですし、今後も配当が増える可能性は低いと言えます。
さらにJR東海の2010年の資料には、このプロジェクトに関して「単独での投資資金の回収や、回収に必要な年数は投資判断の適否のポイントではない」と記載があります。
出典:2010年JR東海超電導リニアによる中央新幹線の実現について
したがって、投資家としては開通時期に関わらずリニア開通というトピックに期待を寄せることは必ずしも合理的ではないと言えます。
長期投資の観点では、目先のPERは割安に見えたとしても成長期待と株主還元の双方に期待できません。
よって、中長期的な観点で考えると投資しない方が賢明だと考えます。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年2月28日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。