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コメ不足解消、実は楽勝?米価高騰で露呈した農政の大失敗…小泉農相の「直撃弾」は奏功するか=勝又壽良

減反政策の継続は不可能

こういう切羽詰まった赤信号が出た以上、米作り政策はどう展開すべきか、が問われる。減反政策をバックにした米価維持政策は、今すぐに止めることだ。コメが余っても良いという政策へ180度転換すべきだろう。これは、石破首相が農相当時から指摘してきた点である。余剰米対策は後で触れたい。

異常気象が恒常的になってきた以上、机上で計算したコメの需給計画が、そのまま実現するという幻想を捨てる段階である。むしろ、若干の余剰生産になるぐらいの余裕を持たせた需給計画を立てるべきであろう。23年産米が計画よりも40万トン不足した結果、今回のように、価格暴騰を招いた失敗を教訓にすることだ。

コメは、価格弾力性が極めて低い商品である。少しでも生産が不足すれば価格が高騰する。コメが生活必需品である以上、価格が上がったからと言って買い控えする訳に行かないのだ。逆に、生産過剰になれば価格が下落して、生産者が被害を受ける特性を持っている。この点が、工業製品と異なって代替性が極めて困難であるという背景だ。

農水省的な生産者カルテルの発想によると、減反政策によって供給をコントロールすることが、ベターという発想になる。だが、異常気象がこれを阻むという新たな事態を迎えた以上、コメ作りの「最適解」をどこに求めるかである。生産者にも消費者にも受け入れられる、合理的価格水準を探し求める努力が必要である。

消費者側には、消費支出に占める食料支出の割合であるエンゲル係数が、43年ぶりの高さになったという問題が起っている。24年のエンゲル係数は、28.3%と1981年以来の高水準になったのだ。エンゲル係数は、2005年から上昇に転じており、食生活の変化も一因である。調理食品、菓子類、外食などが支出増になっている。ただ、米価高騰は、他の食品への支出増とは性格を異にしている。調理食品などの支出は減らせても、コメは主食で減らせないのだ。やはり、エンゲル係数上昇は家計を圧迫する要因である。

農家60キロ2.3万円に

農家が、黒字を維持できる米価は、玄米60キログラム2万3,000円程度とみられる。相対取引では、約7割がこのレベルであった。集荷業者マージン5%と卸売業者マージン25%を加算すると、小売店頭価格が5キログラムで2,491円だ。現在の店頭平均価格が、4,500程度であるから、農家の採算点から言えば、中間業者が相当の「暴利」を貪っている計算になる。米離れが起ると心配する声が出て当然であろう。

農水省は、コメの過剰生産による価格暴落を懸念しているが現在、起こっている現象は逆である。流通業者が、過剰利益を懐に入れている事態を示唆している。こういう、供給不足による過剰利益の発生による消費者泣かせを防ぐには、需給に余裕を持たせることだ。その余剰生産分は、輸出へ振り向けて需給バランスを取るべきであろう。ここが、農水省の知恵の働かせる場面だ。

日本産コメの評価は、和食が人気を高めるとともに上がっている。香りや甘み、粒のしっかりとした形が特徴の「日本米」は、寿司や和食の主役となっている。日本米の品種は多様で、「コシヒカリ」や「あきたこまち」などの名前は、海外でも認知されている。味だけでなく、丁寧な栽培方法や品質管理が、日本米の評価を支えているのだ。日本の工業製品への信頼感は、日本米にもつながっている。

こうした、好条件から日本米輸出量はここ数年、着実に増加傾向にある。例えば、2015年には約1万トンだったが、2022年には約2万トンに達している。この輸出量をさらに増やす方法を考えることだ。寿司ブームに乗った、輸出拡大策があるはずである。

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