JR東海<9022>を取り上げます。24年以降JR東海の株価が下落しています。25年2月時点のPERは約7倍です。この水準は過去10年間の平均PERである約17倍と比較しても割安感があります。この記事ではJR東海の株価がなぜ下落しているのかを解説し、投資して良いのかを考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
JR東海の現状と特徴
まずは業績を確認します。
コロナの影響で一時的に大きく落ち込んだものの、今期2025年3月期の予想営業利益は6,500億円と、コロナ前(7,000億円)とほぼ同水準まで回復する見込みです。
JR東日本、西日本、九州と比較すると、JR東海の特徴が明確になります。
それは「利益構成に占める運輸事業の割合が高い」ことです。その要因は利益率にあります。JR東海の運輸事業の利益率は40%前後であるのに対し、他社(JR東日本、西日本、九州)は10%前後です。
この高い利益率の背景には、東海道新幹線の圧倒的な収益力があります。
JR東海は、
- 平日はビジネスマン、土日祝日は観光客をターゲットに、東京〜大阪・名古屋間の高速大量輸送を実現
- 不採算路線を廃止し、収益性の高い路線のみを維持
こうした施策により、JR東海はJR各社の中でも運輸事業を中心に利益を稼ぐ構造となっています。出典:各社IR資料より作成
しかし、株価は大きく下落しています。
コロナ禍では大きく落ち込んだ株価ですが、その後は横ばいからやや上昇傾向にありました。しかし、2024年3月ごろに4,000円をつけた後、下落が続いています。

東海旅客鉄道<9022> 月足(SBI証券提供)
この下落の要因はリニア中央新幹線の開業延期です。
当初2027年開業予定だったリニアは、24年3月29日に2034年以降へ延期されると発表されました。これが市場の失望を招き、株価の下落につながったと考えられます。