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サムスン「敗北」で韓国経済も斜陽へ。なぜ新しい産業は育たないのか?=勝又壽良

IMF(国際通貨基金)は、韓国の名目GDP世界ランキングが、2024年12位から2030年15位まで下がるとの見通しを発表した。韓国のGDP世界ランキングは、2020年の9位でピークに達して以来、24年12位→25年13位→29年14位へと右肩下がりになっている。

その間、スペイン(2030年12位)、オーストラリア(13位)、メキシコ(14位)が韓国を追い越す。韓国のすぐ後ろにはインドネシア(16位)が迫っている。IMFの予想によれば、韓国のGDP世界順位は1990年(16位)以来40年ぶりに最も低くなるほど、悲観的な様相を呈している。『中央日報』は、悲観的報道を行っている。

韓国の名目GDP世界ランキングで、過去最高順位は2020年の9位である。この時期は文在寅大統領時代で、「反日」がピークでもあった。米国はトランプ政権1期に当たり、「韓国をG7メンバー」にとリップサービスしたことで勢いづき、「韓国先進国論」が大いに盛り上がった。今や、すでにこの当時の勢いはない。IMF予測では、2030年に15位まで後退するとしている。

韓国内では、日韓経済をEU型へ統合する構想まで出始めている。韓国経済の停滞論が拍車をかけたものだ。韓国は、これまで日韓の産業競争力格差を危惧して、TPP(環太平洋経済連携協定)や日韓自由貿易協定(FTA)も結ばず日本産業を敬遠してきた。自動車や農産物の競争力に大きな格差があるからだ。とりわけ、2011年の東日本大震災による福島原発事故を過大視して、東北地域の農水産物の全面輸入禁止措置を行っている。

こういう措置が行われた本当の理由は、競争力のある日本の農水産物輸入を締め出すことにある。これは、WTO(世界貿易機関)によって認められた「風評被害」という非科学的根拠にしがみ付いた結果である。こんな状況で、日韓のEU型経済統合などあり得ないことだ。問題は、韓国がこういう非現実的な構想を持ち出さざるをえない、という厳しい局面に遭遇している点にある。韓国経済は、明らかに先細り状態に入っている。

半導体脱落で経済斜陽

韓国経済の未来展望を暗くしている理由の1つは、韓国が大きく依存する半導体分野のコア技術で、中国に追い越されたという評価が出ていることだ。これは、韓国メイン産業である半導体の「落日」を意味する。

韓国科学技術企画評価院の報告書によると、韓国国内の半導体専門家39人を対象に行ったアンケート調査の結果、24年基準で韓国は半導体のコア技術5分野のうち、次のような評価となった。追い抜かれた4分野は、メモリ半導体の進化に直結しており、韓国が競争力を取り戻すために、基礎研究や設計技術の強化が求められる。

  1. 高集積メモリ データを効率的に保存するための技術で、特にDRAMやNAND型フラッシュメモリが含まれる。スマートフォンやコンピュータ、サーバーなどで使用され、データ処理速度や容量の向上に不可欠である。
  2. 高性能人工知能(AI)半導体 AIアルゴリズムを効率的に処理するために設計されたチップで、機械学習やディープラーニングの計算を高速化する。自動運転や画像認識、音声認識などの分野で重要である。
  3. 電力半導体 電力の変換や制御を行うためのデバイスで、電気自動車や再生可能エネルギーシステムにおいて重要な役割を果たす。
  4. 次世代高性能センシング 環境や物体の状態を検知するための技術。IoTや医療機器、自動運転車などで活用される。

このような部門で、韓国が中国に追い抜かれたことは、もはや韓国半導体がメモリ分野で技術的に世界一と言えなくなった実態を示している。

韓国が、技術面であっさりと中国に抜かれた背景は何か、だ。それは、韓国が製造業の集積度において、中国に劣っていることを示している。1つの産業が勃興し発展するには、関連産業が集積しなければならない。この相互の関連性が、密接でなければ産業発展が不可能である。

Next: 止められない頭脳流出。韓国の行き着く先は…

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