<競争環境と成長余地>
米国の住宅ビルダー業界は、大手が市場の大部分を占める寡占状態ではなく、比較的分散型の市場です。住友林業はその中でも比較的大きなプレイヤーですが、米国市場全体に占めるシェアは2%弱程度に過ぎません。
このシェア率を考えると、景気悪化時に苦しくなった企業を買収するなどしてシェアを高めることができれば、たとえ2%から3%に増えただけでも、単純計算で50%増となります。これは、無限の市場が広がっていると言っても過言ではないほどの大きな成長余地があることを意味します。米国の住宅市場は、長期的に見て非常に魅力的な市場だと言えるでしょう。
今後の配当はどうなる?減配リスクについて
現在の株価は下落傾向にあり、足元の業績もネガティブな側面がある中で、気になるのは配当です。現在の配当利回りは4.3%程度ありますが、業績が悪化した場合でもこの配当は維持されるのでしょうか?
過去の配当推移を見ると、住友林業は基本的に減配を行わない方針を採っています。2003年3月期には最終赤字となった時期がありますが、それでも減配はしていません。
さらに、配当性向も3割弱と、まだ余力がある状況です。余力がある中で利回り4%超というのは、かなり手堅い印象を受けます。これらの事実から、業績が悪くなったとしても、早期に配当が大きく下がるような状況ではないと考えられます。
<現在のバリュエーションと業界比較>
現在の住友林業のバリュエーションを見ると、PBR1倍、PER7.1倍とかなり割安感があります。なぜこれほど低いのでしょうか?
同業他社である積水ハウスや大和ハウスも似たようなPBRやPERの水準にありますが、住友林業はROEなど収益性の観点で見ると高いにも関わらず、この水準にとどまっています。これは、業界全体として景気の影響を受けやすいため慎重な評価になっている、あるいは、住友林業の事業の中心である米国市場の状況が分かりづらいため、ネガティブなリスクが増幅されてしまっている側面があるのかもしれません。
まとめ:住友林業投資のポイント
住友林業の現状をまとめると、以下のようになります。
- 足元では米国の住宅市況悪化の影響を受け、業績にはネガティブな側面が見られます。
- しかし、景気が本当に悪化した際には、これまで米国で行ってきた中小住宅ビルダーの買収などを通じて、さらに力を蓄えられる可能性があります。
- 住友林業には、買収した企業に資金や自社サプライチェーンを提供して再生・成長させる財務力と強みがあります。
- 景気回復期には、シェアを拡大して業績をさらに拡大させる可能性を秘めています。
- 現在の配当利回りは4.3%程度あり、過去減配をしていない実績や3割未満の配当性向から、減配リスクは比較的低いと考えられます。
- 現在の株価はPBR1倍、PER7.1倍と割安感があります。
長期的な視点で見れば、景気後退期を成長のチャンスに変える可能性があり、配当も手堅い、魅力的な投資対象と言えるかもしれません。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年6月12日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。