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『ラブブ』ブームで業績倍増!なぜポップマートのような企業が日本で生まれないのか?玩具業界の宿命と生存戦略=牧野武文

一発屋で終わりがちな玩具業界

実は、玩具企業というのは持続をしていくことが非常に難しいのです。最も歴史のある玩具企業というのは1859年創業の独メルクリンですが、鉄道模型に特化をして、総合玩具メーカーとは少し毛色が異なります。次に歴史があるのが、1889年創業の任天堂ですが、花札製造から始まり、トランプ製造、ゲーム玩具製造と移り変わり、ファミコンで一気に世界に進出にします。時代に合わせて何回も業態を変化させています。その他の企業は日米欧とも1950年代、1960年代創業なのです。まだまだ創業者が会長や顧問でいることも珍しくありません。

おそらく、玩具業というのは生まれては消え、生まれては消えを繰り返してきたのです。その理由は、流行商品であるということにつきます。売れ始めると社会現象になるほど売れますが、ブームが去ってしまうと、ぴたりと売れなくなる。

家電製品であれば、売れなくなっても価格を下げればなんとかさばくことができます。しかし、玩具は売れなくなると値段を下げても売れません。「タダであげます」と言っても「迷惑だ」と言われかねないのです。産業廃棄物としてお金をかけて処分するしかなくなります。

ですので、ほぼ毎年のようにヒット玩具は生まれますが、ブームが終わって清算してみると、全然利益が出ていなかったというのはよくある話です。生産ラインを拡大して大量生産するため、ブーム後に生産ラインを閉じ、余った在庫を処分するのに大きなコストがかかるからです。特に、20世紀までは、玩具製造は手作業が多く、大量の人を雇用しなければなりませんでした。人手が余ったからといって簡単に解雇するわけにはいきません。玩具企業は、ヒットを出して大きくなりますが、今度はその大きさが負担になって業績が悪化をしていきます。これを解決する方法はひとつ、次のヒットを出すしかないのです。

玩具企業にとって、持続可能な商品というのは永遠の課題です。タカラのリカちゃんも「着せ替え人形にすれば、流行の洋服を次々と販売することで、玩具寿命を延ばすことができる」という発想から生まれました。任天堂のファミコンも「ソフトを次々と発売すれば、ゲーム機本体の寿命を延命することができる」という発想から生まれました。

玩具企業のスタッフは、どうすればヒットが生まれるか、どうすればそのヒットを持続できるかを日夜考え続けています。

ポップマートの生存戦略とは?

ポップマートは2010年創業で、2018年にMollyシリーズが爆発的に売れて頭角を現しました。当然、中国ですから、フォロワー企業が山のように生まれてきます。業界関係者は200社ぐらいは生まれたのではないかと言います。しかし、その多くが消えています。玩具の委託製造に特化しているところは割と固いですから生き残っていますが、オリジナルのIPを開発して販売しているところで生き残っているところと言えば、ポップマートと52Toysぐらいしかありません。

つまり、ポップマートは、世界的なヒット商品を生み出したという点で注目されていますが、実は、玩具企業でありながら持続可能というところに特色があります。その持続のために、ポップマートは何をしているのか。それが今回のテーマです。

ポップマートの販売方法で、キモになっているのがブラインドボックスです。ポップマートは2010年に北京市中関村からスタートしましたが、当初は流行雑貨を扱うグッズ店でした。

その中で扱っていたのが、日本のソニーエンジェルです。ソニーエンジェルは1シリーズ12体があり、箱を開けてみるまで、どれが入っているかわからないという販売方法でした。この販売権を獲得したことがポップマートの大きな転機となりました。

どれが入っているかわからないので、ついつい複数回買ってしまいます。被ったものは友人にあげたり、交換したりしてコミュニケーションも生まれます。そして、誰もが2回、3回と買ってしまうため、自然にコレクションしたい、全シリーズコンプリートしたいという気持ちが湧いてきます。

また、1%以下の確率でシークレットフィギュアが入っていることも購買欲を刺激しました。シークレットは、カタログや広告などでも紹介されません。シークレットを引いた人はびっくりして大喜びします。一方、このような手法が多重買いを煽っているという批判の元になることもまた確かです。

ところが、この販売契約が2016年で終了し、ポップマートは売れ行きのいい商品を失うことになります。そこで、じゃあ、自分たちでIPをつくって販売すればいいのではないかということでオリジナルシリーズが生まれてきます。

しかし、ポップマートはただ真似をしたのではありません。独自の工夫をしました。

Next: 模倣してオリジナルを超える…中国企業の成功パターンとは?

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